ゲイライター・サムソン高橋「なぜ私は保毛尾田保毛男が積極的に好きだったのか」…テレビの没落はコンプライアンスが原因ではない

何かにつけてコンプライアンス遵守の姿勢が求められるようになった昨今。テレビ業界はとくにその煽りをダイレクトに受け、それによって「つまらなくなった」と言われることも多々ある。しかし、テレビがつまらなくなったのは本当にコンプライアンスのせいなのだろうか。テレビなどのサブカルチャーに精通するゲイライターのサムソン高橋が、いわゆる「保毛尾田保毛男事件」を通して考察する。みんかぶプレミアム特集「さよなら、テレビ」第2回。
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30年のときを経て大炎上したフジテレビの「保毛尾田保毛男」
ゲイ含むLGBTQの扱いには慎重にならねばいけない。そうマスコミ関係者に叩き込んだ保毛尾田保毛男事件は、2017年に『とんねるずのみなさんのおかげでした』30周年記念スペシャルにて、かつての人気キャラクターが登場したことがきっかけだった。
石橋貴明演じるその保毛尾田保毛男(打ち込むのがめんどくさいので以下、保毛尾田のみの表記にする)自体は当時と変わらない演技をしていたのだが、30年という時間が育んだコンプライアンスはそれを許さなかったのだ。
30年前、まったく心を痛めることなく保毛男田を笑って楽しく見ていた私でさえ、「大丈夫かなこれ」と瞬時に思ったことを覚えている。
暗く汚く醜い私などはポジティヴな意味が付随してしまう「ゲイ」という言葉を嫌い「ホモ」と自称しているが、これはあくまで当事者だから許されることであって、ノンケが使用する「ホモ」は立派な蔑称、差別用語とされる。その言葉がご丁寧に2回連なるキャラクターである。普通の判断能力だったら躊躇するだろう。しかしながらスタッフは「そんなの関係ないぜ! 今のフジテレビに足りないのはこういった大胆さだ!」と、判断してしまったのである。