「人と人の距離が近い大阪は日本ではなくアジアである」…マレーシア人の私が感じる大阪という街の居心地の良さ
様々な分野で東京への一極集中が続き、存在感を失いつつある大阪。だが、そんな大阪を拠点に映画を撮る続ける一人のマレーシア人映画監督がいる。「みんかぶプレミアム:特集『大阪沈没~名古屋に完敗、福岡に抜かれる』」の第9回は、大阪を舞台に様々な国籍の人間模様を描いた「大阪三部作」で知られるリム・カーワイ監督に、アジア人の目線で大阪への想いを語ってもらった。
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東京にはない、大阪のカオスな雰囲気に惹かれる
マレーシア出身の僕にとって、もちろん東京は大都会で面白い街ですが、中国での生活も経験した身からすると、人と人の距離感が広く保たれ、すぐに友達になれなかったり、空気を読んで言いたいことを言えなかったりする違和感を抱くこともあります。でも大阪は違うんです。いい加減なところもあり、冗談が好きでツッコミ合う。大きいミスをしても許される。上下関係を気にせず、どこかリラックスできる感じや、カオスな雰囲気がアジアの他国に近くて、僕には居心地がいいですね。
1993年に初めて日本に来て、東京の日本語学校に通いました。そして1994年から1998年まで大阪大学の基礎工学部電気工学科で勉強し、また東京に戻って就職しました。そこから6年間、東京で暮らし、北京に移ったのです。北京と香港を行き来する生活をして、2010年、北京で初監督作を完成させ、香港で2作目を撮り終えていた時に、大阪市の映画助成金企画(シネアスト・オーガニゼーション大阪)に応募しました。審査を通過した結果、大阪を舞台に『新世界の夜明け』という映画を撮ることができました。撮影を通じて大阪の居心地の良さを感じつつも、中国に戻ろうと考えていたんです。
ところが思わぬオファーが舞い込みました。『新世界の夜明け』を観た、シンガポール在住で大阪出身の日本人プロデューサーが、アジアの目線で僕が大阪を描いたことに感激し、映画を作ろうと声をかけてくれたのです。そこで『Fly Me To Minami 恋するミナミ』という企画を提案し、無事に製作が決まって、2012年の12月に大阪と韓国、香港で撮影を行いました。撮り終わった時に「大阪って、すごく面白い!」と再認識して、そこから大阪で暮らし始めた……というわけです。