だから育児・介護で仕事を辞めてはいけない…出世したくなくても今のキャリアにしがみつくべき本当の理由

子育てや介護に直面し、「もうこのまま勤めるのは限界だ」と感じ、仕事をやめてしまう人は少なくない。しかし、人気エッセイストのトイアンナ氏は「キャリアにはしがみついたほうがいい」と断言する。“いい感じ”に人生を送りたいと考える人々に、トイアンナ氏がエールを送る。全3回中の3回目。
※本記事はトイアンナ著「えらくならずにお金がほしい 会社は教えてくれないキャリアのルール(大和書房)」から抜粋、再構成したものです。
第1回:こんなこと指示しなくてもわかるだろ…説明不足を棚にあげ部下を叱責する残念上司をぶっ倒す、3つの対処法
第2回:プレイヤーとして優秀な社員ほど限界まで仕事を詰め込む…「徹夜で何とかなった!」悪の成功体験の積み重ねが生む最悪の事態
目次
正社員をやめるのは最後の手段
私は就活にハマりすぎて本まで書いてしまうほどのマニアだったので、卒業後も就活相談をお受けしています。そこで毎年聞くのが「結婚したいので、転勤したくないです」とか、「子供がほしいので、ハードな仕事はしたくない」といった言葉です。じゃあ、もう婚約者がいるの?と質問すると、彼氏・彼女すらいなかったりする。
確かに、結婚や育児を考えるなら、ゆるいキャリアに就くほうが楽ではあります。私の周りには「俺の妻と子供?生きてるよ」しか家庭を把握できないほどはたらいていたコンサルタントもいましたし、毎日3時間睡眠ではたらくワーママもいます。そこまでしてキャリアを維持したいと思う方のほうが少ないでしょう。
ただ、先にキャリアダウンをすると、その後上げるのは至難のわざです。キャリアは基本的に一方通行であり、下げるのは楽ですが上げるには努力がいります。早期にキャリアを下げすぎると、後で「もっとはたらいておけば……」となりかねないのです。
これは、妊娠出産だけでなく介護や体力の問題とぶち当たったときも同じです。休職制度を使えるだけ使って離職を避けるべし。正社員から離脱するのは最後の手段にしたほうがいい……というのは、周りの介護経験者がみな語ることです。
介護については、「身内が弱ってきたな」というタイミングで、地域包括支援センターへ駆け込むと早期対策につながります。専門用語で要介護になる前の段階を「フレイル」と呼び、フレイルの時期から対処すると、健康寿命が延ばせることがわかっています。単なる体の弱りだけでなく、ひきこもりがちになっているとか、精神的に落ち込みが続いている……といった状態もフレイルと呼び、支援の対象です。地域包括支援センターは全国の役場にありますので、まずは「地域名+地域包括支援センター」で検索してみてください。都心部では土日も運営している地域があります。