そのチャート、正しく読めますか?“伝説の株職人”が伝授する相場の見方

株価の値動きを読む「チャートの見方」は、シンプルなようで奥が深い。「移動平均線」と言ったとき、あなたはその意味を説明できるだろうか?“伝説の株職人”と呼ばれる相場師朗氏が実際のチャート画面を使い、チャートの読み方を伝授する。
※本稿は相場師朗著「これから騰がる株完全マスター 相場の赤本 増補改訂版」(宝島社)から抜粋、再構成したものです。
目次
相場を動かすのは結局「人間」

株価は日々、上がったり下がったりします。株価は、「この株は上がりそうだ」と期待してその株を買う投資家と、「いやいや、この株は下がるに決まっている」と判断して、その株を売る投資家の力関係により動きます。
つまり、株価の値動きは「投資家の心理」によって決まります。多くの人が「この株は上がる」と考えれば、買いが増えて株価は上がり、「下がる」と思えば売りが増えることによって株価は下がるのです。
株価の動きを予測する手法の1つに、「ファンダメンタル分析」があります。これは世界経済の状況やその企業の業績を分析して、買うか売るかを決める手法です。
しかし、前述のように投資家の心理が株価の上下動に大きく影響しますので、ファンダメンタルだけで株価を判断することはできないのです。その企業の業績が2倍に伸びたら、株価がいったい何円になるのかは、どんなに優秀な人でも正確に当てることはできません。
実際に株価を動かすのは、その好業績を知って株の売買を行う投資家、つまり人間です。彼らの、買ったり売ったりという投資行動は、株の値動きにすべて反映されています。小難しい企業分析や理屈っぽい景気判断をもとに株を売買すると、変な思い込みや独りよがりの行動につながって、損をする可能性があるのです。
まずは「移動平均線」を使用

「純粋に値動きを見る」ことが、相場流株式投資の第一歩です。そして、株価の値動きを純粋に抽象化して、わかりやすく見るために必要不可欠な道具、それが「移動平均線」。ある期間の株価の終値の平均値を結んだ線のことです。
図1ⓐは日本株の全体的な値動きを示す「日経平均株価」の値動きの一部を切り取ったものです。
株価(ローソク足)は画面の左側で下がり、右側で反転上昇しています。図には5日間の株価の終値の平均値をつなげた5日移動平均線(赤)と、より長いスパンである20日間の終値の平均値を結んだ平均線(青)も表示しています。
図1右のⓑは、株価を示すローソク足を除いて5日線、20日線だけを描画したものです。日々、気まぐれに上下動する株価を表示したものより、移動平均線だけのほうが、「株価が全体としてどのように動いているのか」が、わかりやすいと思います。
日々、上げ下げする株価に惑わされて、トレードがうまくいかないと感じたときは、ローソク足を消してみて、移動平均線だけのチャートにしてみることをお勧めします。私が主催している株塾で使用しているチャートソフト「チャートギャラリー」(試用版無料)では、ローソク足表示の切り替えができます。
移動平均線が右肩上がりのときは株価も上昇傾向なので「買い」で勝負するほうが勝つ確率が高く、移動平均線が右肩下がりのときは株価も全体として下落しているので「売り」で勝負したほうが儲かりやすいのです。
「買うべきか、売るべきか」という株式投資最大の難問に、一瞬にして答えを示してくれるのが、「移動平均線の傾き」なのです。
さらに期間の長い移動平均線のほうがより長期のトレンドを示しているので、期間の違う「移動平均線の並び順」にも、気配りできるようになりましょう。
上から順に「株価>短期移動平均線>長期移動平均線」と並んでいたら株価は強い上昇トレンド、逆に上から「長期線>短期線>株価」の並びは強い下落トレンドです。そして、その並びに変化が生じたときがトレンド転換のシグナルになります。
チャートから売買タイミングがわかる

相場流がここで使用する移動平均線の期間は5日線(赤)、10日線(緑)、20日線(青)、50日線(紫)、100日線(オレンジ)の5本。
図2は日経平均株価のローソク足を消して、5本の移動平均線だけを示したチャートです。まずは、この「うにょうにょ曲線」だけを見て、「株価がどんなふうに動いているのか?」を考えてみてください。
図のAのゾーンでは移動平均線が5日線>10日線>20日線>50日線と並んでいるので、株価は赤い5日線の上で勢いよく上昇していることが想像できます。
Bのゾーンでは一転、移動平均線が5日線、10日線が、青の20日線をまたいで上下動しています。これは、株価の上昇基調にややストップがかかりながら乱高下している証拠です。
さらにCのゾーンでは再び移動平均線がきれいな上昇トレンドの並びになり、全体が急激な右肩上がりになっています。たとえば、5日線、10日線の短期線が、青の20日線を勢いよく抜けたこの地点で、「ここは買いだな!」と思ってほしいですね。
その後、Dのゾーンでは頂点まで上り詰めた5日線、10日線の短期線が2本とも青の20日線を割り込んで、紫の50日線に向かって急落しています。「ここは売りで入ったら大儲けできるな」とニヤニヤ想像してください。
株価が値動きすることで、移動平均線も上がったり下がったり並び順が変化したりするわけですが、日々の上げ下げよりも、その値動きでできる移動平均線だけを先に見たほうが全体の流れがすんなり頭に入ってくるのです。これが移動平均線のチカラなのです!
移動平均線から株価の動きを想像する
それでは、ローソク足が入ったチャートで最初に出した問題の答え(実際の株価の動き)を見てみましょう。

図3は図2の“移動平均線だけのチャート”にローソク足も加えた通常のチャートです。
先ほどの想像通り、aの地点で買い、bの地点でカラ売りすれば、ものすごく儲かっていたことがわかります。
移動平均線が上向きのとき、株価は移動平均線に沿って上昇しやすく、移動平均線が下向きのときは、株価は移動平均線に沿って下がりやすいといえます。さらに短期線が中長期線より上にあれば、直近の上昇の力が強く、短期線が長期線より下にあれば、直近の下落の力が強いことがわかります。
このように、全体の流れを俯瞰するためには、移動平均線の「傾き」と「並び」を確認することが重要なのです。
▽プロフィール
株歴40年を超える株職人。”株匠”を目指している。20歳で株式投資を始めて20年間、「日本郵船」1銘柄のみの売買に集中し、莫大な利益を得る。その後、チャートと建玉の研究に没頭する。日本株のほかに、米国株、イタリア指数、イギリス指数、ユーロ指数、ゴールド、原油、コーン、FXなどの市場でも利益を生み出す。自身が研究を重ねた投資法を発表する場として、投資塾「株塾」を主宰する。