2025年、親子上場解消ラッシュの裏側と建設セクターに潜む“勝ち筋”…TOB特化ファンドマネージャー・神谷悠介氏が読む「TOB最前線」
本稿で紹介している個別銘柄:住友商事(8053)、SCSK(9719)、住友電気工業(5802)、住友理工(5191)、大和ハウス工業(1925)、住友電設(1949)、大成建設(1801)、高砂熱学工業(1969)、鹿島(1812)、大林組(1802)、清水建設(1803)、住友電設(1949)
2025年秋、国内株式市場では再びTOB(株式公開買付)案件が急増している。
なかでも注目されるのが、「親子上場の解消」を軸とした動きだ。
この構造変化を早くから予見していたのが、独立系運用会社のfundnoteのファンドマネージャーで、TOBなどのコーポレートアクションにフォーカスを当てたファンドの運用を開始する神谷悠介氏だ。
今回は、直近のTOB動向から注目セクター、個人投資家が取るべき視点までを伺った。
目次
TOBは“第2四半期”が繁忙期。そのワケは?
「TOBにも季節性があり、最も多くなるのは第2四半期(10〜11月)なんです」
神谷氏はそう切り出す。
過去データを見ても、10〜11月はTOB件数が突出して多い“季節”だ。その背景には、企業の会計サイクルがあるという。
「第2四半期は、企業が来期の事業計画を議論するタイミング。この時期にTOBを実施すると、翌年度4月から連結決算に12か月フルで組み込めます。業績インパクトを最大化できる、企業側の会計上の合理性と戦略的判断が重なるタイミングです」
実際、2025年秋も大型案件が相次いだ。住友商事によるSCSKの完全子会社化、住友電工による住友理工の買収、そして大和ハウス工業による住友電設のTOB。いずれも第2四半期決算期に合わせた発表だった。
住友グループに見る「中期経営計画とTOB」の関係
特に象徴的なのが、住友商事(8053)によるSCSK(9719)の買収だ。
「住友商事は中期経営計画の最終年度を迎え、来期の目標達成が難しいと見られていました。そこで9月に米国航空機リース大手であるAir Lease Corporationを買収。これに続き、SCSKを完全子会社化。この2つのM&Aにより“中期経営計画の最終年度となる来期の増益要素の半分”を埋めた形です。業績達成への意欲を市場に示したTOBといえるでしょう」
住友電気工業(5802)も同じ構図を描いている。3年前の2023年2月、2社の子会社を完全子会社化した際も、中期経営計画(2023〜2025年度)に向けた布石だった。
「今回も2026年度から始まる次期中期経営計画前の対応と見ています。住友理工(5191)を100%子会社化を目指す決定を発表し、住友電設(1949)の保有株式の他社への譲渡を公表しています。前回同様、次期中期経営計画に入る前に再編に踏み切るのは、極めて合理的な判断です。」
TOBの舞台裏で“電気工事を握る者が次の主役”
今回のTOBで特に注目を集めたのが、大和ハウス工業(1925)による住友電設(1949)への公開買付だ。