中学受験の成否を分ける「親の世帯年収1,000万円の壁」とは…子どもの生涯年収を決める“中学受験の4大資産”の正体を識者が解説

首都圏を中心に過熱する中学受験。多くの親が「周りもやっているから」という漠然とした思いでその渦に飛び込んでいないだろうか。長年、数々の生徒を難関校合格へ導いてきた中学受験を考える塾長氏は、こうした「なんとなく中学受験」に警鐘を鳴らす。
最近出版された著書『中学受験は戦略が10割: 東大生の親が絶対やらないこと (みんかぶマガジン新書)』の売れ行きも絶好調な同氏に、中学受験に向く子の素質や家庭の経済的条件といった現実的な側面から、中学受験とその後のキャリアの意外な関係性、AI時代のビジネスに直結する子どもの思考力の鍛え方まで、幅広く語っていただいた。全3回の第1回。みんかぶプレミアム特集「キャリアから考える中学受験」第4回。
目次
識者が警鐘を鳴らす「なんとなく中学受験」の落とし穴
最近、保護者の皆様から「うちの子は中学受験をすべきでしょうか?」というご相談を非常に多く受けるようになりました。特に都心部では、まるで小学校の次のステップが中学受験であるかのように、多くのお子さんが塾に通い始めています。「周りのみんながやっているから、うちもやらなければ」——そんな漠然とした不安からスタートするご家庭も少なくないでしょう。
しかし、中学受験は本当に「みんながやるべき」ものなのでしょうか。多大な時間、労力、そして費用を投じるこの一大プロジェクトに、私たちはどのような価値を見出すべきなのでしょうか。
子どもの生涯年収を決める「中学受験の4大資産」
私は、中学受験の価値は、単に「偏差値の高い学校に入ること」だけにあるのではないと考えています。その本質は、子どものその後の人生、特にキャリア形成にまで影響を及ぼす「環境」「人脈」「思考力」「教養」といった、目に見えない資産を築くことにあるのです。
この連載記事では、私がこれまで多くの子どもたちやその後の彼らの人生を見てきた経験、そして私自身の友人たちの実例も交えながら、「キャリア」という視点から中学受験の真の価値を解き明かしていきたいと思います。なぜ中学受験をするのか、その先に何があるのか。この長い道のりを親子で歩む意味を、一緒に考えていきましょう。
中学受験を始める前に確認したい「わが子の素質」
中学受験という長い航海に出る前に、まず確認すべきことがあります。それは、お子さん自身がその航海に適した素養を持っているか、そしてご家庭が航海を支えるだけの準備ができているか、という2つの点です。
まず、どんなお子さんが中学受験に向いているのか。私はいつも、こうお答えしています。
「学校の授業が退屈なくらい簡単で、物足りなさを感じている子」
これが一つの大きな目安です。小学校のカラーテストで、特に努力せずとも大体100点が取れてしまう。先生の話は一度聞けば理解でき、もっと難しいこと、新しいことを知りたいという欲求が内から湧き出ている。そういったお子さんにとって、画一的な進度で進む公立の授業は、その有り余る知的好奇心を持て余す場になりかねません。