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一時的に1ドル154円台突破!世界基準で「貧困層」な人が日本中に大量発生の絶望…株高の果実は外国資本が奪い、負担は国民が背負う構図が鮮明に

(c) AdobeStock

 高市政権が発足し、日経平均株価は史上初の5万2000円台に乗った。その一方で、円安には歯止めがかからず、1ドル154円台にも突入している。結果として、一部のお金持ちは利益を得て、金融資産を持たない多くの国民が苦しんでいる状況だ。ではいま、この円安で笑いが止まらない「お金持ち」とは誰だろう。株式評論家の木戸次郎氏がその正体を喝破するーー。

 みんかぶプレミアム特集「どこまで続く株価上昇」第7回。

目次

1ドル150円台はもはや当然に…世界の中で確実に貧しい国になりつつある日本

 金融政策決定会合は6会合連続の利上げ見送りとなり、為替は一時154円台まで円安が進んだ。物価高と家計の疲弊が続く中で、本来なら正常化に踏み切るべき局面だった。政策委員からは「機は熟した」という発言もあった。それでも据え置かれたのは「物価動向を見極めたい」という建前。しかし物価はすでに2%を明確に上回っている。国民生活を守るための判断ではなく、政治の延命に金融政策が利用されているのではないかという疑念が広がる。

 高市政権発足後、東京市場は約7,000円急騰し、円は7円超下落した。政権誕生を材料に外国資金がなだれ込み、割安な日本株は“安売りの宝の山”。利益を貪るように買われた高市トレードは、政治演出と円安依存が支えた脆い追い風だ。株高の果実は外国資本が奪い、負担は国民が背負う構図が鮮明になっている。これは国家内部者でなければ知り得ない、まるで「国家インサイダー相場」の様相さえ帯びている。

 憲政史上初の女性総理大臣である高市総理には、「この国を変えてくれる」という期待が過剰に乗る。外交での存在感や発信力は確かに高く、発足時支持率は歴代2位。しかし歴史が示す通り、期待が先走った政権は必ず現実とのギャップに晒される。アベノミクス継承を掲げても、当時は1ドル100円前後、国民は今ほど貧しくなかった。今は違う。円安で日本人の労働価値が切り下がり、世界の中で確実に貧しい国になりつつある。

日本国民の4割を占める年収300万円以下の人たちは、世界基準では貧困層…医療人材の給与は上がらず人手不足は続く

 年収300万円以下が約4割。154円換算の所得は2万ドルを大きく下回り、世界基準では“貧困層”。為替は、日本人がどれほど貧しく成り下がったかを冷酷に突きつける指標だ。株価だけが高く、生活は苦しい。それが今の「強い日本」の実態である。

 この状況は、最も弱いところから壊れる。すでに兆候は出ている。医療現場だ。3人に1人が65歳以上となる超高齢社会で、医療崩壊は国家存亡の危機である。最後の砦である国立大学病院でさえ、累積赤字は285億円、2026年には400億円規模へ。輸入医療資材の高騰が円安に直撃され、診療報酬の抑制が経営を圧迫し続けている。補助金では到底賄えない構造的危機が進行している。

 だが実は、人材はいる。潜在看護師約70万人。志を持って国家資格を取り、命に寄り添う仕事を選んだ。しかし激務と低賃金に疲弊し、本来守るべき家庭や生活を守るため、現場を離れざるを得ない。子育て、暮らし、未来。そのすべての現実が、志を飲み込み、資格は机の奥に眠る。人がいなければ医療は回らないのに、人はいるのに医療が回らない。この倒錯こそが、すでに臨界点だという証だ。

 眠れる70万人を再び立たせるには、賃金と待遇という“現実”を変えるしかない。だが診療報酬を大胆に引き上げれば、今度は国民皆保険制度が揺らぐ。世界に誇ってきた社会保障の屋台骨が、為替と財政の狭間で軋み始めている。政治はこの矛盾に向き合う覚悟を問われている。

円安で利益を手にしているのは外国資本だ…相場が逆回転して円高・株安に向かい始めるタイミングはいつなのか

 では一方で、誰が利益を手にしているのか。

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この記事の著者
木戸次郎

1965年生まれ。明治大学政治経済学部卒。 地場証券会社を経て投資顧問会社の代表取締役。その後、ベトナム国営バオベト証券バオベトジャパン理事、ベトナム国防省タイソングループ顧問、外資系ファンドの戦略アドバイザーを経て現在はTMI総合法律事務所顧問。著書にベストセラーとなった『修羅場のマネー哲学』(幻冬舎)『修羅場の鉄則』(幻冬舎)、『木戸次郎の大化け株』(宝島社)、『株はあと2年でやめなさい』(第二海援隊)、『常勝の株』(講談社)ほか多数。

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