吉田豪が語る、師匠リリー・フランキーの“距離を縮める技術”「人との関わり方の濃密さが異常」稼いだ金額以上に後輩、仕事関係者に奢りまくる

会社組織の出世とはまったく別の場所で、唯一無二のポジションを築き上げてきた人がいる。プロインタビュアー・吉田豪氏だ。これまで数多くの“クセ者”と呼ばれる人物たちと向き合い、濃密で時に緊張感すら漂うインタビューを重ねてきた吉田氏が「師匠」と慕うのが、リリー・フランキー氏。作家、俳優、イラストレーター、ミュージシャン……数々の顔を持つが、その最大の魅力は“人との関わり方”にあるという。吉田氏が、長年目の当たりにしてきた“リリー流”人との距離をぐっと縮める技術について語ってもらった。みんかぶプレミアム特集「ズルい出世術」第7回。
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初対面は2時間遅刻…それでも「惚れてしまう」リターンがあった
ボクが師匠でもあるリリー(・フランキー)さんと最初に会ったのは、いまから30年以上前の1992年。最近還暦になったリリーさんが、まだ20代のときでした。そのときから、リリーさんの人間関係の作り方は到底真似できないなと思ってますね。だって最初に会ったとき、いきなり2時間遅刻してきたんですよ?だけど、そのあとの“リターン”がすごかった。
当時、ボクは編集プロダクションに入ったばかりのペーペー。リリーさんにコラムを頼もうと思ってリリーさんと待ち合わせしていたんですが、普通なら仕事の話だけしてすぐ解散しちゃうものなんですよ。でも、リリーさんはそんな若造に対して、遅刻したお詫びの意味もあってか、1時間、2時間とちゃんと話してくれる。しかも、その中で渡辺美奈代とかのアイドルポップの話題で盛り上がって趣味が合うことも分かった。
その流れで「豪も今度参加しなよ」と、リリーさんが当時やっていたアイドルDJイベントのチームに入れてもらったんです。まだ仕事を始めて1年も経ってない、署名原稿もろくに書いてないような若造だったのに、ラッパーのA.K.I.や宍戸留美さんと並んで、フライヤーに巨大なサイズ“吉田豪”と書かれたんだから、そりゃあ「師匠!」ってなりますよ(笑)。自分がまだ何者でもなかったときにいちばん良くしてくれたのがリリーさんで、そういうことを当たり前のようにやり続けている人なんですよ。
リリーさんは誰に対しても、遅刻した分だけ話す時間を多く取る。それで次の仕事がズレ込んでさらに遅れることになるんですけど、そしたらその人とも遅れた分だけケアをして、しっかり向き合う。だから、みんな怒らない。イベントでもよく遅刻するけど、そのぶん長くやって盛り上げたりと、いちいち濃密な関係性を作るんですよ。