転職しても、多くは給料が上がらない…三浦瑠麗「なぜ日本政府はリスキリングをここまでプッシュするのか」

プレミアム特集「人生が激変!最強の学び直し」第2回は、国際政治学者の三浦瑠麗氏が政府がここまでリスキリングをプッシュする必要性を語るーー。
目次
新たな付加価値を創造しなければ経済は必ずシュリンクする
最近、スキルアップしたうえで転職を目指す人に、政府から最大56万円が補助されるという新制度が話題になっている。2050年までに起きるであろう産業構造の転換を見据え、「未来人材」のありように合わせて、スキルアップのための学び直し=リスキリングと転職を促進するために打ち出された政策だ。政府は、「3年間でおよそ33万人の転職」の目標を掲げているらしい。未来人材とは何で、またどうして日本政府は転職を促進しなければならないのか。
日本で起きている時代の転換の波は大きく分けて三つある。ひとつは、急速な少子高齢化の進展だ。日本の生産年齢人口は、2050年にはなんと2020年の3分の2の水準にまで減少するが、逆に彼らによって支えられる高齢者の人口は多いままである。経済成長において重要なレバーは、労働力の投入と資本の投下であり、生産性の向上だから、日本の労働力が圧縮される以上は、何らかの対策を講じなければ、今までの生活や福祉水準は維持できない。また、少子高齢化は消費にも大きな影響を及ぼす。入ってきたお金をすぐに消費に回してくれる現役世代の人数が減り、購買意欲の乏しい高齢者の割合が大きくなるから、市場は人口減少ペースを上回る規模で縮小する。そのうえ日本は移民が少なく、高度人材に魅力的な移住先でもない。したがって、新たな付加価値を創造しなければ経済は必ずシュリンクする。いたってシンプルな話だ。
グレタさんのおかげで「脱炭素」に動いたわけじゃない
二つめは、DXの波である。作業の省力としてのデジタル化のみならず、ビッグデータやAI、IoTなどのデジタル技術を用いて企業のありとあらゆる業務プロセスを変革することが求められる時代になった。製品やサービスの開発・提供のあり方そのものを変える改革を進めるうえで、日本企業の従来の組織文化は障害となりがちだ。終身雇用を前提とした年功序列システムの見直しが叫ばれて久しいが、DXは組織や人事制度を含めた改革の必要性をさらに高める。DXは、単に専門技術を持つ人材の採用を増やすというだけでは実現できないのである。