「MARCH」は質が下がったのか?学歴フィルターが通用しない時代の採用術

近年、採用市場で「最近の学生は質が落ちた」という声を耳にする機会が増えた。以前と同じ学歴フィルターを使っているはずなのに、最近は優秀な学生に出会えない、せっかく優秀な学生に内定を出したのに他社に取られてしまった。
「かつては大学入試によって学生の能力がある程度振り分けられていましたが、今はそうではありません。同じ大学名でも、学生の能力差が非常に大きくなっているんです。特に、多くの企業が採用のボリュームゾーンとしているMARCH(明治、青山、立教、中央、法政)は、人口減少や大学教育の変化の影響を強く受けています。大学や学生の変化を知らないと、優秀な人材の取り逃してしまうかもしれません」
そう語るのは進学塾VAMOSの富永雄輔氏だ。採用担当者が知っておくべき現代の大学受験環境と、大学生の実像とは何か。全3回の第1回。
目次
学力が大学名で測れなくなった理由
現在、大学生の質は急速に二極化しています。
同じ大学でも個々の学生の学力、コミュニケーション能力に大きな開きが生まれています。採用担当者の方からすると、「有名大学なのになぜ、筆記がこんなに低いのか」とか「中堅大学なのに面接評価が非常に高いな」と感じる機会は増えたのではないでしょうか。
この背景にあるのは、大学受験に対する価値観の変化、そしてインターン参加率の上昇にあります。
2000年代までは「大学受験は人生最大の分岐点」という価値観が支配的でした。就職活動や社会的ステータスにおいても、大学ブランドが影響力を持っていましたし、企業の学閥人事なども一般的でした。
転職も今ほど一般的ではなかったので、「少しでも偏差値の高い有名大学に進学して、それを足がかりにして新卒で大企業へ入る」のが多くの若者が目指す勝ちパターンだったのです。そのため「浪人してでも良い大学に行く」という強固なモチベーションが受験生側にありました。
その結果、優秀な学生ほど難関大学に集まる構造が明確でした。企業にとっては「学生の大学の偏差値を見れば、優秀さはある程度判断できる」という時代が長く続いたのです。
しかし、今は違います。今の若者にとっては、大学受験も就職活動も長い人生の通過点に過ぎません。「学歴は経歴の一つに過ぎない」「ファーストキャリアがすべてじゃない」という考えが浸透し、一年を浪人することや、希望の会社に入れなかったことに対する抵抗感が大きく変わったと言えるでしょう。
学生の二極化を推し進めている要因のもう一つが、インターン参加率の上昇です。以前は、インターンはいわゆる「意識高い系」の学生やITベンチャーなどのテック企業に入りたい理系学生が参加するものでした。しかし現在は、就職活動を前にインターンに参加するのが当たり前になっています。
インターンだけでなく、アクティビティやコンテストなども充実し「大学名ではなく、大学で何を頑張ったか」を評価する土壌は年々育っていると感じます。
その結果、大学入学後に学生間に大きな差がつくようになりました。充実したインターン経験を積んだ学生とそうでない学生では、社会人としての基礎能力が全く違います。