テクニカル分析の罠 みんかぶ編集室 2022.07.13 初心者コラム 目次万能なテクニカルはない初心者が陥りやすいテクニカル分析相場にあったテクニカル指標を使おう! 万能なテクニカルはない 筆者がFXを始めた当初、テクニカル分析というものは夢のようなツールに思えました。 様々なテクニカル指標が、売買のタイミングと方向感を教えてくれるからです。 「これですぐにでも億万長者になれる!」 そう思った人も少なくないのではないでしょうか。 しかし、その夢はすぐに花と散ります。 FXを始めたばかりの初心者が、生半可なテクニカル分析の知識で連戦連勝できるはずはありません。 そうです。テクニカル指標は確かに素晴らしいものですが、万能ではありません。 相場に置いて100%正しい情報や分析が存在しないのですから、当たり前です。 どんなに凄腕のトレーダーでも100連勝などはありえません。 かつて、ノーベル経済学者2人に、元FRB副議長という大物も運営に参加していたLTCM(Long term capital management)というファンドがアメリカありました。 彼らは、ロシア危機の最中に「ロシアが債務不履行を起こす確率は100万年に3回」と計算しましたが、短期国債が債務不履行となり、経営危機に陥りました。 このように、間違えようのない天才でも失敗をしますし、様々な分析手法や投資のテクニックは収益を上げるための1つの手段に過ぎないということです。 初心者が陥りやすいテクニカル分析 ゴールデンクロスは本当にゴールデン!? テクニカル分析で最初に「ゴールデンクロス」という言葉を勉強するでしょう。 多くは、『移動平均線の「短期線」が「長期線」を下から上に抜いてくる場合』と説明されています。 短期線:5日移動平均線(1週間) 長期線:20日移動平均線(1ヶ月) では、下のチャートをご覧ください。 赤丸で示したポイントがゴールデンクロスした箇所になりますが、見る限り勝率は5割にも満たないことが分かりますね。 どちらのチャートでは、ゴールデンクロスが発生した直後に暴落が起きてしまっています。 RSIが機能しない相場 続いて、RSIというオシレーター(逆張り)系のテクニカル指標を見てみましょう。 RSIは相場の「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」を見るテクニカル指標で、70%以上が「買われ過ぎ」、30%以下が売られ過ぎと判断すべきと言われています。 では、下のチャートを見てみて下さい。 上のチャートは70%へ入ってから下がったところを狙っても、ほとんど勝てずにいます。 買いの場合もほとんど利益とならずに、勝率は0%に等しくなっています。 下のチャートは、最初に70%へ入ってから、2円50銭の上昇後にようやく暴落が訪れましたが、最初の売りサインの水準に戻ったに過ぎません。 ボリンジャーバンドの確率の罠 ボリンジャーバンドは1σから3σまである枠の中に相当な確率で収まるという統計学を利用したテクニカル指標です。 1σに収まる確率が、68.3%2σに収まる確率が、95.5%となっています。3σに収まる確率は、99.73% そこで、多くの本では「2σにタッチすれば逆張りが有効です。」と書かれています。 では、チャートを見てみましょう! 上のユーロドルのチャートでは1回目、2回目と順調に利益を上げたものの、3、4回目はほとんど利益にならず、5回目は3σまでタッチし買いサインが出たにも関わらず、ダラダラと下落し、最終的には安値更新となってしまっています。 コチラは豪ドル円の週足チャートですが、2,3,4回目と順調に利益を叩き出したものの、5回目に売りサインが出てからなんと20円も上昇しています。 ボリンジャ―バンドは逆に考えると、2σに収まらない確率は4.5%あります。 ということは、20回以上2σの中で推移していると、「2σを越えてくる可能性の方が高くなる」ということです。 レンジブレイクをする力を溜めているというイメージです。 日本以外では、ボリンジャ―は2σを越えるような動きになってきたら”トレンドが発生した”と考え、順張りとして使用されているようです。 上記はほんの一例ですが、テクニカル指標を用いても、使い方を間違えたり、マーケットの状況によって、ほとんど勝てないケースがあるということを覚えておいてください。 相場にあったテクニカル指標を使おう! 一般的に、テクニカル指標は万能ではありませんが、それぞれ有効だといわれている使い方がありますので、覚えておくと損はないでしょう。 テクニカル指標のトレンド系はトレンド相場にオシレーター系はレンジ相場での逆張りに適しているといわれています。 また、トレンド系とオシレーター系のテクニカル指標を複数組み合わせることが有効といわれており、代表的なものは 移動平均線+MACD+RSI(DMI)ボリンジャ―バンド+RCIボリンジャーバンド+ストキャスティクス などがあります。 しかし、テクニカル指標の組み合わせすぎてもサインがバラバラになるため、3種類までに留めておきましょう。 また、リーマンショックやギリシャショックなどの荒れ相場にはテクニカル指標は機能しづらいといわれています。 理由は市場参加者がパニック状態で、投資家の多くはテクニカル指標で売買していないからです。 自分の資産を守るために、持っているポジションを決済してとにかく現金に換える投資家や、ここぞとばかり売りを狙い、買い持ちで苦しんでいる投資家に売りを被せてきたりするヘッジファンドがいるからです。 また、このような事態には各国要人や中央銀行が緊急声明を発表するために、値動きが急に激しくなったります。 このような大荒れのマーケットでは何が起こるか分かりませんので、持っているポジションはできるだけ早く閉じて、事態が落ち着いてから参入することが資産を守るためには一番だと思います。 テクニカル指標や株価・経済指標など、取引の参考となる指標は多くありますが、それがいつでも同じように機能するとは限りません。 多くのプロディーラーの言葉を借りると、「皆が注目しているものを見る」 ことが、一番良いのではないでしょうか。 やはり、流行に乗るのが一番!ということでしょうね。