賃貸利回り、ドバイは日本の約3倍…日本の富裕層が「海外不動産」に注目する理由

賃貸か、持ち家か。この永遠のテーマは、多くの人が一度は悩む大きな問題と言える。そんな質問に対し、海外不動産投資家・海外移住コンサルタントの宮脇さき氏は、「結論から言えば、どちらが絶対に正しいという答えはありません。ライフスタイル、家族構成、そして最も重要な『資産状況』によって、最適な選択は人それぞれ異なるからです」と話す。
一方で、将来に備えて資産を築きたいと考えているのであれば、「持ち家という選択肢は大変魅力的」と付け加える。
といっても、誰もがすぐに住宅を購入できるわけではない。では、一体どうすればいいのか。そこで宮脇氏が推奨するのが、「海外不動産」だ。持ち家がもたらすメリットや日本の不動産市場の現状を踏まえたうえで、海外不動産という新たな選択肢について考えてみましょう。全3回中の2回目。
※本稿は宮脇さき著『世界の新富裕層はなぜ「オルカン・S&P500」を買わないのか 20代で純資産4億円をつくった超レバレッジ投資の極意』(KADOKAWA) から抜粋、加筆修正したものです。
第1回:20代から始める「ヤドカリ投資」普通の会社員が億を築く資産形成
第3回:日本を脱出する富裕層たち……海外移住を決める3つの理由と人気の移住先とは
目次
日本の持ち家は「実需半分・投資半分」
日本の住宅ローンは超低金利で、税制優遇も手厚いため、持ち家は「実需半分・投資半分」という感覚で購入できる時代です。特に、都心のタワーマンションや好立地のブランドマンションなど、資産価値が落ちにくい物件を選べば、リスクを抑えつつ資産を形成できます。
過去の不動産市況を見ても、良い立地の物件を保有していた人が最終的に得をしているケースは圧倒的に多いのが現実です。ただし、すべての物件が資産性に優れているわけではありません。また、今の価格が2倍、3倍に跳ね上がるような急激な上昇は、今後はそう簡単には期待できないでしょう。
さらに、価値が上がる不動産は日本全体で見ればごく一部であり、都心部でも一部のタワーマンションに集中している傾向があります。なぜなら、タワーマンションは長期的に価値を維持しやすい「耐久消費財」としての側面が強いからです。
また、日本の不動産市場は国内の動向だけでなく、世界の経済状況にも左右されます。アメリカの金融政策や為替、株式、金利など、グローバルなトレンドに影響を受けるため、未来を正確に予測するのは非常に困難です。
だからこそ、「未来予測は絶対ではない」という認識を持つことが重要です。重要なのは、柔軟な姿勢で「間違ったら、早く修正する」ことです。
それでも、一つだけ確かなことがあります。それは、資本主義社会において、モノの価格は少しずつ上昇し続けるということです。賃貸でお金を払い続けるか、資産としての住まいに変えていくか。この違いが数十年後には驚くほどの資産格差を生む可能性があります。
資産を“日本だけ”に集中させるのはリスク
みなさんご存じのように、日本は少子高齢化、人口減少という構造的な課題を抱えています。こうした社会情勢に加えて国家債務の膨張や円安の加速、社会保障費の限界など、様々な不安要素が山積しています。
さらに、台湾有事や大規模な自然災害のリスクも無視できません。こうした背景から、富裕層を中心に「日本だけに資産を集中させること」はハイリスクな選択肢と考える人が増えています。
そこで注目を集めているのが海外不動産です。海外不動産の魅力は単に収益性だけではありません。多くの富裕層は、以下のような多角的な視点から海外不動産を重要な資産クラスと見なしています。
・カントリーリスクの回避…日本に資産が集中するリスクを分散
・円安リスク対策…現地通貨や外貨建てで資産を保有
・有事の際の拠点…海外の滞在先やセカンドハウスとして活用
・長期居住権の取得…投資ビザや長期居住権を取得できる国も多い
・将来の資産課税への備え…財産税などのリスクに備える
中でも、人口が増加し経済成長が続いているオセアニア、東南アジア、中東などの都市部では、不動産価格が中長期的に上昇しやすい傾向にあります。
人口が増えるということは、住宅ニーズが拡大するということ。安定した賃貸需要が見込め、空室リスクが抑えられるため、安定的な家賃収入(インカムゲイン)を得ることができます。こうした環境では、短期的な売却益を狙うよりも、中長期で保有し続けて家賃収入を積み重ねる「バイ・アンド・ホールド」戦略が有効です。
資産運用において重要なのは「いかに勝つか」ではなく「いかに負けないか」という視点です。過度なリスクは取らず、安定した収益をコツコツと積み上げていく戦略が堅実な資産形成につながります。
もちろん、「海外なんて、言葉も通じないし、法律も違うから不安」と感じるかもしれません。未来のことは誰にもわかりませんが、世界全体としては人口が増えて経済成長が続くと考えられます。つまり、短期的な変動はあったとしても、海外不動産は長期的に見れば「負けにくい投資」の一つと言えるのです。
4か国で利回りを比較…実は日本が一番低い
世界中の不動産データを扱う調査会社のデータによると、主要都市の賃貸利回りは以下のようになっています。
・日本(東京):約2.6%
・インドネシア(ジャカルタ):約6.4%
・アラブ首長国連邦(ドバイ):約7.5%
・フィリピン(マニラ):約4.7%
東京の賃貸利回りと比較して、成長が著しい都市では相対的に高い賃貸利回りが期待できることがわかります。
もちろん、高利回りだからといって、その物件やエリアが必ず正しい投資先とは限りません。国ごとの法整備や空室率、カントリーリスク、流動性リスクなどを総合的に考慮する必要があります。しかし、この賃貸利回りの高さは、安定的なインカムゲインを確保するという観点から見ると大きなメリットとなります。
とりわけ、ドバイのように高い利回りが期待できるだけでなく、インフラ整備、治安の良さ、将来性といった複数の要素がバランス良く整っている市場は、より注目に値するでしょう。
さらに、海外不動産を持つ最大のメリットの一つが「通貨の分散」です。円に偏った資産構成では、円安やインフレが進行した際に実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。しかし、外貨建ての不動産を保有していれば、円の下落時にも影響を受けにくく、為替変動リスクのヘッジ手段にもなるのです。
以前はハードルが高いと思われていた海外不動産投資ですが、現在はインターネットを活用して日本にいながらでも物件を選定できる環境が整っています。現地の担当者とオンラインで連絡を取り合い、購入後の管理までトータルでサポートしてくれる体制も充実してきました。
株式などの金融資産だけではリスクが高いと感じる方や、地政学的リスクへのヘッジ、通貨分散を目的としたい方にとって、海外不動産は「攻め」と「守り」の両方の側面を兼ね備えた、魅力的な選択肢と言えるでしょう。