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対話のない“演説リレー”にモヤモヤ…吉田豪が『RONDAN FES 2025』で感じたこと「主義主張の違う人が交わるから面白い」

 2025年10月4日・5日に伊豆で『RONDAN FES』が開催された。政治やメディアをテーマに多様な登壇者が議論を交わすトークイベントで、SNS上では「左派寄りの論客が集う閉じたフェス」と評する声もあるが、実際の現場の空気は、外から見えるラベルだけでは語り尽くせないものがあったはずだ。昨年に続き2年連続で参加したプロインタビュアー・吉田豪氏は、今年、いくつかの場面に違和感と手応えを同時に覚えたというーー。

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目次

「フェス」という意識が低かった出演者たち

 先日、『RONDAN FES』っていう、いわゆる“左寄りのトークフェス”に出るため、伊豆の山まで行ってきたんですよ。ボクの出番は2日目で、個人的にはめちゃくちゃ面白かったんですけど、初日を配信で見ていてモヤモヤするところがありました。これは2日目に自分が出たときも言ったんですけど、「イベントをやっている」「お客さんがいる」っていう意識が薄い出演者が多かったんですよね。ひとりがマイクを握ると、とにかくやたら話が長くて、自分の主張をひたすらしゃべって、ようやく言い切ったと思ったらマイクを机に置く。で、司会が次の人に振って、また別の人が長尺の独演で、言い終えたらマイクを置く、その繰り返し。対話がまったくないし、盛り上げようという意識もまったく感じられなかったんです。

 「えっ、これ何!?」って普通に驚きました。目の前にお客さんがいるのに、お互いの主張の発表会というか、壁打ちにもなってない感じ。サッカーをよく知らないままサッカーで例えると、パス回しゼロで、ひとりがボール持ちっぱなしでシュートを打つ。そして、今度は相手がまた持ちっぱなしでシュートを打つって感じで、会話のラリーがなさすぎたんです。要はトークイベントとかじゃなくて弁論大会や勉強会に近かったというか。

『RONDAN FES』出演で思い出されるTOKYO MXの番組

 それで思い出したのが、昔ボクがよく出ていたTOKYO MXの『モーニングCROSS』という朝の報道番組。コメンテーターは右も左も陰謀論も入り乱れてて、望月衣塑子さんや津田大介さん、三橋貴明さん、長谷川幸洋さん、はあちゅうさんにベンジャミン・フルフォードさんまで出ていて、北条かやさんやフィフィさんと何度も共演して仲良くなったり、いろいろ楽しかったんですけど、ずっと引っかかってたのが“誰ひとりカンペを見ないし、尺を守らない”ってことでした。

 番組のコーナーに「オピニオンCROSS neo」というのがあって、それぞれが選んだテーマを元に、決められた時間でゲスト3人(2人のときもあり)が意見を言って最後にみんなでクロストークするという企画なのに、カンペで「残り1分」「0分」「1分オーバーです。次の人に代わってください」って出てもみんな完全無視。気づいたら自分の主張だけしゃべり続けて時間オーバーになっちゃって、みんなクロストークにたどり着かなかったんです。で、ボクは毎回最後の出番だから、そもそも持ち時間が短くなりがちで、その上でカンペで時間経過を見ながら要点だけキュッとまとめて話を早めに終わらせて、ちゃんとクロストークもするっていうのをずっとやってました。クロストークが重要だからこういう番組名で、こういうコーナー名になってるはずなのに、左右関係なく誰もが自分の主張ばかりして、ちっとも対話をしようとしなかった。そこがずっと引っ掛かってたんですけど、それに近いものをRONDAN FESにも感じたんですよ。

呼んで大正解だった「爆弾犯の娘」

 ボクらが日頃やってるトークイベントって、マイクは常に口元に近づけたまま、いつでも話に入れる体勢で、相槌を打ったりリアクションしたりしながらこまめに会話に加わって、テンポを作っていくものなんですよね。合いの手でも、軽いツッコミでも、笑うだけでもいいから、誰かが一方的に話す状態にはならないようにしてラリーを生む。それがないと、難しい話ならなおさら眠くなっちゃうじゃないですか。

 「フェス」って本来、音楽フェスなんかそうですけど普段なら接点もない人たちがバックステージで仲良くなって一緒に酒を飲んだり、ステージに乱入して一緒に歌ったり、そういうコミュニケーションができる場だと思うんですよ。だから、RONDAN FESも閉じたお勉強会的なものだけじゃなくて、異なる立場の人が混ざって、ちょっとピリついたりしてもいいから、予定調和じゃない対話をするからこそ面白いわけで、そこで“演説リレー”をやっても、興味があってお金と時間を使って伊豆まで来る人はともかく、配信で見ているぐらいの距離の人にはまず届かないですよね。でも、そういう人を巻き込んでいかなきゃリベラルに未来なんかないはずなんですよ。もっとエンターテインメント要素のある、刺激的なイベントにしていかないと。だから、フェス感を出すことをテーマにして挑みました。

 ちなみに去年の『RONDAN FES』は、『「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史』などの著作がある辻田真佐憲さんの飛び入りがデカかったんです。こっちが頼んだわけでもないのに、いきなり出演者の中でいちばん右寄りな“異物”として酒を飲みながら乱入してきて、まず「皆さんどこに投票しましたか? やっぱり蓮舫ですか?」って左派の人を軽く煽って、最後に「私も蓮舫です。後悔しています」でオチをつける。その瞬間、思想の立場とか関係なく、緊張と緩和で笑いが起こり始めた。

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この記事の著者
吉田豪

1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。

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