この記事はみんかぶプレミアム会員限定です

人気FP「利上げ局面で商社株は要注意だ」2025年の株式投資は「やり方を変えなさい」…注目銘柄大公開!

 一般的には、金利が上がれば株式投資は不利になると言われている。ただし人気ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は、「それでも資産を増やすには投資が必要」と話す。金利上昇局面で注目すべきポイントや業界について、深野氏が語った。

※本記事は深野康彦著「金利で損しない方法、教えてください!人気FPが教える金利上昇時代の『お金の新ルール』」(扶桑社)から抜粋、編集したものです。

第1回:投資の神様バフェットはなぜ「株式」ではなく「債券」を選んだのか…金利ある世界でたどり着いた新たな大正解

第2回:人気FPが「低リスクで“年率5%”を実現する技」を伝授!“金利がある時代”の最適なポートフォリオを大公開

目次

金利上昇は株式投資には不利

――金利上昇時代でも資産形成の主力は株式や投資信託になりますよね。僕も株式投資は続けるつもりです。

 もちろんです。定期預金などの金利収入はあくまで〝オプション〞。資産を増やすには、自分が取れるリスクに合わせた投資を続ける必要があります。

――とはいえ、金利上昇局面だと、株式投資って不利になるんでしょうか?

 セオリーでいうと、株価は上がりづらくなります。なぜなら、金利が上がると企業の資金調達コストも上がるからです。なかには自己資本だけで経営できている企業もありますが、多くの企業は銀行から借り入れをして事業を営んでいます。当然、金利が上がると企業の成長性に疑問符がつくのがセオリーなんです。

 アメリカがいい例ですね。アメリカはコロナ禍が明けてインフレが起きたので、2022年3月から政策金利を急激に引き上げた結果、22年のアメリカの株価はほぼ上がっていませんでした。23年も年半ばまで株価が揉み合っていましたが、明確に上昇に転じたのは政策金利がピークの5.50%をつけたあと。利下げが視野に入って長期金利が低下し始めてからです。

利上げで「商社が要注意」なワケ

――利上げによって下げ圧力がかかるという前提で、どんなスタンスで株式投資をすればいいんでしょうか?

 まず、「押し目は買い」的な低金利局面と同じ投資スタンスでいると、ヤケドする可能性が高くなるので注意してください。仮に2024年8月のような急落局面があったら「休むも相場」と割り切って、無理な投資は控えたいものです。

――資産形成では「大きく負けないこと」が最も大切だからですよね。

 その通り。ただ一方で、急落のような大幅な調整局面では優良株が思わぬ安値をつけるケースもあります。だから「日頃から狙いをつけている銘柄」なら、勇気をもって購入することも儲けを大きくするチャンスだと、頭の片隅に入れておいたほうがいいですね。

――じゃあ、金利上昇局面ではどんな銘柄が有望ですか?

 金利のある世界で得をするのは「お金を貸す人」で、損をするのは「借りている人」です。その構図は株式市場にも当てはまります。

 そこで見てほしいのは企業の財務です。当然ながら、金利上昇がマイナスに働くのは「借り入れが多い企業」で、金利上昇がプラスになるのは「利ザヤが改善する企業」になります。企業の決算資料のほか、会社四季報などで有利子負債が多い企業は注意したほうがいいでしょう。

 たとえば、ウォーレン・バフェット氏が投資した日本の総合商社株も有利子負債が多い企業群です。業績の好調は続いているようですが、金利の上昇が業績に悪影響を及ぼすかもしれません。

基本は中小より大手企業

――ほかにはどんな会社や業種だと、注意が必要ですか?

 金利上昇がマイナスになる典型例は、ビジネスモデル的に借り入れが多い不動産業ですね。また、不動産業が厳しくなるのなら、建設業もその影響を受けやすい業種と言えます。特にマンション建設などに注力する民間からの受託が多い企業は、ひと際厳しくなるかと。

 ただ、台湾の半導体企業TSMC などの日本進出がプラスに働く建設業もあるので銘柄選択はひと筋縄ではいかないですが……。あと、東証グロース市場に上場する中小型株にも金利の上昇は逆風になります。

――そうなんですか? 中小型株は〝大化け〞する期待があるので、僕も買っているんですが……。

 たしかに時価総額が小さい中小型株は、株価が10倍以上になる「テンバガー」候補がプライム市場より多いと考えられていますね。

 ただ、値動きが激しいので銘柄選択に自信がある人以外は金利上昇局面では近づかないほうが賢明と言えます。中小型株は財務基盤が弱い銘柄が多いため、金利上昇の影響が業績にマイナスになる割合が高いとも言われているのです。株価上昇に圧力がかかる金利上昇局面では、投資対象はプライム市場、スタンダード市場に上場する銘柄から選ぶべきでしょう。

――なるほど、「君子危うきに近寄らず」ですね……。

 一方で、金利上昇がプラスになる業種の代表格は銀行、保険などの金融業界です。金利が上昇することで利ザヤが改善して収益増が見込めるからです。安定を考慮すればメガバンク株、高配当を考えれば大手損保株などが候補になります。

 ただ、株式投資は企業の「成長を買う」、あるいは「変化を買う」と考えれば、地方銀行も候補になるでしょう。地方銀行は一向に低PBR(株価が1株当たり純資産の何倍かを示す指標。1倍以下だと企業の資産価値よりも低いとされる)が改まらない企業の代表ですが、株主還元を積極化させているほか、政策保有株の売却に踏み込むと表明している銀行もあり、まさに今、企業として変化を遂げている最中です。

いま狙い目の「地銀」

――すみません、政策保有株って何でしょうか……?

 政策保有株とは、企業が純粋な投資ではなく、取引先との関係維持や買収防衛などといった目的で保有している株式のことです。特に銀行は「地方の名士」的な企業も多く、その地方の上場企業の大株主に名を連ねているケースが多々あります。有名どころでは京都銀行。同行は任天堂、村田製作所、ニデックなど京都に本社を置く企業の大株主です。

――その政策保有株を持っていると、何か問題があるんですか?

 はい。取引先の株なら現経営陣の方針に反対せずに〝言いなり大株主〞になってしまう危険性がありますよね。それではコーポレートガバナンスの観点から問題ですし、そもそも投資目的ではないのだから、資本効率上も問題があります。だから東京証券取引所からも「保有している合理的な説明ができない場合は、政策保有株を売却して資本効率を高めるように」と、指導が入っているのです。

――その問題視されている政策保有株を売ることで、より投資家にとって有望な会社になるかもしれない、ということですか?

 その通りです。政策保有株に関しては、トヨタなどの業界トップ企業が売却を表明し、金融業のなかでも損保各社が追随。さらに「動かないのではないか?」と言われていた地方銀行も一部が動きだしたかたちです。

 2024年3月期決算では数行が政策保有株に言及していましたが、25年3月期決算ではさらに増加すると予想されるので、政策保有株の処理等を表明した地銀は「狙い目」と考えています。

その会社は金利が上がっても必要とされるのか

――地銀株、今からでも面白そうですね!

 さらに地方銀行の一部には、「モノ言う株主」である外資のアクティビスト的な投資会社が大株主になっている銀行もあります。変革という観点でいえば、銀行株だけでなく、一般の事業会社でもアクティビストが大株主に名を連ねている銘柄は注目していいと思います。

――会社四季報などで、各銘柄の大株主のリストにも目を通してみます!

 その際には、財務内容の「自己資本比率」(総資本のうち純資産の占める割合)も見てください。自己資本比率が低い企業は、金利上昇時代には要注意です。自己資本比率が低いと業績が赤字になったときにカバーする体力がないとされ、信用力も低いので資金調達にも難儀するからです。逆に、金利上昇が業績にあまり響かないのは、自己資本比率が高く有利子負債が少ない企業になります。

――やっぱり無借金企業のほうが金利上昇時代は強いんですかね?

 たしかに、極論すると「有利子負債がゼロの企業が最もいい」となるかもしれませんね。ただ、設備投資などを積極的に行わないと成長がままならないケースもありますので、単純に「有利子負債がゼロだからいい」というわけではないのが難しいところですね。

深野康彦著「金利で損しない方法、教えてください!人気FPが教える金利上昇時代の『お金の新ルール』」(扶桑社)

今すぐ無料トライアルで続きを読もう
著名な投資家・経営者の独占インタビュー・寄稿が多数
マネーだけでなく介護・教育・不動産など厳選記事が全て読み放題

    この記事はいかがでしたか?
    感想を一言!

この記事の著者
深野康彦

ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。クレジット会社を経て独立系FP会社に入社、96年に独立。30年以上の実績を持つ日本のFPの草分けの一人。さまざまなメディアやセミナーを通じて家計管理の重要性や投資のあり方を発信するとともに相談業務も行っている。

ライフ・その他カテゴリーの最新記事

その他金融商品・関連サイト

ご注意

【ご注意】『みんかぶ』における「買い」「売り」の情報はあくまでも投稿者の個人的見解によるものであり、情報の真偽、株式の評価に関する正確性・信頼性等については一切保証されておりません。 また、東京証券取引所、名古屋証券取引所、China Investment Information Services、NASDAQ OMX、CME Group Inc.、東京商品取引所、堂島取引所、 S&P Global、S&P Dow Jones Indices、Hang Seng Indexes、bitFlyer 、NTTデータエービック、ICE Data Services等から情報の提供を受けています。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。 『みんかぶ』に掲載されている情報は、投資判断の参考として投資一般に関する情報提供を目的とするものであり、投資の勧誘を目的とするものではありません。 これらの情報には将来的な業績や出来事に関する予想が含まれていることがありますが、それらの記述はあくまで予想であり、その内容の正確性、信頼性等を保証するものではありません。 これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、投稿者及び情報提供者は一切の責任を負いません。 投資に関するすべての決定は、利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 個別の投稿が金融商品取引法等に違反しているとご判断される場合には「証券取引等監視委員会への情報提供」から、同委員会へ情報の提供を行ってください。 また、『みんかぶ』において公開されている情報につきましては、営業に利用することはもちろん、第三者へ提供する目的で情報を転用、複製、販売、加工、再利用及び再配信することを固く禁じます。

みんなの売買予想、予想株価がわかる資産形成のための情報メディアです。株価・チャート・ニュース・株主優待・IPO情報等の企業情報に加えSNS機能も提供しています。『証券アナリストの予想』『株価診断』『個人投資家の売買予想』これらを総合的に算出した目標株価を掲載。SNS機能では『ブログ』や『掲示板』で個人投資家同士の意見交換や情報収集をしてみるのもオススメです!

関連リンク
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.