「中学受験は高校受験よりコスパが悪い」は本当なのか…元SAPIX講師が語る不都合な真実 中学受験で“不幸になる家庭”の絶対的な共通点とは

近年、首都圏を中心に過熱する一方の中学受験。我が子にとって最良の選択をしたいと願う親にとって、悩みは尽きない。併願戦略はどのような組み合わせが最適なのか。どの塾を選択すべきなのか。成績が伸び悩んだときはどう対応すべきなのか。そもそも中学受験は「地頭ゲーム」に過ぎないのか。
そんな数々の疑問を解決するべく、SAPIXなどの大手中学受験塾で教鞭をとり、灘特進クラスの算数講師なども歴任したオレンジ先生氏に、学歴活動家のじゅそうけん氏が話を聞いた。受験の現場を知り尽くした2人が、中学受験戦略のすべてを本音で語り尽くす。短期連載全4回の第4回。(取材日:8月22日)
目次
「中学受験に向かない子ども」はいるのか プロの回答
――僕自身が『中学受験はやめなさい』という本を書いたこともあり、ぜひお聞きしたいのですが、「こういう家庭は、中学受験よりも高校受験のほうが向いているのではないか」と感じるケースはありますか?
まずお子さん本人に関して言えば、中学受験に「向き・不向き」はないと僕は考えています。勉強は、やればやるだけ頭が良くなります。僕は、中学受験や高校受験の最大の価値は、良い学歴を得ること以上に、「脳みそにシワを増やす」、つまり地頭を鍛える絶好の機会であることだと思っています。そのプロセスは、どんな子にとっても無駄にはなりません。
問題は、お子さんではなく「親」、もっと言えば「家庭の金銭感覚」です。
中学受験で“不幸になる家庭”の絶対的な共通点
――金銭感覚というのは、どういうことでしょう。
たとえば、中学受験に300万円かかるとします。そのご家庭で、受験のために使える教育費の全財産が300万円だった場合、どうしても「元を取ろう」という気持ちが働いてしまうと思うんです。まるで、焼肉食べ放題に来たから、吐くまで食べないと損だ、というような感覚です。
しかし、もし教育費の予算が1億円あって、そのうちの300万円を塾代に使うのであれば、「まあ、いい経験になるし、頭も良くなるだろう」と、結果に対して余裕を持てるはずです。
この「300万円」という金額をどう捉えるかは、ご家庭の経済状況や価値観によってまったく異なります。「これだけお金をかけたのに、なんでこんな成績なの!」と子どもを追い詰めてしまうくらいなら、僕は無理に中学受験に突き進むべきではないと思います。