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東大卒弁護士が「英語だけの早期教育」には絶対賛成できない理由…本当に「子どものため」なのか“5つの宗派と3つの論点”

(c) AdobeStock

 トレンドに詳しい教育ママ・パパたちの間でひそかに人気を集めているのが、早期英語教育だ。そもそも、早期英語教育とは何か、どんな立場があるのかなど、教育投資ジャーナリストの戦記氏にレポートしていただいた。早期英語教育実践者6名のインタビューとともに、早期英語の実態を明かすーー。みんかぶプレミアム特集「天才の育て方」第7回。

 

目次

大学受験はやはり英語力が鍵

 教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。

 昨年秋の小学校受験を皮切りに始まる日本の受験シーズンですが、2025年3月10日の東大合格発表をもって、一通り終えたことになります。新聞や雑誌といった各種メディアでの特集、そしてX(旧Twitter)に流れる受験当事者たちの悲喜こもごもの発信を見ていると、今年の大学受験も鍵は英語力だったようです。英語で高得点を獲得するのは合格への必要条件、という状況は今後大きく変わることはないでしょう。

「早期英語」という用語を耳にしたことはありませんでしょうか。「早期英語教育」の省略形として、ネットを中心に市民権を得つつある概念です。特にXの教育クラスターにおいては、早期英語というテキストを見かけない日はほぼ無いといっても過言ではありません。

 今回、日本の大学受験はもちろんのこと、海外大学受験においても決定的な必要条件になりつつある英語について、早期英語の真実を深堀りしたいと考えます。

早期英語とは何か…臨界期仮説という考え方

 結論から述べると、かなり抽象的な用語です。

 早期英語について各種論文を調べるとすぐに分かるのですが、2025年現在の教育界において早期英語について統一された定義は存在せず、またその良し悪しについてエビデンスと共に確定的な結論には至っておらず、コンセンサスが取れていない状況です。早期英語賛成派もいれば、反対派もいます。「英語を早期教育した方が良いのか悪いのか?」という案外シンプルなイシューに対して、教育界で議論を尽くしても「良くわからない」というのが現実です。

 早期英語がいかにカオスな状態にあるかは、以下論文のタイトルと抄録を読めばご理解頂けるかと思います。

・早期英語教育と臨界期に関する研究(2021年)

・大妻女子大学英語教育研究所

・抄録:「早期英語教育の考え方の理論的根拠として臨界期仮説をあげることができる。しかし現在まで、臨界期があるかどうかについては明確な結論は出ていない」(以下略)

 英語学習における「臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)」とは、英語を円滑に習得できる時期が限られているという仮説です。感覚的には、幼少期は語学吸収能力が高いが加齢するにしたがって学習が苦労するのは当然ではないか、と考えるのが自然だと思いますが、早期英語の妥当性の大前提となる「臨界期」すら、その存在について結論が出ていない状況です。

 理論的根拠が存在するかどうか怪しい上に、その臨界期については、一般的には、5~6歳(=小学校入学前)、または10~12歳(=小学校高学年)という説もあり、年齢すらも統一的見解に至っていません。

 さて、もうお分かりでしょうか。Xにおいては早期英語の有効性について語られることが多いですが、研究者の世界においては、その大前提となる臨界期の存在はおろか、年齢まで良くわかっていないのが現実なのです。

国内生活でもYouTubeを活用してバイリンガルになった成功事例もある

 そんな得体の知れない早期英語ですが、果たして無意味と断言することは妥当なのでしょうか。

 我々のような21世紀に生きる大人たちは自己の体験として記憶にあるかと思いますが、健康と教育については時代と共に正解が揺れ動くことが多々あります。20世紀後半には健康については「子どもは夏に日焼けすると冬に風邪をひかなくなる」という常識がありましたし、教育については「漫画を読むと馬鹿になる」と真面目に言われていました。つまり、その時代の常識はあまりあてにならないのです。

 しかし、SNSの隆興と共に、かつてならば研究者しかアクセスできなかった1次情報に、誰でも触れることができる時代になりました。それを見ていると、「どう考えても英語教育は早めに開始したほうが良い」という結論に至るのが自然な反応だと思います。海外での現地校生活において英語能力を獲得して母語である日本と英語のバイリンガルになる事例や、国内での生活をしているもののYouTubeをフル活用してバイリンガルになりました、といったコンテンツで溢れています。SNSには失敗事例は開示され辛いという傾向はあるものの、誇張されている可能性はあるといえども成功事例がこれだけあるならば、やはり早期英語は有効であると考えるのが自然なスタンスだと考えます。

 Xの教育クラスターに存在する早期英語関連のツイートを取材していると、情報発信者はおおよそ以下の宗派に大別されます。英語教育のスタンスというよりは、宗教の「宗派」に近い匂いがあるのが特徴的であり、相互にある程度の排他性が存在します。

早期英語5つの宗派

 それぞれの早期英語宗派の特徴を整理してみました。

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この記事の著者
戦記

戦記(@SenkiWork)。教育投資ジャーナリスト。ベネッセRouteアドバイザー。2016年3月に当時年長だった娘がSAPIX入塾テストで偏差値42の最下位クラスだったことをきっかけに、アメブロを開始。小1-3で成績のターンアラウンドを実現し、2019年2月(=新小4)からSAPIX α1の常連メンバーになり、2020年(=小5)初頭にはアメブロで月間100万PVを超え、同年8月に独自ドメイン(https://senkiwork.com)で独立。娘の2022年の中学受験終了後も、鉄緑会や英語教育、そして金融教育について研究を継続している。早稲田大学法学部卒、カリフォルニア大学バークレー校MBA。

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