「ペロペロテロ厳罰化の流れ」自ら撮影し証拠を残すかわいそうな大人たちの末路…紅生姜ボリボリ男、直箸ガリ完食少年

飲食店テロで次々と逮捕される愉快犯

 2023年4月11日、またも飲食店に対する迷惑行為と迷惑動画の配信・拡散で逮捕者が出てしまった。今回の現場は焼肉店で、30歳の男2人の犯行であった。

 逮捕理由は栃木県那須塩原市の焼肉店で2022年、爪楊枝(つまようじ)を口にして元の容器に戻す様子の動画を配信したことによる偽計業務防害の疑いである。ある意味、自分から世界中にこの様子と自分たちの行為という「証拠」を晒(さら)してしまったわけで、彼らは「間違いありません」と容疑を認めている。

 被害にあった焼肉店は容器を洗浄し、爪楊枝はすべて廃棄。改めて個別包装した新しい爪楊枝を購入した。まったく何もしていない、何も悪くない店が、たった2人の30歳の「爪楊枝口入れ戻し男」らに大変な被害を受けてしまった。

大人だったら逮捕されるという流れ

 相次ぐ飲食店に対する迷惑行為と動画の配信、そして拡散に対して、警察はあの「醤油(しょうゆ)ペロペロ少年」以前ほどの甘い対応はせず、被害届が提出されて証拠があるならば、まして成人なら「逮捕」という流れが出来つつある。

 この逮捕の約1週間前、4月4日には大阪市内で牛丼チェーン「吉野家」の紅しょうがを直箸で口にかき込む様子を配信した30代の「紅しょうがボリボリ男」が、撮影者の同じく30代の男とともに威力業務妨害等の疑いで大阪府警に逮捕された。爪楊枝の件同様、実際の迷惑行為に及ぶ男だけでなく、撮影者も成人なら逮捕される流れも出来つつある。

 さらにその前月の3月には、名古屋市の回転寿司チェーンで醤油差しを直接口に入れる様子を配信した21歳の「醤油ペロペロ男」が威力業務妨害容疑で逮捕された。しかしこちらの撮影者は19歳の少年だったことから、名古屋家庭裁判所は保護観察処分を下している。

 選挙権年齢ならびに民法の成年年齢は18歳に引き下げられたが、少年法改正では、新たに18歳、19歳とも「特定少年」とする特例が定められた。少年法の目指すところの「少年の健全育成」「改善更生」「円滑な社会復帰」の枠組みは維持された。この19歳の少年の処分はその流れに沿った形である。

10代の扱いが難しいのが現状

 店舗に対する迷惑行為とその動画撮影および投稿・拡散をした者を逮捕するという流れは出来つつあるが、「10代」の少年、少女の犯行に対しては対応が難しい。

 実際、富山市の回転寿司チェーンでガリを容器から直箸で食べまくり完食した「直箸ガリ完食少年」は4月5日に店側が被害届を出したが4月14日の時点で目立った動きはない。小学館『NEWSポストセブン』の報道によれば少年の叔父は「完食して(店員から)お礼を言われた」と話している。

 また1月ごろに拡散した、岐阜市で回転寿司の醤油差しを直接口に入れるなどした「醤油ペロペロ少年」も被害届を出して厳正に対処となってはいるが、先の「醤油ペロペロ男」の撮影者が「保護観察」ということで、やはり10代には同程度の対処が限界のようだ。同じ「醤油ペロペロ」でも21歳と10代では対応が変わり、撮影者で言えば「紅しょうがボリボリ男」を撮影した30歳と「醤油ペロペロ男」の保護観察となった10代の撮影者ではやはり対応が変わる。法に即した判断とはいえ、これだけ続くと民意は「少年の健全育成」「改善更生」「円滑な社会復帰」を好意的にとるかといえば、これもまた難しいだろう。

変わる 日本の「よき外食産業」の文化

 各店舗ともAIカメラの導入や調味料類の卓上撤去など現在も対応に追われている。また客に対する監視も強まり、これまでの「店と客の信頼関係」の上で成り立っていた「性善説」前提の接客も見直さざるをえなくなってしまった。悲しいかな、日本の「よき外食産業」の文化が大きく変わるきっかけともなってしまった。

 ともあれ「紅しょうがボリボリ男」「醤油ペロペロ男」「直箸ガリ完食少年」「醤油ペロペロ少年」、いずれも民事賠償が待ち受けている。警察が飲食店に対する迷惑行為と迷惑動画の撮影、公開に厳しくなる流れで、民事賠償も厳しいものになることが予想される。そもそも店舗は遊び場でなく従業員の働く場であり、生活の場でもある。他の客の食の安全や楽しみを奪い、店の経営や従業員の労働の場および生活を脅かすような行為は本当にやめて欲しい。

 相次ぐ警察による逮捕は、もう「やんちゃ」「ウケる」では済まされない時代ということだ。

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この記事の著者
日野百草

1972年生まれ。日本ペンクラブ広報委員会委員。出版社勤務を経て国内外における社会問題、政治倫理を中心に執筆。大学院で芸術学を専攻、昭和史における人物評伝およびフィギュアスケートなどの舞踏芸術に関する論考も手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。著書『評伝 赤城さかえ 楸邨・波郷・兜太に愛された魂の俳人』他。

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