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現金一括で20~30億円のタワマン購入「とんでもないお金持ち」の出現…下がり続ける実質賃金と中間層の衰退

 ここ数年、都心部の不動産価格が急騰している。そんな中、自宅として購入したマンションを売却し、数千万円単位の値上がり益を得る人も少なくない。

 その一方で、『新・空き家問題ーー2030年に向けての大変化』 (祥伝社新書)などの著書もある不動産事業プロデューサーの牧野知弘氏は「今のマンション市場は、さながらバブルの様相を呈しています」と警鐘を鳴らす。

 今後、マンション市場はどうなるのか。住まいや住宅ローンについて、どのように考えれば良いのか。同氏に聞いたーー。全4回の第2回。

目次

下落する投資利回りと「ババ掴みゲーム」

ーー不動産の利回りについて教えてください。現在の市場ではどのような状況になっているのでしょうか?

 不動産投資の基本指標である利回りの観点から見ると、現在の市場の異常さがより明確になります。例えば1億円のマンションを買って年間400万円の賃料が得られる場合、投資利回りは4%です。ところが、これが1億5000万円で売却され、次の購入者にとっては、同じ賃料でも利回りは約2.7%に下がります。

ーーそれがどのような問題を引き起こすのでしょうか?

 この流れが続くと、最終的には「ババ掴みゲーム」(椅子取りゲーム)のような状況になります。つまり、価格が上昇し続ける限りは利益が出るのですが、いつか音楽が止まったとき(価格上昇が止まったとき)に椅子に座れなかった人(高値掴みした人)が大きな損失を被るというわけです。

 現在、高額帯のマンションの利回りは2%を切っているにもかかわらず、キャピタルゲイン(売却益)を期待して購入する人がいます。これは「マンションバブル」と言っても過言ではありません。

ーー「将来的に家賃も上げられるから大丈夫」という意見もありますが、どう思われますか?

  一部の投資家は「今はまだ賃料が追いついていないだけで、将来的には家賃も上げられるから大丈夫」と考えています。しかし、私はこの楽観論に疑問を持っています。東京都内などではたしかに賃料上昇が顕著になっていますが、全体でみると実質賃金は下がっており、生活物価の値上がりで賃上げ分はほぼ吸収されてしまう状況です。さらに、日本の借家人保護の強さから、家賃の大幅な引き上げは現実的ではありません。ということは賃料が追いついて期待利回りを確保できる水準にはなかなか届かないとみています。

現金一括で20~30億円のタワマン購入「とんでもないお金持ち」の出現

ーー不動産市場に影響を与えている富裕層について教えてください。

 不動産市場の異変を語る上で見逃せないのが、富裕層の存在感の高まりです。最近特に注目しているのは、「とんでもないお金持ち」が増えていることです。一部には20億円~30億円程度のタワマンを現金一括で購入する人もいるほどです。

ーー以前と比べて、よりお金持ちが増えているのでしょうか。

 以前は日本人よりも外国人富裕層による高額物件の購入が目立っていましたが、最近は日本人の富裕層も激増しています。野村総合研究所のデータによると、純金融資産1億円以上を持つ世帯は160万世帯を超え、これは全体の約3%にすぎませんが、日本の個人金融資産全体の約4分の1(26%)を占めるまでになっています。

ーーこの富裕層の増加はどのような要因によるものですか?

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この記事の著者
牧野知弘

不動産事業プロデューサー。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産事業プロデュースを展開している。著書に『なぜマンションは高騰しているのか』(祥伝社新書)など多数。

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