ほったらかし投資「超」入門…月20万円の“じぶん年金”を生み出すETFの錬金魔法

「上場投資信託」を意味するETFの市場規模の拡大が続いている。投資で得た利益を元に40代半ばでFIREを達成した桶井道(おけいどん)さんは、「今後、年々ETFの比率を高めていくつもり」と話す。投資信託との違いはどこにあり、どのような人がETF投資に向いているのか――。ETFを株初心者にもわかりやすく解説する、全3回のうちの1回目。
※本稿は、桶井道『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)の一部を抜粋・再編集したものです
第2回:これは打ち出の小槌だ! …ETFで「喜びを噛みしめる毎日」を送る40代個人投資家
第3回:やっぱり「とりあえずS&P500を買っておけ」が投資の真理である理由…ウクライナ侵攻が「強さ」を証明した
年をとり投資判断が鈍る前にETFに切り替えだ
私の株式投資デビューは25歳。資産形成期は、日本株からのキャピタルゲインを狙った投資をしていました。しかし、定年まで勤め上げるのでなく、早めに会社を退職したいな……と思い始めた40代前半から方向を変え、少しずつ、高配当もしくは増配を続けている個別株へシフトしました。そのうち日本株だけでなく米国株や世界各国の株も買うようになり、その流れの中で米国ETFも保有するようになったのです。
この米国株・米国ETFへの投資は私の資産が増えるスピードを加速させました。2020年の秋に1億円とともに早期退職をしてから1年が経ったとき、私の資産は1000万円以上、増えました。2年目に相場が不安定になりましたが、そこそこ順調に伸びています。2022年6月現在の資産は約1億2000万円です。
私は2022年、年間180万円(税引き後)ほど分配金をもらう見込みです。2022年に入り、コロナ禍に加えて米国金利の上昇、地政学リスクなどさまざまな要因が重なって、相場が不安定になりました。こんなとき、分配金が心の支えになっています。今後の目標は、60歳到達時点に「年間配当金額240万円(税引き後)」、つまり月額20万円の「じぶん年金」を確保することです。
投資には判断力も必要になります。私は個別株も多く持っているので、高齢になり投資判断が鈍る前に少しずつETFに切り替えて、最終的にはほぼすべての資産をETFにしようと思っています。こうすれば、脳や体が衰えてもチャリンチャリンと自動的に「じぶん年金」が入り、そのお金で平穏に生活することができるでしょう。
ETFのメリットは「分配金」にあり
ETFは日本語で上場投資信託。要は〝金融商品の詰め合わせセット〟です。そこは投資信託となんら変わりません。そして正直な話を書いておきます。単純にお金を増やすだけなら投資信託のほうが効率的なケースも多いのです。
投資信託は「原則として分配金を抑制する方針」で運用されます。投資信託の中で分配金が出たら、すぐさま元本に上乗せして運用してくれます。たとえば1000円の株から10円の分配金が出たら、投資家に支払わず、次からは1010円を元本にして運用してくれるイメージ。これを繰り返すので、効率よく資産が増えていきます。
一方、ETFは価格の値上がりを期待しつつ、定期的に分配金がもらえる金融商品です。私はこの「分配金がもらえる」ことが、ETFの一番のメリットだと考えています。積み立てた投資信託はいずれ売らなくてはいけません。資産の取り崩しが必要になったとき、どのように売っていくかが悩みどころです。その点、ETFなら元本を取り崩さなくても毎年、分配金が支払われます。
ただ、意外に誤解が多い部分なのですが、分配金が出たら、その分だけ価格が下がることは知っておきましょう。価格はそのままで、分配金だけ魔法のように出てくるわけではありません。つまりETFの分配金受け取りは強制的な利益確定といえます。「分配金+年金収入」の範囲内で生活できるなら〝自分の意思で〟元本を取り崩す必要がないということです。
出口戦略を考えると投資信託よりETFをほったらかし
私は現在、投資信託を保有していません(つみたてNISAを除く)。投資信託では、「老後の人生設計=投資のゴール=じぶん年金20万円(月額)」が叶わないと判断したからです。「投資信託を積み立てて、ほったらかしておけばお金が増えていく」とよく聞きますが、投資信託にもいずれ必ず出口戦略が必要になります。いつかは売却——つまり、取り崩さなくてはいけないのです。
一部の証券会社では、投資信託の自動取り崩し機能があります。とはいえ、それも「売る」という「タスク」を自動のシステムに委ねているだけで、売ることには変わりありません。
投資信託は、お金を増やすという一点だけに注目するなら、よい金融商品です。しかし、60歳もしくは65歳で定年退職し、長年運用してきた投資信託をいきなり売却して、分配金がもらえるETFに一気にシフトすることは、おすすめしません。急な投資法の変更は危険を伴います。
かといって、生活費のために毎月毎月、投資信託を取り崩し続けられるでしょうか? リーマン・ショックやコロナ・ショックのような株価急落が運悪くリタイア直後に来ても、冷静に売却できますか?
また私は個別株とETFを両方持っていますが、個別株に関しては銘柄選びや、買ったあとのメンテナンスも必要になります。持ち株に何かあるたび膨大な時間を費やして調べるなんて、忙しい会社員向けとはいえません。仕事や日々の暮らしに忙しい時期には、なかなかできないでしょう。私が会社員時代にもそれができたのは、そもそも投資が大好きだからです。
ETFなら、たった1本に投資するだけでも充分な分散投資ができます。買ったら長期で保有するだけでOKです。個別株のような、特殊な理由による急激な株価下落もないので、何か異変が起こるたびに調べる必要もありません。そして、原則として分配金をもらえますから、出口戦略を考える必要すらありません。まさしく永遠に「ほったらかし投資」でいいのです。
〝お金の儲かり度〟では投資信託に軍配が上がる。でも、出口を考えれば投資信託だけでは不安がある――そう考えると、つみたてNISAやiDeCoでは投資信託、さらにETFをコツコツ買う、というのが老後の出口戦略としてベストといえそうです。

桶井道『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)