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平均相続額3200万円、使いきれない無念…どうやったら幸せに「資産ゼロ」で死ねるのかをマネーコンサルタントが伝授 

 MUFGの「退職前後世代が経験した資産承継に関する実態調査」によると、相続した財産額の平均は3273万円、中央値は1600万円だった。日本人はそのお金を貯めるだけ貯め、使い切らずにあの世へと旅立ってしまったわけだ。 Money&you代表取締役でマネーコンサルタントの頼藤太希氏は、「お金は使うために存在するのであって、お金は使ってこそ価値がある」と話す。老後のお金の“増やし方”および“使い方”について、頼藤氏が語った。 

※本記事は頼藤太希著『60歳からの新・投資術 『年金+月3~10万円』で人生が豊かになる 』(青春出版社)から抜粋、再構成したものです。 

第1回:老後2000万円問題に終止符!結局いくら必要なのか…マネーコンサルタントが警告「退職金を使って絶対にやってはいけないこと」 

第2回:10年間で貯金+1000万円をつくる方法…マネーコンサルタント「老後は60歳までに500万円あれば大丈夫です」

目次

「資産ゼロで死ぬ」という考え方 

 老後のお金を貯めることは大切です。ただ、それよりももっと大切なことがあります。 

 それは、貯めたお金を上手に使うことです。お金は貯めることが目的ではなく、将来の自 分が使うために貯めるものだと言うと、一見当たり前のことに思えるでしょう。しかし、この当たり前ができている人は、意外と少ないようです。 

 お金は、ないよりはあったほうがいいことは間違いありません。人生が終わりに近づいてきた時にカツカツの生活を送らざるをえない状況では、後悔しながら死んでいくことになるかもしれません。もしもの時に備えて、最低限のお金は貯めておく必要はあります。

 しかし、お金を必要以上に貯めこむ必要はありません。「死んだ時が人生で一番お金持ちだった」という人もいますが、そんな人生は幸せとは言えないのではないでしょうか。 

 全世界でベストセラーになっている『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』(ビル・パーキンス著)は、タイトルどおり「資産ゼロで死ぬ」をテーマにした本であり、資産形成期に築いた資産を上手に使い切っていくことの重要性を説いています。「資産を残して亡くなったら、その資産を使うことで得られるはずだった経験を得られなかったことになる。人生で一番大切なのは、思い出を作ることだ」と同書は語ります。 

 仮にあなたが1000万円の資産を残して亡くなったとしたら、1000万円分の経験ができず、その分の思い出が作れなかったということです。この1000万円を仮に時給1500円で週40時間働いて稼ぐとすれば、ざっと3年4か月も働かなければなりません。 

 しかし、そうして働いて貯めた1000万円を使わずに死んでしまったら、タダ働きしたのと同じことだとも言っています。そう指摘されれば、資産を計画的に取り崩し、「資産ゼロで死ぬ」を実践したほうがよいと多くの人が思うのではないでしょうか。早いうちから自分のためにお金を使ってさまざまな経験をし、たくさんの思い出を残したほうが、豊かな人生を送れるでしょう。 

 よく言われることですが、あの世にお金は持ってはいけません。お金を貯めこんだまま最期を迎えるよりも、資産をできるだけ使い切って最期を迎えたほうが、人生の幸福感は高いのです。豊かな人生を送るためには、「資産ゼロで死ぬ」意識でお金を使っていくことが大事であるということを念頭に置いていただければと思います。 

70歳になったら資産を取り崩していく 

 「資産ゼロで死ぬ」を実践しようと思っても、実際のところ資産を取り崩していって、最期にゼロにするのはなかなか難しいものがあります。なぜなら、寿命をいつ迎えるかは誰にもわからないからです。寿命を予測して、そこに向けてお金を取り崩していったら、「思ったより長生きしてしまった」ということもあるかもしれません。反対に、資産を取り崩し始めて早々に病に倒れ、そのまま亡くなってしまうこともあるかもしれません。 

 「資産ゼロで死ぬ」を実践するのに躊躇してしまう一番の要因は、資産が少しずつゼロに近づいていくのを見るのが不安であることです。 

 たとえば、70歳時点で貯蓄が2000万円あるとして、月10万円、年120万円ずつ取り崩していくとします。貯蓄が潤沢なはじめのうちはまだいいでしょう。しかし、常に年120万円ずつ定額で貯蓄を取り崩すと、80歳を迎えるころには貯蓄の残りが800万円と、当初の半分以下になってしまいます。

 それでも年120万円ずつ取り崩しを続けると、86歳8か月の時点で貯蓄が底をついてしまいます。実際には、貯蓄が底をつく前に取り崩しのペースを緩めるなど、何らかの対策を講じるかもしれませんが、「貯蓄がなくなってしまうかも」と不安に駆られるのも無理はありません。

 寿命があらかじめわかっていれば、計画的に資産をゼロにすることができますが、そうでない以上、「資産ゼロで死ぬ」を達成するのはなかなか難しいのです。「終わりよければすべてよし」という言葉があるとおり、人生の最後が幸せであれば「良い人生だった」と思える可能性が高いでしょう。「資産ゼロで死ぬ」を目指していたら、途中でお金が尽きて人生の最後は貧しく不幸せであれば、「悔いが残る人生だった」となるかもしれません。 

 そこで、将来の不確実性を考慮しつつ「ほぼ DIE WITH ZERO」を目指すために、資産の取り崩し期(70歳前後)に入ったら、 

  • 預貯金 300万~500万円 
  • キャッシュフローを生む資産 300万~500万円を確保したうえで、残りの資産を取り崩すことを考えます。 

 預貯金の300万~500万円は、病気や介護に備えるお金として、取り崩さずに生涯保有を続けます。もしも病気や介護が必要になっても、このお金があれば必要な治療やサービスの利用に困ることはないでしょう。仮に医療費や介護費がかかることなく亡くなったとしても、残った300万~500万円は葬儀代や墓代、あるいは相続などに回せます。 

 キャッシュフローを生む資産は、基本的には一生涯保有を続けます。そうすることで、定期的に収入を得ることができます。まとまったお金がどうしても必要になった場合には、キャッシュフローを生む資産を売却して使うというオプションもあります。これらのお金を確保したうえで、残りの資産を取り崩していきます。 

「100歳で資産ゼロ」に近づける 

 資産が早々にゼロになる「資産寿命」を迎えてしまうのは困りものです。それを防ぐために、「運用しながら取り崩す」という観点を取り入れましょう。資産は、ただ取り崩すだけでは早々になくなってしまいます。しかし、資産を運用しながら少しずつ取り崩すことで、資産寿命を延ばすことができますし、売るタイミングも分散できるので、資産価値が下がったタイミングで一度に売ってしまうことも防げます。 

 資産を取り崩しながら一定の利回りで運用した場合に、毎年いくら受け取れるかを計算する「資本回収係数」という数字があります。なお、以降の計算は運用益に税金がかからない「新NISA」で行った場合とします。

   資本回収係数

頼藤太希著『60歳からの新・投資術 『年金+月3~10万円』で人生が豊かになる 』(青春出版社)

 表の縦の列には資産の取り崩し年数、横の行には運用利回りをとっています。自分の資産額に、この両者の交差するところの係数をかけると、毎年取り崩せる金額が計算できます。

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この記事の著者
頼藤太希

(株)Money&You代表取締役/経済ジャーナリスト。中央大学商学部客員講師。早稲田大学オープンカレッジ講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生命保険会社にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWebメディア『FP Cafe』や『Mocha(モカ)』を運営すると同時に、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)、『マンガと図解 はじめての資産運用』(宝島社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。日本アクチュアリー会研究会員。

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