「MARCH・早慶だけじゃない」採用担当者が理系採用で狙うべき大学群は「電農名繊と四工大」

近年、採用市場において学生の良し悪しを見抜くのが、難しくなっている。ChatGPTをはじめとするAIによるエントリーシート作成が当たり前となり、文章の質だけでは判断が困難になってきた。
それに加え、コロナ禍以降に爆発的に普及したオンライン面接により企業への応募者数は急増し、採用担当者は学生一人ひとりを丁寧に見極める時間的余裕も失われつつある。
こうした影に隠れて、「学歴」にも大きな変化が現れている。
「ここ15年で、TOCKY、5S、電農名繊、といった新しい大学群が誕生しました。すでに受験生や若者の間では常識となり、優秀な学生たちがこれらの大学群に集まっています。自分が受験生だった頃の知識のままでは、優秀な学生を見逃しているかもしれません」
そう語るのは、教育系YouTuberとして登録者20万人を誇り、企業での採用経験を持ち、YouTube番組「令和の虎」では数多くの受験生を審査してきた小林尚氏だ。
学歴フィルターは今も機能するのか。そもそも採用基準として大学をどう位置づけるべきなのか。採用担当者が知っておくべき最新の大学群事情と、データに基づく採用戦略の考え方を聞いた。全3回の最終回。
目次
研究への熱意や取り組みのレベルが高い
理系の大学群で採用担当者の方に特に知っていただきたいのが、「電農名繊」と「四工大」です。
電農名繊は電気通信大学、東京農工大学、名古屋工業大学、京都工芸繊維大学の四つの国立大学を指します。いずれも専門性が高く、理系の単科大学または理系中心の大学です。
レベル感としては、MARCH理系以上、早慶理工未満といったところで、東京理科大学と同程度です。入学には共通テストでは70%台後半から80%程度の得点が求められます。
電農名繊の最大の特徴は、知名度こそ高くないものの、就職実績が抜群に良いという点です。
各大学とも専門分野の教育が充実しています。学生も研究への熱意や取り組みのレベルが高いのが特徴です。
やりたいことや研究領域で大学を選んでいる学生が多いため、知名度やブランドよりも中身を重視するタイプが集まっています。その結果、大手企業への就職率も高く、卒業後の平均年収も高い水準にあります。例えば電気通信大学は、大学別の平均年収ランキングでもかなり上位に入ってきます。
採用担当者の視点で見ると、電農名繊は見落としがちな大学群です。しかし、理系人材を狙っている企業は、すでにこの大学群を重点的に採用していることが多いと思います。
一方、「四工大」は、芝浦工業大学、東京都市大学、東京電機大学、工学院大学の四大学を指します。首都圏の私立理系単科大学として、以前から一定の知名度はありましたが、ここ数年で評価が上昇傾向です。
最も注目すべきは芝浦工業大学です。現在、芝浦工業大学はMARCH理系と同等のレベルに到達しています。偏差値だけでなく、就職実績も非常に良好です。残りの三大学ーー東京都市大学、東京電機大学、工学院大学は、MARCH理系の滑り止めという位置づけになります。
学歴が証明するもの、しないもの
ここまで様々な大学群を見てきましたが、最後に学歴をどう捉えるべきかについてお話ししたいと思います。
学歴が証明するのは「学ぶ力」と「継続力」です。難関大学に合格するには、長期間にわたって学び続ける必要があり、この二つの能力は入社後の成長にもつながります。
ただし、学歴が証明しないこともあります。それが仕事の適性やコミュニケーション力です。
よく「東大は出たけれど使えない」という話を聞きますが、これは能力の問題ではなく、適性の問題です。研究職では高いパフォーマンスを発揮する人が、営業職では力を発揮できないということは十分にあり得ます。
ビジネスの現場では、チームで協力する、顧客の要望を理解する、信頼関係を築く。こうした場面で求められるのは、学歴では測れない能力です。
だからこそ、学歴を正しく理解することが重要になります。TOCKYや5S、電農名繊といった新しい大学群を知ることで、ポテンシャルの高い学生を見逃さずに済みます。ただし最終的には、面接を通じてその学生が自社に適性があるかを見極める必要があります。
学歴を適切に活用しつつ、目の前の学生をしっかり見る。学歴からは「学ぶ力」と「継続力」を、面接からは適性やコミュニケーション力を見極める。この役割分けを意識することで、適切な人材の見極めと配置につながるはずです。