中学受験にかかる“リアルな費用”を教育投資ジャーナリストが告白 子どもの教育にかけたお金、本当に「元」は取れるのか

わが子の教育にかけた費用は、本当に「元」が取れるのか――。これまで教育の世界では「品がない」とタブー視されてきた「コスパ」という視点から、今注目の2人が対談。学歴活動家として独自のポジションを築くじゅそうけん氏と、保護者目線で業界の闇に切り込む教育投資ジャーナリストの戦記氏が、中学受験のリアルを徹底的に語り合った。
中学受験にかかる衝撃的な費用の実態から、中学受験からの「賢い撤退」戦略まで、綺麗事なしの本音トークは中学受験を検討するすべての保護者にとって必見だ。短期連載全10回の第1回。(対談日:10月3日)
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目次
学歴のプロが語る、誰も教えてくれなかった「不都合な真実」
――本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは登壇者の皆様から自己紹介をお願いできればと思います。
じゅそうけん: 受験総合研究所というアカウントを運営しております伊藤と申します。通称「じゅそうけん」です。僕はもう「受験」と名の付くものなら、中学受験から大学受験まで、すべてを取り扱うというスタンスで活動しています。最近では小学校受験や就職活動といった、より広く「選抜」に関わるテーマにも情報発信の幅を広げています。「受験といえば、じゅそうけん」という存在になることを目指して活動している、自称「学歴活動家」です。本日はよろしくお願いいたします。
「保護者が本当に知りたいリアルな情報」を隠す業界の闇
戦記: 教育ジャーナリストの戦記と申します。もともとは2016年にアメーバブログで中学受験に関するブログを書き始めたのが活動のきっかけです。娘の中学受験を伴走する中で、気づけばアメブロの受験ジャンルでナンバーワン、ナンバーツーを争うようになっていました。2020年にはアメブロから独立して自身のブログサイトを立ち上げ、現在に至ります。
娘は2022年に中学受験を終えたのですが、その時点では私は単なる一人のブロガーでした。しかし、その頃からTwitter(現X)での発信を本格的に始めたところ、多くの方に注目していただくようになり、今のような活動につながっています。
なぜ「ジャーナリスト」を名乗るようになったかというと、単純に、自分が知りたいことを調べるのが好きだからなんです。そして、なぜ調べるかというと、保護者が本当に知りたいようなリアルな情報が、どこにも書いていないからです。誰も書いてくれないなら自分で調べるしかない、と。そうやって調べまくっていたら、ダイヤモンド・オンラインさんなどからお声がけいただき、記事を執筆するライターとしての活動もするようになりました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
“教育×コスパ”という禁断の組み合わせこそ本質だ
――ありがとうございます。さて、本日はじゅそうけんさんと戦記さんの電子書籍出版記念イベントということで、まずはじゅそうけんさんの著書『コスパで考える中学受験・大学受験』についてお伺いします。この本、非常に大きな反響を呼んでいますよね。
じゅそうけん: おかげさまで、ありがとうございます。
――なぜ、この「コスパ」という、ある意味で教育とは対極にあるような概念を、学歴や受験と結びつけて語ろうと思ったのでしょうか。そのきっかけを教えてください。
じゅそうけん: きっかけは、いや、もう、あなたですよ(笑)。このイベントの司会も務めてくださっている、担当編集者の方です。「コスパと受験を繋ぎ合わせたら面白いんじゃないか」というご提案をいただいて。「え、本当ですか?」と半信半疑で書き始めたら、ものすごい反響があった。これが正直な流れです。
わが子の教育にかけたお金、本当に「元」は取れるのか
これまで、教育の世界に「コスパ」なんて言葉を持ち込むのは「品がない」ことだと考えられてきたと思うんです。投資収益率(ROI)のような考え方、例えば僕がよく使う「附属校合格は、大学受験からの早期“利確”だ」なんていう表現は、特に現場の塾の先生方からは「下品だ」「教育と投資は違う」と、ものすごく批判されます。でも、そういったタブー視されてきたことを、おそらく僕が初めて大っぴらに言い始めた。結果として、多くの方に関心を持っていただけたということだと思います。
戦記: なるほど、そういう流れだったんですね。では、編集者である司会者の方に質問ですが、なぜ「コスパ」という言葉を学歴に結びつけようと思われたのですか?
偏差値競争に突っ走る親たちが完全に見落としている視点
じゅそうけん:はい。やはり、どんなご家庭でも、お子さんを公文式に行かせるにしても、ほかの塾に行かせるにしても、必ずお金がかかりますよね。特に中学受験となれば、それは数百万単位の投資になります。そうなると、支払いをする親御さんからすれば、「それだけのお金を払って、一体どんなリターンがあるんだ?」と考えるのは当然のことだと思うんです。夫婦の一方が「子どものために」と良かれと思って新しい習い事を増やしたときに、夫婦間で「なんでそんなものにお金を払ったんだ」という衝突が起こるのも、よく聞く話です。
もう一つは、多くのご家庭が、受験の「その先」を見ていないのではないか、と感じていたからです。「この学校に合格した先に、子どもは将来何になるのか」というキャリアの部分が見えないまま、目の前の偏差値競争に突っ走ってしまっている。じゅそうけんさんが最近提唱されている「予後」という概念にも通じますが、受験と将来のキャリアをセットで考えるのが本来あるべき姿、つまり「筋」なんじゃないかと思ったんです。もちろん、私自身も「品がない」と思われるだろうな、という懸念はありました。ですが、あえて誰もやりたがらない、でも皆が心のどこかで気になっているであろう、このテーマに踏み込むことに価値があると考えました。
戦記: いや、まったくもって本質的な視点だと思いますよ。だってお金は現実にかかるわけですから。
中学受験の“リアルな費用” 戦記氏が告白
――そうなんです。これまでその視点がすっぽり抜け落ちていたことこそが、受験業界の「闇」の一つだったのかもしれません。