最短で3月に議員除名…ガーシーvs鈴木むねお“懲罰第2弾も準備”…国会に行かない公約は守っていいのか悪いのか

 初当選以来一度も登院せず、国会欠席が続くNHK党のガーシー(本名・東谷義和)参院議員をめぐり、参院懲罰委員会は除名を含めた厳しい処分を検討している。ガーシー氏は「30万人近くの人に票をもらって当選しとんねん」と強気を崩さないが、懲罰委員長の鈴木宗男参院議員(日本維新の会)は「何とかの遠吠えみたいな話は受け付けない」と粛々と手続きを進める構えだ。そんな中でガーシーは突如、「議場での陳謝」を受け入れる方針を示した。一体どうなるのか。

ガーシー議員への名誉棄損の訴えにNHK党が逆提訴

 ガーシーこと東谷義和議員は、徹底抗戦する考えを示している。

 2022年7月の参院選で初当選したガーシー氏は、NHK党の比例代表で約29万票を獲得した人気ユーチューバーだ。アラブ首長国連邦(UAE)に滞在し、「当選しても日本へ帰らず海外で政治活動をしていく」ことを “公約” に掲げてきた。

 だが、著名人への暴露動画をめぐり名誉毀損で告訴されており、警視庁は任意の事情聴取を求めている。ガーシー氏は1月のインスタライブで「3月上旬、お前らに会いに帰るから。オレは日本に帰ります。堂々と凱旋します」と話していたものの、警視庁の動きに態度を硬化。「元から国会に行かんでいいよと立花(孝志)党首に言われて立候補して、『国会には行きません。海外にいます』と言ったけれども、後付けのように法律を変えようとする国会のじじいどもを見た時に、やっぱりどの世界も一緒なんやなと」などと帰国方針を取りやめることになった。

「オレを辞めさせることができるのはムネオハウスではなく有権者だけや!」

 2月21日に開催された懲罰委では、自民党の牧野京夫参院議員が「国民からの信頼を損ないかねない」と主張し、他党からも「弁明は欠席する正当な理由とは認められない」などの意見が相次いだ。全会一致で決まった「議場での陳謝」という懲罰案は、除名・登院停止・議場での陳謝・戒告という4段階ある処分のうち、下から2番目に重いものだ。22日の参院本会議で、出席議員の半数以上が賛成すれば処分が正式決定となる。国会欠席を理由とした懲罰は初めてだ。

 ただ、ガーシー氏は自らのインスタグラムで「オレをやめさせられるのはムネオハウスやなく、オレに票を入れてくれた有権者だけやと!」と強気を崩さない。NHK党関係者によると、ガーシー氏は処分を受けても「一切、帰るつもりはない」とされ、懲罰委が作成した議場での陳謝文をガーシー氏が読み上げる可能性は「ない」(同党の浜田聡政調会長)としていた。

 懲罰委の鈴木委員長は「挑発に乗ったら私も同じレベルになる」「大人の対応をしていきたい」などと平静を装うが、自民党や立憲民主党などには「除名もやむなし」との声が日増しに強まっていた。

 2月20日に会談した自民党の世耕弘成参院幹事長と立憲民主党の田名部匡代参院幹事長は、まず処分内容を「議場での陳謝」とすることで合意した。ただ、そもそも帰国の意思を示さないガーシー氏が議場に立つ可能性は限りなく低い。実は、与野党は2月上旬時点でガーシー氏を「除名」とするスケジュールも描いていた。立花党首は「多数派が少数派をつぶしているのは怖い」と批判しているが、まさに “数は力” には抗えないというわけだ。

「除名されたらすぐにトルコに寄付するわ」…日本の騒動に “どこ吹く風” のガーシー氏

 当初のガーシー氏の「Xデー」については全国紙政治部記者がこう解説する。「『議場での陳謝』に決まりましたが、これにガーシー氏が応じないと踏んでいました。ガーシー氏は質問主意書を提出して “活動実績” をアピールしており、この処分を受け入れずに欠席を続けるだろうと。そうなったら第2弾の懲罰案が発動する予定でした。それが『除名』となる可能性が高いとされてきました」。

 最も重い除名処分が下される時期としては、当選から「1年以内」が有力視されてきた。開会中の通常国会は6月21日が会期末となるため、会期延長がなければ6月中が “デッドライン” になる。ただ、一部野党では強硬論も飛び出しており、早ければ3月中に「除名」とする道が模索されている。

 ただ、ガーシー氏が「議場での陳謝」を受け入れたとしても、今後も海外を拠点とした活動を続けるのであれば、陳謝は「除名」までの時間稼ぎにしかならないだろう。NHK党を除く与野党が「除名」とすることで合意すれば、本会議で出席議員の3分の2以上の賛成によってガーシー氏は国会議員の身分を失うことになる。

 ちなみに警察当局は帰国後、速やかに事情聴取に入りたい構えを見せている。仮に国会議員でなくなった場合、ガーシー氏には日本に再び戻るメリットは存在しない。実際、ガーシー氏は「国会議員除名されたらまず、すぐ寄付するわ。トルコに。それを一番初めにします」としている。

 元々、NHK党から頼まれて立候補し、帰国せずに政治活動を続けることを “公約” にしていただけに「ガーシー氏としては今さら何を言っているんだよ、という彼なりの主張がある」(関係者)のだという。

国会が古いのか、新党が “常識” から逸脱しているのか

 さて、立花党首は「ホリエモンの声を全国に届けて欲しい」として、仮にガーシー氏が除名となった場合には党比例で4位の得票だった堀江貴文氏の秘書、斉藤健一郎副党首を “後任” に指名している。本来であれば次点だった候補が繰り上げ当選になるが、得票が2位と3位だった人物から了解を得て、斉藤氏にバッジをつけさせるという “ウルトラC” だ。

 れいわ新選組が参院議員の辞職に伴い、比例代表で落選した5人が残り任期を1年交代で回す「れいわローテーション」導入を打ち出して批判を浴びたが、事情が全く異なるにせよ、両党の戦略と手法は従来の政界における想定をはるかに超えるものといえる。

 良い意味でも、悪い意味でも話題を提供し続けるNHK党。公約通りと主張する国会議員の身分を多数派が奪うことは極めて重い意味を持つものであり、ガーシー氏への欠席批判は同時に、これまで想定せずにルールづくりを怠ってきた与野党の議員たちにも向けられなければならないだろう。

 国会が古いのか、それとも新党が “常識” から逸脱しているのか。うやむやにしたまま議員除名というXデーのカウントダウンだけが進んでいる。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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