ルポライター・國友公司が新宿・歌舞伎町で出会った一番怖いビジネス…食物連鎖の頂点に立つのは誰か

國友公司氏はルポライター・編集者として活躍する一方、自ら現場に飛び込み、その生々しい体験を本にまとめてきたことで知られる。代表作『ルポ西成』は7万部を超えるベストセラーとなった。街の暮らしに溶け込み、その内側から社会の課題を浮き彫りにする國友氏の視点とは——。
西成、歌舞伎町、そして現在取材を進める横浜・寿町。日本社会の「影」の部分を丁寧に取材し続ける國友氏に、その現場で見てきたものを聞いた。短期連載全3回の第2回。
目次
歌舞伎町「ヤクザマンション」とはどんな場所か
——西成を取材した後、新宿・歌舞伎町に住まれていたそうですね。
西成から戻ってきて、次は何をしようかと考えていた時に、当時の出版社の編集長から「次は歌舞伎町はどうか」と言われました。歌舞伎町に住む場所があるのかと最初は思いましたが、調べてみるとたくさんあって。不動産屋に行って色々話を聞きました。そこで何か面白い場所はないかな、と探していたときに出会ったのが「ヤクザマンション」でした。
——「ヤクザマンション」とはどんな場所なんでしょうか。
僕が住んでいた『ヤクザマンション』は、90年代ぐらいに組の事務所がかなり入っていて、それに伴って関係者もたくさん住むようになった場所です。若い衆たちの共同部屋があったり、売れっ子の店の事務所があったりしていました。
水商売の方や、いわゆる組織の方もいますし、逮捕された場合に肩書きが「無職」になるような人がたくさん住んでいます。
漫画家の山本英夫さんという方が『殺し屋1』という漫画を書いたんですが、その舞台としてそのマンションを取り上げて、まんまその外観の絵を使いました。その漫画の中で「ここはヤクザマンション」みたいに呼ばれていて、それが元になって地元の人にもそう呼ばれるようになりました。
——どうやったら住めるんですか?
普通に不動産情報サイトで探しました。家賃は8万円くらい、築40年くらいの分譲マンションです。部屋によって管理状態にばらつきがあって、壁がベロベロで黄ばみまくりみたいな部屋は5万5000円くらいだったりします。
今のヤクザマンションには、民泊やレンタルルームになっている部屋が多いです。民泊はもうめちゃくちゃ増えていて、新宿区が出しているPDFを開くと、ちゃんと届け出ている民泊の住所が全部出てくるんですが、そこの場所はすごく多いです。
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——歌舞伎町にある「思い出横丁」はどんな場所なんですか?
あそこは独特の世界ですね。90年代前半から2000年代初期にかけて、蛇頭(じゃとう)という密入国を手引きするネットワークが中国にあって、そこを介して中国人が日本に違法に入ってきていました。その中国人たちは1人300万円ぐらいの借金をして日本に来ていたんですが、当時の中国の田舎の年収は6〜7万円ほどでしたので、その借金を返すためにはかなりの無理をしなければならなかったんですね。
日本に来ても不法移民が働ける場所はもちろん限られていましたから、彼らはどんどんマフィア化していきました。当時は中国人の殺し屋が20万円くらいでヒトを殺すこともあり、そういう人たちが集まっていたのが思い出横丁だったんです。
——今も中国マフィアはいるんですか?
新しく入ってくることはまずないですね。日本がそういう場所ではなくなったというか、もっと稼げる国に行くのが普通になっています。昔から悪さをしている人はまだ残っていると思いますが。
——今の歌舞伎町を「牛耳っている」のは誰ですか?