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「すべらんなあ」から解放された若手芸人たちの自由「テレビもお笑いも今が一番楽しい」エッセイスト・しまおまほ

(c) AdobeStock

 独自の視点と軽妙な語り口で多くの読者の共感を集めてきたエッセイストのしまおまほさん。一時はラジオの魅力にどっぷりとハマり、テレビとの距離があったと語るが、時を経て再びテレビの世界へと引き寄せられていく。その変遷には、単なるメディア消費ではない、彼女ならではの理由があった。しまおさんが語る“テレビとの関係”を、ぜひ読んでみてほしい。みんかぶプレミアム特集「テレビ 終わりの始まり」第5回。

目次

『とびだすテレビ』にこれ以上ないワクワクを覚えた

 最初のテレビの記憶は両親と3人で暮らしていた部屋にあった16インチよりも小さなブラウン管です。微かな記憶の片隅に、輪郭が滲んだ男性アイドルと、その周りをやはり顔が判別できないほどにボヤけた女の子たちがボンボンを持って踊っている姿が残っています。

 幼稚園に上がる前だったわたしは、多くの子どもたちがそう思うように、それを小人の入った箱だと思っていました。まもなくテレビは捨てられてしまって、それから数年はテレビのない生活に。部屋には外国のラジオ番組が一日中流れるようになりました。

 テレビへの強烈な憧れはその頃に培われた気がします。ある日、住んでいたアパートの隣に住む2つ上の女の子が「今夜『とびだすテレビ』をやるよ」と教えてくれて。その番組のためにコンビニやスーパーのレジ横で3Dメガネが売っていて、それをかけて番組を観るという企画でした。親に頼んで買ってもらって、隣の部屋で教えてくれた女の子と一緒に正座して観ました。後にも先にもテレビであんなにワクワクしたことってないかも。

 普段は廊下から向かいの家の窓から見えるテレビを双眼鏡で覗いてました。野球少年の兄弟がいる家で、だいたい映っているのは野球中継か「巨人の星」でした。

父がテレビを見るルールを改定「ひょうきん族だけOK」

 小学校2年生になる頃、近所にある母の実家に引っ越して二世帯住宅になりました。ここでようやく、家にテレビのある生活が始まったんです。学校で「スケバン刑事」を知らなくて遊びの輪に入れなかったのですごく嬉しかった。

 でも、祖父のルールでテレビが一台しかないうちはNHKニュースしか見せてもらえなかった。岡田有希子が亡くなった日の7時のニュースはよく覚えています。たこ八郎以来の衝撃的な死でした。日曜になると祖父の横でチャップリンやヒッチコックの映画を観ました。

 それから程なくわたしたち家族の元に待望のテレビがやってきます。我が家の二世帯は祖父母が2階、わたしたちが1階と別れて暮らしていて。1階の居間の奥にテレビが置かれました。ここでも買ったのは12インチほどの小さなテレビ。テレビのリモコンをその時初めて操作しました。

 リモコンは今のように持ちやすい形ではなく、幅は平たく縦に長い、ちょうど羊羹のような形をしていて、それ以来我が家ではテレビだろうがエアコンだろうが、リモコンのことは”ヨーカン”と呼ぶようになりました。そして、ルールも父によって改訂されました。「ひょうきん族だけ観てよし」。理由は単純で、父が観たい番組だから。テレビは基本的にはつけないけれど、土曜の夜だけは特別だぞ…と。そこで一気に毒を浴びることに。

「こんなにも見応えのない…」ショックを受けた番組

 ロールスロイス、ロレックス、高級焼肉、おねーちゃん、業界用語。小学生にとって未知の世界観が流れ込んできて「ひょうきん族」はとにかく刺激的でした。ここで「テレビ=大人、しかも男性中心のギラギラした世界」の刷り込みができた気がします。

 中学生になるとチャンネル権を渡されることも増えて、とんねるずやウゴウゴルーガを観ていました。どちらも刺激的でハマりました。ある時、科学の授業で別所哲也が宇宙飛行士を演じる教材用ドラマを観たのですが、刺激の“し”の字もない無味無臭な内容で。それがやけにショックでした。「こんなにも見応えのないテレビがこの世に存在するんだ…」って。つまらないものはテレビじゃない!って思ってましたから。乱れていて、世間の鼻を明かしてくれて、見てはいけないものを観せてくれる。それがわたしにとってのテレビでした。

大学生で「テレビ全部観る」生活も徐々に興味はラジオへ…

 大学生になってようやく自分の部屋にテレビが持てました。そこからは出かける時以外ずっとテレビつけっぱなし生活。これまで自由に観れなかったぶん、テレビの全部を目撃してやろうと朝から晩まで、「いいとも」から「映画天国」の山崎バニラまでずーっと観てました。家に何台もテレビとビデオデッキがあって全部の番組を録画してるという堀井憲一郎のこと、めちゃくちゃ羨ましいと思ってましたね。あとナンシー関のテレビ評も大好きでした。

 テレビずっと観生活を4、5年続けた後、本当にある日突然テレビをパタッとつけなくなりました。キッカケは吉田豪さんがレギュラーになったと聞いてつけたTBSラジオ「ストリーム」がめちゃくちゃ面白かったから。それまでもラジオは好きでナイナイのANNやみうらじゅんさんと安齋肇さんの「TR2」は聴いていたけれど、報道とサブカルチャーを絶妙なバランスで取り上げていた「ストリーム」のような番組は初めてで。毎日どこで何をしていても聴くようにしていました。よくよく思い出せば、ちょうどホリエモンのライブドア事件と時期が重なっていたんです。この事件のことも、テレビのニュースで観るよりもラジオの方がずっと身近で腑に落ちる解説が聴けました。

「ラジオの衝撃」はテレビを浅く感じさせた

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