参政党支持のロックミュージシャン、政治批判をするアイドル、陰謀論を主張する格闘家…吉田豪が語る“サブカル的参議院選挙2025”

2025年夏、日本中を巻き込んだ参院選が幕を閉じた。SNSでは著名人の“政治的発言”が拡散され、応援や批判が飛び交うなか、いちばん印象に残ったのは「誰が何を言ったか」より「その人がどんな文脈で語ってきたか」が、まるで共有されないまま議論が進んでしまうことだった。アイドル、格闘家、そして伝説のロックミュージシャンまで。サブカルジャンルの人々が「政治」と向き合ったとき、ネットはどう反応し、社会はどう受け止めたのか。プロインタビュアー吉田豪氏が綴る、誰も語らない“あの人”たちの選挙と闇。
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ベンジーは昔から“そういう人”だったーー驚く人がいることへの驚き
ここしばらく、ボクのTwitterのタイムラインは参政党や排外主義を批判するツイートで溢れかえってます。一応説明しておくと、ボクは諸事情によりTwitterのフォローがゼロになっているからいわゆる“エコーチャンバー”とはちょっと違うはずなんですけど、ボクと仕事で接点があるようなミュージシャンや文化人にはリベラルな人が多くて、おすすめとして流れてくるツイートにも「参政党はどうかと思う」「差別を許さない」的な意思表明が多くなりがちなんですよ。ただ、選挙が終わって改めてよくわかったのは、我々は完全にマイノリティなんだなってことでした。
参政党の憲法草案をじっくり読んで腹を立てている人も、TBSラジオの選挙特番を有料のアフタートークまでちゃんとチェックして、ゲストからクリティカルなツッコミを入れられて対応に困っている政治家に呆れたりするような人も、Twitterだけ見ていると大勢いるんじゃないかって錯覚をしがちだけど、おそらく思った以上に少ないんですよね。もっと単純に「いまの自民党は信用できない! そうなると信用できるのは参政党だ!」って結論になる人のほうが圧倒的に多いんだっていう現実に直面させられました。
そういう空気の中で、ベンジー(浅井健一)が参政党支持を表明して、「ガッカリした」とか「ショック!」とか言ったり、批判してる人もいましたけど、これまでの発言や行動を見てれば、良い悪いは別として「まあ、そうなるだろうね」と思えるはずなんですよ。むしろショックを受けてる人には「今まで何を見てたんだろう……」って驚いたぐらいでした。
「政治の話がしたい」鮮烈だったベンジーのインタビュー
ベンジーはボクも以前インタビューしたことがあって、そのときめちゃくちゃ大変だったんですよ。最初は全然話してくれなくて、ずっとギター弾いたり雑誌を読んだりで。いざ口を開いたと思ったら「新譜の話も人生の話もしたくない。強いて言うなら政治の話がしたい」って言い出したんですよ。「いいですよ、付き合います!」ってなって、何を話すのかと思ったら「街にさあ、ハートマークみたいなのがついた機械が置いてあるじゃん、あれ何?」って。いや、それどこが政治なんだよって(笑)。
それでボクが「あれはAEDって言って、人の命を救うための機械です」って説明したら、「ああ、そう。じゃあいいや」って、それで終わり(笑)。つまり、「なんか気になる」「おかしい」「どこかの政党の仕業じゃないのか」「もしかしたら利権とかあるんじゃないか」とか、自分で納得できないものに対して、疑念を抱きやすいタイプなんでしょうね。で、そういう不安や疑念に対して、寄り添ってしっくりくる答えをくれるのが参政党でもあったんだろうなと思います。アーティストとしてはいつまでもピュアな少年みたいで貴重な存在だなとは思いますけど、同時にすごく危うい部分もあるのが難しいところですよね。
山崎怜奈、仮面女子がご意見番に…ニュースが「怒り」を煽る時代
ベンジーの件もそうだけど、誰がどう発言したかで、ネットが一気に炎上モードになる流れってあるじゃないですか。たとえば最近、Yahoo!ニュースで「アイドルが政治批判をした」って過剰に取り上げられることも増えてきてるんですけど、元乃木坂46の山崎怜奈さんなんかは参政党批判をしたってことがニュースになりがちで、基本的に真っ当なこと言ってるとボクは思うんですけど、批判的な記事になることが多いんですよね。