ゆとり世代が「出世したくない」深刻な理由…責任を嫌い、自分ファーストを重んじるZ世代

「いつかは事務次官」の初心はどこへやら…月100時間残業のブラック職場に身も心もボロボロに
今、若者の働き方が変化している。一昔前は「将来は社長を目指す」と社会の荒波に飛び込む新入社員も見られたが、最近では「管理職になるのは面倒」と忌避する傾向が増えているのだ。自己スキル向上に意欲を持ち、出世には興味がない「Z世代」の若者たちが目指す新しい働き方とは――。
「志だけでは生きていけないことはよく分かりました。人生は一度きり。これからは自分の生活をもっと大切にしていこうと思います」。中央省庁の官僚だった20代後半の男性Aさんは今、民間企業で働きながら起業の準備を進めている。国立大を卒業後、成績優秀者が集まる国家公務員の道に歩を進めたが、あまりの「ブラック職場」に嫌気がさして離職した。
月の残業時間は100時間を超えることが珍しくなく、家には寝るためだけに帰る日々。同級生たちが外資系企業や起業で華々しい活躍をする光景を眺め、「俺の人生は一体なんだったんだ」とショックを感じたことが離職理由だった。
過労から体調を崩した時に献身的に支えてくれた大学時代の後輩と結婚し、Aさんは客観的に人生を振り返ることができるようになったという。「学生時代はとにかく勉強してトップを目指すことが原動力でした。官僚になった時も『いつかは事務次官になりたい』と当たり前のように思っていました。でも、自分の人生や家庭を犠牲にするまでの価値はないことに気がついたんです。適度に働き、生活に困らない程度の収入を得て、私生活を充実させる。今はこうした働き方の価値観が周りで広がっていますよ」と語る。
責任を嫌うゆとり世代の主張「人並みに働ければ十分」
内閣人事局によれば、2019年度に自己都合を理由とした20代の国家公務員(総合職)の退職者は87人に上った。6年前に比べ4倍超の増加だ。30歳未満の若手官僚で「辞める準備をしている」「1年以内に辞めたい」「3年程度のうちに辞めたい」と答えた男性は約15%、女性は約10%で、退職理由としては「もっと自己成長できる魅力的な仕事に就きたい」が男性49%、女性44%。「長時間労働で仕事と家庭の両立が難しい」も男性34%、女性47%に上っている。