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なぜタワマンは嫌われるのか…住宅ジャーナリスト「イギリスのチャールズ国王は超高層建築嫌いで知られる」新宿区が新しいタワマンを認めない理由

(c) AdobeStock

 東京の海沿い、23区の中心部、川崎市やさいたま市などのベッドタウン、さらには首都圏の郊外や高崎市や宇都宮市といった地方都市まで、どこを歩いても「タワマン」だらけ。どうして日本はこんな状況になったのか。そして、タワマンが林立したエリアは今後どうなるのか。住宅ジャーナリストの榊淳司が語る。みんかぶプレミアム特集「マンション 勝利の方程式」第5回。

目次

タワマン拒否エリアがじわじわと増えてきている

 振り返れば、1997年に建築基準法が改正され容積率が大幅緩和されて以来、タワーマンション(タワマン・20階以上の超高層マンション)は一種のブームと言える状態が続いてきた。マンションデベロッパー側から見ると「出せば売れる」のがタワマン。だから彼らはタワマンが開発できる場所には必ずタワマンを建ててきた。

 しかし、タワマンは大幅に緩和されたとはいえ、建築基準法の通常の規定に従えば、建てることができない。では、なぜこんなに多くのタワマンが存在するのか?

 それは、その地域の行政(市区町村)が様々な理由を設けて規制を緩和するからである。つまり、行政が同意しないとタワマンは建てられない。だから「タワマンがない」という行政エリアは存在する。例えば、京都市にはタワマンが存在しない。京都市がつくらせないからだ。鎌倉市では鎌倉駅や北鎌倉駅周辺エリアにはタワマンがない。東京23区で言えば、杉並区にはタワマンが極めて少なく、中央区や江東区に多い。特に広大な埋立地で構成される江東区の湾岸エリアは「タワマンだらけ」になっている。

 そして、最近では従来の方針を転換して「タワマンを建てさせない」方向に舵を切る市区町村も現れてきた。

 2025年3月14日の朝日新聞に「大規模マンション建設『無尽蔵ダメ』 新宿区、事前協議を義務づけへ」というタイトルの記事が出た。以下に一部を引用する。

「東京都新宿区が、区内で『大規模マンション』を建設する際、事業者に区との事前協議を義務づける方針を固めた。都市開発による住宅建設時の容積率の緩和などもやめる」

 どうやら、新宿区内でのタワマン開発は極めて困難になったようだ。この他にも、兵庫県の神戸市ではもう何年も前から三宮周辺でのタワマン開発を認めない方針を打ち出している。

なぜ、タワマンは美しくないのか

 2000年代にタワマンが林立し始めたころ、世の中は礼賛一色だった。タワマンこそ人生の成功の証、みたいにもてはやされたのだ。しかし、ここ数年で世間の空気はかなり変わってきた。

 2年ほど前、私は某ネット系の映像メディアの誘いに乗せられて「湾岸タワマン対決」なんていうディベート番組に引っ張り出された。東京の湾岸メディアでニョキニョキと増え始めたタワマンに関して、肯定派と否定派を言葉で戦わせてみる、という安直な企画。そういう企画がメディアの俎上に乗るほど、タワマンという住形態に対する懐疑的、あるいは否定的な意見や見解は、ある意味で市民権を得るようになったのだろう。

 世間がどう考え、どのような方向が主流になるのかどうかは別にして、この問題の本質はタワマンという住形態が日本人を幸せにしているのか、そうではないのか……ということではないか。それ以外に何かあるとすれば、それはタワマンを「好き」なのか「嫌い」なのかという、好悪の問題。

 下世話な話をすると、イギリスのチャールズ国王は超高層建築嫌いで知られる。もちろん、超高層建築には日本のタワマンも含まれるはずだ。英国王が超高層建築をお嫌いな理由は、美醜の感覚に合わない、ということだろう。つまり、ああいう建造物は醜悪である、とお考えになるのだ。

 私は京都市左京区で生まれ、22歳までそこで過ごした。ご存じの通り、京都市内には超高層建築どころか、10階以上の建物も少ない。そういう街で学校を出るまで過ごした身としては、超高層の建造物が「醜悪」という感覚は理解できる。

タワマンが持つ負の側面…「高い階の住戸に住んでいるほうがエライ」という奇妙なヒエラルキー意識

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この記事の著者
榊淳司

住宅ジャーナリスト。榊マンション市場研究所主宰。1962年、京都府生まれ。同志社大学法学部、慶應義塾大学文学部卒業。1980年代後半のバブル期以降、35年以上にわたってマンション分譲を中心とした不動産業界に関わる。主な著書に『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』(イースト新書)、『限界のタワーマンション』 (集英社新書)、『すべてのマンションは廃墟になる』 (イースト新書)などがある。

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