名門校の“序列崩壊”で学校選びは新たな時代へ…偏差値50の高校に「日比谷高校レベルの天才」が混在する理由

近年の大学受験界で地殻変動が起きている。象徴的なのが、2025年の東大合格者数ランキングである。例年、開成や聖光学院といった私立中高一貫校が上位を独占してきたが、今年は都立日比谷高校が81名の合格者を出しトップ5入りを果たしたのだ。この公立の躍進は東京に限った話ではない。神奈川の横浜翠嵐高校も過去最高の実績を記録するなど、長らく続いた「私立一強」の構図は崩れつつある。
なぜ今、公立進学校は奇跡的な復活を遂げているのか。「日本一進学校に詳しいホスト」の異名を持つ歌舞伎町ホストの翠嵐氏と、学歴活動家のじゅそうけん氏が徹底的に語り合った。短期連載全4回の第3回。(対談日:6月27日)
目次
灘・東大寺と遜色ない…関西トップ層が殺到する公立高校
じゅそうけん: 関西は、こういう普通科とは別の専門学科を設けて、そこが実績を牽引するケースが多いですよね。兵庫の神戸高校にある「総合理学科」、通称「総理」とか。
翠嵐: 神戸の総理は、高校受験の難易度で言ったら、あの灘高校の次ぐらいに難しいと言われています。40人という狭き門に、関西中のトップ層が殺到する。
じゅそうけん: 関西の塾では、最難関コースの目標が「灘・東大寺・神戸総理」って言われるくらいですもんね。公立の一学科が、そこに入ってくるのがすごい。
翠嵐: 総理はバケモンです。卒業生のほとんどが京大か医学部に進む。これも模試の平均点データで見ると、灘や東大寺学園と遜色ないレベルなんです。公立がここまで来るか、と興奮しますよね。3年間の教育で、6年一貫のトップ校に追いつき、追い越している。ロマンしかない。
国立医学部の合格者数ランキング上位を独占する“西日本勢”の謎
じゅそうけん: 最後に九州。九州は、私立の久留米大附設とラ・サールが別格として存在しつつ、各県に核となる公立進学校が一つずつある、というイメージですね。
翠嵐: そうですね、各県に各トップ校、という感じ。
じゅそうけん: そして土地柄、圧倒的に医学部進学者が多い。東京や大阪に大企業が集中している分、地方では医師がエリートコースとして確立されているんでしょうね。象徴的なのが熊本高校で、国公立医学部に毎年50人くらい合格します。
翠嵐: 九州は人口比で国公立医学部の定員が多いというのもありますが、それにしてもすごい数字です。国立医学部合格者ランキングを見ると、本当に西日本の進学校ばかりが並びますからね。
なぜ福岡では“絶対王者”が生まれず「3強」が拮抗するのか
じゅそうけん: 福岡県も面白いですよね。学区制がまだ残っていて。
翠嵐: 福岡の学区制は、すごく良い形で機能していると思います。修猷館、筑紫丘、福岡という「御三家」が、それぞれ別の学区のトップ校として存在していて、進学実績も高いレベルで拮抗している。
これがもし低いレベルで均質化してしまうと、生徒が私立に流れてしまいます。でも、トップ校が3つバランス良く存在することで、公立の価値を保てている。素晴らしい制度設計です。
愛知の名門校の“序列崩壊”が教える、これからの学校選びで本当に見るべきこと
じゅそうけん: では、僕の地元、中部・東海地方の話を。愛知県も何だかんだで公立主義の土地柄です。進学実績トップは、医学部に100人以上合格する私立の東海高校ですが、それに続くのは旭丘、岡崎、明和、時習館、刈谷といった公立の名門校ばかりです。