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「筆跡をチェックしろ!」税務署職員がビビっとくる”ちょっと怪しい領収書”の諸条件…むしろレシートのほうがイイ

 1年が終わると待ち受ける確定申告。確定申告を行う人の中には、「領収書を保存しておけばいい」と考えている人も少なくないだろう。そんな現状に、元税務職員でマネーライターの小林義崇氏は、「勘違いや思い込みをしている人が多い」と警鐘を鳴らす。そもそも「領収書が必要」とされる理由や領収書ではなくてもよい場合など、確定申告について知っておくべき知識について小林氏が語る――。全3回中の1回目。 

※本稿は小林義崇著『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)から抜粋、編集したものです。 

第2回:仕事用クレカのポイントを私用で使うのはアウト?セーフ?…大切な領収書をなくした時の裏技

そもそも領収書が必要なワケ 

 日本の税金は申告納税制度です。個人事業主や法人の場合、少なくとも年に1度、売り上げや経費などを申告書にまとめて提出します。このとき、申告書に書いた情報を証明するものをすべて添付する必要はありません。たとえば800万円の経費を申告するとして、その800万円分の領収書などをつけなくてもいいのです。 

 となると、領収書が必要ないように思ってしまいますが、そうではありません。領収書など、申告のもととなった資料は保管しておく義務があるからです。税法では確定申告の根拠となる資料について、保存義務を設けています。保存期間は書類の種類によって違いますが、領収書は5年間です。 

 たとえば令和4年分の確定申告に関する書類は、申告期限の令和5年3月15日から保存期間がスタートします。その翌日である令和5年3月16日から5年は領収書を取っておかなくてはいけません。さらに法人の場合、税法だけでなく会社法による保存年限も設けられており、領収書は10年間保存しておく必要があります。 

 領収書などを捨てると、税務調査を受けたときに困ります。領収書などに保存義務があるのは、脱税などの不正を防止する目的があるからです。日本の所得税や法人税は申告納税制度のため、なかには良からぬことを考える人が出てきます。わかりやすいのが、本当は払ってもいない費用を経費として申告するケースです。  

 このような問題がないかを調べるために、税務職員は必要に応じてチェックする権利をもっています。いわゆる「税務調査」を行い、領収書などと照らしあわせながら申告内容に間違いがないかを調べるわけです。 

 もしも税務調査で領収書の提示を求められたのに、その領収書がなければ、税務調査は長期化します。銀行を通じてお金の流れを調べたり、関係者に聞き取り調査をしたりして、経費が適正なのかをチェックするのです。その結果、経費の申告を否認されたり、新たな問題が発覚したりすることがあります。 

 また、青色申告の承認を受けている人は、領収書などの保存義務を破ったことを理由に、青色申告を取り消されることもあります。このような事態に陥らないためにも、領収書はきちんと保管しておき、いつでも税務署に示せるようにしておきましょう。 

実はレシートでOK?! 重要なのは「中身」 

 経費の支払いを証明するために、領収書を取っておくことが大切とお話ししました。ただ、実は「領収書でなければ認められない」「こういう書式が領収書の条件」といった規定はありません(※消費税の仕入税額控除を使う場合は領収書の要件があります)。したがって、領収書でなくても、経費計上を諦める必要はありません。 

 情報がきちんと残っているのであればレシートでも大丈夫です。このほか、契約書や納品書といった名前の書式であっても、領収書の代わりになります。重要なのは書かれている情報です。基本的に、以下の情報があれば経費の証明として使えます。 

  1. 日付
  2. 取引の内容
  3. 取引の相手方
  4. 支払金額

 つまり、「いつ」「いくら」「誰に対して」「なんの目的で」支払ったものかを、書類から確認できれば大丈夫です。「レシートだからダメ」「領収書だからOK」ということはないのです。 

 逆に言えば、領収書であっても1〜4の情報が書かれていなければ、経費の証拠としては不十分ということになります。たとえば「取引の内容」に関しては、領収書に十分な情報が書かれていないことが少なくありません。単に「飲食代」と書かれていたら、これが取引先の接待に使ったものなのか、家族の食事で使ったものかは判別できませんよね。 

 そのようなときは、領収書やレシートの保管と併せて、メモなどの記録を残しておくことをすすめます。取引先の接待の領収書であれば、相手方の名前や人数などを書いておくのです。会計ソフトを使っているのであれば、備考欄などに記録しておくといいでしょ う。 

税務職員は「手書きの領収書」を疑う 

小林義崇著『あんな経費まで! 領収書のズルい落とし方がわかる本』(宝島社)

 ちなみに、領収書の中身によっては、かえって税務署から疑われる可能性があります。とくに手書きの領収書の場合、限られた情報しか書かれていません。やはり、日付や取引内容が空欄だったり、金額がはっきり読み取れなかったりすると、経費であることを示すうえで問題があります。 

 いっぽう、レシートには支払った日はもちろん、その商品名や、支払金額、お釣り、ポイントの有無など、その取引に関する情報はほぼ網羅されています。それらの情報は、経費を払ったときの状況を示す資料になるので、税務調査のときに説明しやすいはずです。 

 実は、税務調査を行う税務職員は、手書きの領収書に疑いの目を向けます。というのも、手書きの領収書は改ざんしやすいからです。たとえば、プライベートな支払いと、事業用の支払いを一緒くたにして領収書を作ってもらえば、内訳がわかりません。金額自体を書き換えることも、不可能ではないでしょう。 

 私が税務調査を行っていた頃、先輩職員から「領収書の筆跡を確認するように」と指導されました。領収書は、支払った人ではなく、お金をもらった人が作るものです。にもかかわらず、稀(まれ)に本人の筆跡と領収書の筆跡が似ていることがあるのです。そうした場合「本人が領収書を偽造したのでは?」という疑念が浮かびます。 

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この記事の著者
小林義崇

マネーライター、Y-MARK合同会社代表。1981年、福岡県生まれ。西南学院大学商学部卒業。2004年に東京国税局の国税専門官として採用され、以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事。2017年7月、フリーライターに転身。書籍や雑誌、ウェブメディアを中心とする精力的な執筆活動に加え、お金に関するセミナーを行っている。

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