大学受験の「序列」に激震…早慶W合格者はなぜ早稲田を選ぶのか 慶應の“ブランドイメージ低下”を招いた意外な要因とは

わが子の教育にかけた費用は、本当に「元」が取れるのか――。これまで教育の世界では「品がない」とタブー視されてきた「コスパ」という視点から、今注目の2人が対談。学歴活動家として独自のポジションを築くじゅそうけん氏と、保護者目線で業界の闇に切り込む教育投資ジャーナリストの戦記氏が、中学受験のリアルを徹底的に語り合った。
中学受験にかかる衝撃的な費用の実態から、中学受験からの「賢い撤退」戦略まで、綺麗事なしの本音トークは中学受験を検討するすべての保護者にとって必見だ。短期連載全10回の第4回。(対談日:10月3日)
お二方の書籍が大好評発売中です!
目次
激変する大学の“序列” 早慶W合格者はなぜ早稲田を選ぶのか
――ここで、少し話を大学の話題に移したいと思います。じゅそうけんさんがみんかぶマガジンで連載を始めた当初、早慶の学部の序列に関する記事が大きな反響を呼びました。そして最近、大学受験の世界では、早稲田と慶應にダブル合格した場合、かつては慶應を選ぶ受験生が多かったのが、早稲田を選ぶ受験生が増えているというデータが出てきています。この早慶の序列の変化について、お二方のご意見をお聞かせください。
じゅそうけん: これは我々が常にウォッチしているテーマですね。ここ20年ほど、早稲田大学と慶應義塾大学の両方に合格した受験生は、圧倒的に慶應に進学する傾向が続いていました。ところが今年のデータで、ついにその比率が逆転し、早稲田を選ぶ受験生が慶應を上回ったんです。
早稲田と慶應の明暗を分けた“たった1つの科目”
戦記: 歴史的な転換点ですよね。その最大の要因は、早稲田大学が断行した「入試改革」にあると見ています。特に象徴的なのが、看板学部である政治経済学部が、一般入試で数学を必須科目にしたことです。
これまで早慶の文系学部は、国語・英語・社会の3科目で受験するのが一般的でした。そこに数学を課すことで、東大や一橋大といった最難関国立大学を第一志望とする、数学のできる優秀な受験生を併願者として取り込めるようになった。受験生のレベルが、質的に向上したわけです。一方で、慶應の文系学部は、今でもほとんどが数学なしで受験できます。この差が、国立大学からの併願者を早稲田ががっちり確保できるようになった大きな理由だと考えています。
早稲田OBが明かす「序列逆転」への複雑なホンネ
だから、理由は非常にシンプルなんですよね。「改革をしたから」ただそれだけです。しかし、我々OBからすると、ちょっと複雑な心境もあるんですよ。僕もじゅそうけんさんも早稲田出身ですが、正直、早稲田って「永遠の2番手」くらいがちょうどいい大学なんです。この20年間、ずっと慶應の後塵を拝してきたわけですが、それがむしろ心地よかった。「キラキラした陽キャは慶應に任せておけ」と。「我々はちょっと地味で、オタクっぽいところが魅力なんだ」というアイデンティティがあった。それが1位になってしまうと、なんだか学校の雰囲気がおかしくなってしまうんじゃないかと心配です。早く慶應に復活してもらいたい、というのが個人的な希望ですね(笑)。
慶應の“ブランドイメージ低下”を招いた意外な要因とは
じゅそうけん: もう一つ、まことしやかに囁かれている説があります。数年前に慶應義塾高校が夏の甲子園で優勝したときの、あの応援の盛り上がり方です。大学全体が一体となって、まさにアイドルのライブのように熱狂する姿を見て、「あのコミュニティに大学から入っていくのは、ちょっと気後れするな…」「生き苦しいかもしれない…」と感じた受験生がいたのではないか、という説です。
専門家が肌感覚で語る、慶應内部の“見えない壁”
戦記: あれは結構大きな要因かもしれません。慶應には、内部進学者と外部からの入学者という明確な区別がまず存在します。そして、内部生の結束が非常に固く、外部生はなかなかその輪に入りづらい、という話もよく聞かれます。今の若い世代が、わざわざそんな苦労をしてまで、既に出来上がったヒエラルキーの中に飛び込みたいと思うかというと、疑問ですよね。「両方受かったけど、大学から入るなら、よりフラットな早稲田のほうが居心地が良さそうだ」という判断が働いている可能性は十分にあると思います。まだ統計的なデータはありませんが、肌感覚としてそう感じます。
じゅそうけん: データとして明確に出ているのは、ダブル合格者の進学先の割合が、急激に早稲田に傾いてきているという事実です。
戦記: その理由を詳細に分析したら、非常に面白い研究になるでしょうね。
入学タイミングで決まる「文化資本」の圧倒的な差
――その早稲田と慶應には、それぞれ附属校・系属校がありますが、これらの学校はどのような立ち位置なのでしょうか。どういったご家庭が附属校を選ぶべきか、という点についてもお聞かせください。
じゅそうけん: 附属校、特に小学校から内部進学してくる層は、文化資本の高さが別格ですね。慶應義塾の幼稚舎や、早稲田実業学校の初等部から上がってくる子どもたちは、基本的に我々のようなサラリーマン家庭の子弟ではありません。大企業の創業家一族や御曹司、政治家、芸能人のお子さんといった、いわゆる「上流階級」のルートです。
戦記: キラキラしていて、本当に輝いていますよね。羨ましい限りです。
じゅそうけん: それが中学・高校からの入試になると、いわゆる「エリートサラリーマン」の子どもたちが入ってくるようになります。総合商社にお勤めの方のお子さんなどが、その典型ですね。
戦記: 私も総合商社にいましたが、めちゃくちゃ多かったですよ。海外駐在帰りの子どもが、慶應SFCの中等部・高等部に入る、みたいなのは王道中の王道パターンです。
じゅそうけん: そして、大学入試になると、ようやく我々のような庶民にも門戸が開かれる、という階層構造になっています。
「勉強しない子」を早慶に入れる“究極の裏ワザ”
戦記: 私の早稲田時代の仲間で、面白い事例があります。彼は「うちの息子は本当に勉強しなくて、大学受験なんて絶対に無理だ」と嘆いていました。そこで彼が選ぼうとしたのが、なんと早稲田大学の系属校である「早稲田渋谷シンガポール校」でした。「あそこなら、ほぼ確実に入れる。それで早稲田大学への進学がほぼ保証されるなんて、めちゃくちゃコスパ良くないか?」と豪語していましたね。
じゅそうけん: 「慶應義塾ニューヨーク学院」と「早稲田渋谷シンガポール校」は、学力だけで見れば、本当にお金さえあれば誰でも入れると言われていますからね。