損保ジャパンは被害者なのか…ビッグモーターに不正はあったのに、2022年「不正の指示はなかった」金融庁への報告にモヤモヤ

混迷極まる、ビッグモーターを巡る問題。ルポ作家の日野百草氏は「損保ジャパンは本当に被害者なのか」と疑問を投げかける。自動車業界を取材したーー。
損保ジャパンはあくまで「被害者」というスタンス
「損保ジャパンはあくまでビッグモーターに騙された『被害者』というスタンスということだろう」
都内の自動車販売店オーナーは8月3日、『ビッグモーター社による一連の不正事案に関するお客さまへの当社の対応』と題した損害保険ジャパンのニュースリリースを見て、こう語る。
「あくまで実行したのはビッグモーター側だ。見抜けなかった、監督責任を果たせず申し訳ない、そういうことなのだと思う」
代理店委託契約を終了することを既に決定しております
冒頭の損保ジャパンによる『ビッグモーター社による一連の不正事案に関するお客さまへの当社の対応』ではこう記されている。
〈当社は、ビッグモーター社との代理店委託契約を終了することを既に決定しております〉
〈保険金不正請求を防げなかったこと、事故にあわれました大切なお車の修理に際してお客さまにビッグモーター社の自動車修理工場を紹介していたこと、お客さまの大切なお車に損傷が加えられていた可能性があったことを極めて厳粛に受け止めております〉
〈なお、不正請求の全容の解明には、ビッグモーター社による全量調査が必要になるため、当社はビッグモーター社の新経営陣に対して、改めて、独立性をもった第三者で構成される調査委員会による過去の修理事案の全量調査の実施を強く要請しております〉
2022年、金融庁に「不正の指示は確認できなかった」と報告
なるほど文面の限りは被害者、という姿勢か。しかし損保ジャパンは2022年、不正があったにも関わらず金融庁に「不正の指示は確認できなかった」と報告している。その水増し請求の内容は客の車にビッグモーター社員自らタイヤに穴を開ける、靴下にゴルフボールを入れてぶつけて凹ませる、工具で車体を引っ掻く、ヘッドライトを割る、必要のない箇所を板金塗装するといった行為で、それは営業ノルマとして過酷だが、繰り返せば歩合が跳ね上がり年収1000万円も可能だとせっせと客の車をボコボコにして保険請求を繰り返していた。ビッグモーターの兼重宏行オーナーは「天地神明に誓って知りませんでした」と、副社長だった息子の兼重宏一氏はじめ「幹部は知らなかった」と釈明しながらも、不正の事実があったことは認めた。