勤めてもダメ、住んでもダメ…山手線新駅で注目集める「高輪ゲートウェイ駅」周辺が最悪と言える理由

「住みたい街」と評される人気のエリアにも、掘り起こしてみれば暗い歴史が転がっているものだ。そんな、言わなくてもいいことをあえて言ってみるという性格の悪い連載「住みたい街の真実」。
書き手を務めるのは『これでいいのか地域批評シリーズ』(マイクロマガジン社)で人気を博すルポライターの昼間たかし氏。第2回は山手線新駅で注目された「高輪ゲートウェイ駅」周辺を歩く。
目次
高輪ゲートウェイ駅「え、たったこれだけ?」
高輪ゲートウェイ駅は、間違いなく注目に値する。
そこは、JR東日本が威信をかけて2025年3月27日に「まちびらき」を迎えた「100年先の心豊かなくらしのための実験場」。品川車両基地跡地という約13ヘクタールの巨大な土地に、「THE LINKPILLAR 1・2」をはじめとするツインタワー、複合文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」、高級住宅「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE」などが順次開業予定。総事業費は数千億円規模という、JR東日本の本気度が伝わってくる一大プロジェクトだ。なにより、山手線に新駅を開業させるほどのプロジェクトは、いかにも壮大さを感じさせてくれる。
ところが、実際に足を運んでみると、どうにももやもやした気持ちを抑えることができない。え、車両基地跡の膨大な面積を浪費して、中身はたったこれだけ? なのかと。

窪地に連なる狭小な住宅。これがほとんど失われてしまった港区の原風景
ジブリ音楽が流れるテーマパーク駅…座らせる気のないカフェ戦略
駅を降りると、まずジブリ映画のような優雅なインストゥルメンタルが流れている。まるでテーマパークのような演出だ。改札内にはスターバックスをはじめとするカフェが2店舗。コーヒー1杯は軽く500円を超える。椅子は少なく硬い。明らかに「座らせる気はない」設計である。
なによりJR東日本の駅なのに、お馴染みの立ち食い蕎麦「いろり庵きらく」が見当たらないことは信じがたい。オフィスビルを開発=サラリーマンが多数利用している駅なのに、メイン顧客の味方が完全に排除されているのである。この駅構造、JR東日本クロスステーションの主張によれば、こんなコンセプトなのだという。
引用開始<「エキナカエンターテインメント」をコンセプトに街の玄関口となる高輪ゲートウェイ駅において、利便性に加えて「駅時間を過ごす楽しさ」を提案いたします。キラリと光る日本全国の逸品とめぐり逢う、駅にいるとは思えない品のある大人な空間で余韻に浸る、商品の出来上がりが待ち遠しくなる仕掛け、帰る前に「Eki Park」でコーヒー片手に友人と談笑など「駅での新たな過ごし方」を提供いたします>引用終わり

駅で小腹が空いただけで1000円じゃ足りない。お願いだから立ち食い蕎麦誘致を

1000円近く使って、この椅子でホットドッグを齧れというのか
立ち食い蕎麦屋もない貧しさはとても「(都心の)駅にいるとは思えない」空間だ。なにより、ここでコーヒーを飲みながら談笑できるのは、よっぽどお尻の皮が丈夫な人に違いない。
いくらなんでも薄っぺらい一大イベント
愕然としながら、改札を出ると、出迎えるのは子どもたちの遊ぶ声だ。「Gateway Park」と名付けられた噴水のあるガーデンは、風が通り抜けて涼しい。どこからか沸いて出たママたちが子どもに水遊びをさせている。一見、優雅な光景だが、この子たちも皆、高輪の高級住宅地か港区のタワマンに住む「当たり」を引いた子どもたちなのだろう。そう思うと、どうにももやもやした気持ちが湧いてくる。

キッチンカーが夜20時まで営業。どれだけ食が貧しいかを象徴している

ご覧の通り現状は店舗のバリエーションはなし。今後に期待したいところ
なにより、それなりに面積があるだろう公園は、駅とビルとに挟まれ視界が狭い。警備員も頻繁にウロつく光景には、なにか不穏なものを感じてしまう。すべてが「人工です」「管理しています」を力強くPR。これでは、どうあがいても、都市公園にある一服感はない。