安倍晋三を失った日本の保守雑誌の生きる道…でっち上げられた「虚構のストーリー」を引用するネトウヨたち

2カ月連続、安倍元総理追悼大特集を展開した二大保守雑誌
安倍晋三元総理の死去以降、いまや「二大保守雑誌」の地位を不動のものにした「WiLL」(WAC)、「Hanada」(飛鳥新社)は安倍元総理追悼特集を続々と出している。まず「WiLL」は2022年9月号『安倍総理ありがとう!追悼特集号』、同10月号も同様の趣旨で追悼特集が続く。「Hanada」は2022年9月号『安倍晋三元総理追悼大特集号』、同10月号で『安倍晋三元総理追悼大特集号2』、同11月号で『「安倍愛」溢れる追悼大特集3』で、いずれも大きく安倍元総理の写真が使われている。両誌は記事タイトルを短冊状に掲げる表紙デザインが普通だが、ここに来て異例の展開になっている。
その内容の多くは、安倍氏の功績を讃えるものであり、安倍氏との関係性があった言論人や政治家らが過去を懐古する内容となっているが、それに併せてリベラルメディアへの強い敵愾心(てきがいしん)がセットになっているものが目を引く。
百田:安倍総理の死の翌日、朝日新聞には「森友・加計、桜…『負の遺産』真相不明のまま 安倍元首相が死亡」という見出しが躍っていました。この期に及んで冤罪(えんざい)で騒ぎ立てる朝日新聞こそ、最大の負の遺産にほかならない。元朝日新聞(原文ママ、朝日新聞HPによると現役記者)の三浦英之氏に至っては、「安倍元首相の襲撃、絶対に許せない。彼の不正や愚政を、凶弾で帳消しにしてはならない」とツイートしていました。品性下劣極まりない。
井沢:ジャーナリスト以前に、人間として失格です。
(WiLL2022年9月号,死者にムチ打つ「朝日」の品性,百田尚樹×井沢元彦,P.36)
…これらに加え、全く冤罪というほかのない森友、加計事件、桜を見る会騒動が改めて報じられている。私は、これを短期的な安倍叩きと見るべきではないと考える。長期的に安倍氏を貶める歴史戦の一環だと見る。安倍氏死去に際してこうした貶めを放置しておくと、安倍氏は今後書かれる各種歴史書、歴史教科書などにおいて、全く謂れのない汚名を着せられる。南京事件、従軍慰安婦問題と同様の歴史の改竄(かいざん)である。
(Hanada2022年10月号,”安倍貶め報道” は仕掛けられた歴史戦,小川榮太郎,P.73)
この場でリベラルメディアを批判する意味はないのでは……
このような調子で既存メディア呪詛が並んでいるのだが、まず朝日新聞の記事の見出しは記述の通りである。が、その内容は事実を列挙しているだけの短い記事で特段「騒ぎ立てる」というニュアンスではない。また百田氏が問題にしている三浦英之氏のツイートには、実は続きがあり原文では次のように言っている。
安倍元首相の襲撃、絶対に許せない。彼の不正や愚政を、凶弾で帳消しにしてはならない。生きてほしい。為政者にはしっかりと言葉で対峙しなければいけない(2022年7月8日、三浦英之氏のツイート)
生きてほしい~、以降が引用されていない。しかもこのツイートは銃撃事件の正午に発せられたもので、まだ安倍氏の生死が不明の時点のものだ。銃撃事件を許さず、心肺停止と伝えられる安倍氏の生還を願うものであるが、これのどこが「品性下劣」「人間失格」なのかよく分からない。本当に原文を読んでいるのだろうか。誰かの発言を引用するなら、切り取らないで全部引用するのが鉄則であり、前後を切り取ったのであれば(略)とか(…)とするのが本来であるが、こういった基礎的作法が守られていない。