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吉田豪、長寿番組終了ラッシュの報道に「そりゃそうだよな」…かたやいま注目する関西のバラエティ番組とは

(c) AdobeStock

 ここ数年、長年愛されてきたテレビ番組が次々と幕を下ろしている。視聴率の低迷や制作費の削減といった背景がある一方で、何十年もフォーマットが変わらない番組も少なくない。テレビ業界は変わっているのか、変わっていないのか。プロインタビュアー・吉田豪氏が、長寿番組終了の理由をひもときながら、変わらないテレビの不思議に迫る。さらに、今自身が注目している番組についても語ってもらった。みんかぶプレミアム特集「テレビ 終わりの始まり」第4回。

目次

スポンサーがつかなくなることにも利点がある

 長寿番組が終了するというニュースが最近目につきますけど、ボクにとっては「そりゃそうだよな」っていう感想しかないんですよ。だって10年、20年前の予算と座組で出来上がっちゃってるわけですからね。これだけテレビ離れが進んで番組の予算削減が求められているぐらいなので、そりゃあ必然的にリニューアルが迫られたり、終わりを迎えたりもするだろうなって。もう前提が変わっちゃってるわけだから。

 ただ、そんな中でも番組を成立させるチャンスはいくつか見つかっているわけですよ。たとえばコロナでスタジオにあまり人数を呼べなくなったりとか、リモートの出演者が増えたりとか、それまでみたいな番組作りができなくなったわけですけど、意外となんとかなったじゃないですか。あれは予算を削減しても在宅率が上がったこともあって視聴率にはさほど影響はないっていう証明になっちゃったと思うんですよね。

 そういう意味では、フジテレビの番組にスポンサーがつかなくなった結果、田代まさし出演の『志村けんのバカ殿様』のコントがたっぷりゴールデンタイムで見られたりとか、『R-1グランプリ』でも飲料メーカー各社の実名を出したネタをやれてたりとか、マイナスをプラスに転がすようなことも増えてきてるから、やり方次第でまだまだ面白くできると思ってます。

いまは二本撮りしないと番組予算が持たない

 あとは「特番っぽく作ってなんとなく豪華に見せる」方法も増えてきてるじゃないですか。そんなに豪華じゃない特番をやったら翌週は番組が休みになるという、2週分の通常番組を特番に偽装する手口なわけですけど、どんな人気番組でもなかなか毎週放送しなくなってきてますよね。『水曜日のダウンタウン』も人気はあるのに毎週は放送しなくて、さらには定期的に総集編が放送されるのもシンプルに予算の問題なわけですよ。

 ただし普通の総集編じゃなくて、浜田(雅功)さんと小籔(千豊)さんだけスタジオに残って過去回のVTRを見るのが基本ですけど、スタジオにダウンタウンとかのモノマネ芸人を集めてみたりとか、前の週と同じ番組をほぼそのまま放送しての間違い探しをやったりとか、それも面白く転がすのがさすがですよね。

 先日終了発表した『オールナイトフジコ』とかも、毎週生放送でやっちゃうと人件費だけでもキツいから毎週放送されなくなったかと思えば、生放送の後に翌週分を収録したりの二本撮りになって、最終的には3月末にフジコーズの一部メンバーが卒業するはずだったのが、近頃話題の港浩一社長肝いりの番組だったから急遽番組自体の終了が決まったわけですけど。

 とにかく普通に番組作りをしていると成立しない時代になっちゃってるから、昔ほど視聴率も取れなくてスポンサーも付きにくい老舗番組はそりゃあ終わるって話なんですよ。それと同様に、『オールナイトフジ』みたいな過去の人気番組のリメイクも、社会の価値基準が変わったいまだとそう簡単には上手くいかないってことだと思います。

「スポンサーがつくことを前提にした番組作り」も今や昔

 それを思うと終了が決まった『行列のできる法律相談所』なんて、同じシステムで何年やってたんですかっていう話ですよね。島田紳助さんがいなくなってそれなりに予算は削減できたと思いますけど、出演タレントは弁護士軍団も含めて相変わらず多いし、もっと人数も減らせるはずなんだから、むしろよく持ったほうだと思います。

 そもそも、『サザエさん』を筆頭に一社提供の番組がどんどんなくなっているように、スポンサーから多額のお金をもらうことを前提にした番組作りがもう難しい時代になっているんでしょうね。昔は「テレビでCMを流せる=ブランド力の証明」みたいな風潮があったんですけど、もうそんな時代でもない。むしろ、YouTubeとかSNSのほうが宣伝効果があるぐらいだし、企業側もそっちに予算を回すのは当然なんですよ。

 テレビ以外の娯楽が増えて視聴率が取れない、企業も不況でしんどい、広告費が減る、制作費がカットされる、結果として番組を続けられない。こういう複合的な問題なのに、「長寿番組が次々と終わるのは寂しい」とか「テレビ離れが進んでる」とか表面的なニュースに終始しているのも無意味な感じがします。

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この記事の著者
吉田豪

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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