古い派閥政治を呼び戻した岸田政権…支持率急落でも「決めない政治」の継続を決める

支持率低下も「敵らしい敵」が見当たらない岸田内閣
岸田文雄政権の内閣支持率が急落している。主な要因としては、爆発的増加を見せる新型コロナウイルス感染者に加え、自民党議員と旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との相次ぐ関係の表面化、物価高騰への不満―の3点セットがあげられる。
その急激な下降には、近いうちに危険水域に入るとの見方も広がるが、首相サイドには焦りは見えない。なぜなら安倍晋三元首相の死去で党内バランスが激変し、「敵らしい敵」は見当たらなくなったからだ。首相の専権事項である衆院解散権と人事権を武器に「ポスト岸田」の芽も摘みにかかり、長期政権を目指すという、したたかな戦略も透けて見える。
支持率急落を受けて一部には早晩、岸田政権が行き詰まるとの観測が見られるようになった。だが、本当にそうだろうか。首相が退陣を余儀なくされるケースは、内閣不信任決議案が国会で可決されるか、与党内の圧力によって引きずり下ろされるか、という2つが基本となる。死去や体調を崩して退くケースもあるだろう。
しかし、執行部刷新で党勢回復を目指す立憲民主党や、新代表が決まった日本維新の会といった野党は迫力不足で、与党内の多数派形成にも成功しつつある岸田氏には「敵らしい敵」が見当たらない。
不人気もどこ吹く風…なぜ、岸田首相に焦りがないのか
たしかに内閣改造・自民党役員人事の前後から政権・与党と旧統一教会との接点が次々と発覚し、国民からは厳しい視線を送られている。朝日新聞の世論調査(8月27、28日)で岸田内閣の支持率は47%(7月調査時は57%)と大幅な下落を見せ、不支持率は39%(同25%)と政権発足以来最高を記録。産経新聞の調査(8月20、21日)でも支持率が54.3%と内閣発足以来最低となった。毎日新聞と社会調査研究センター(8月20、21日)の調査では、支持率が7月調査時の52%から16ポイント下落し、逆に不支持率は17ポイントも増加している。
旧統一教会をめぐる問題に加えて、賛否が分かれる安倍晋三元首相の国葬開催、後手に回るように映る新型コロナや物価高への対応も不人気だ。ただ、松野博一官房長官は「国民の声を丁寧に聞きながら、新型コロナウイルスや世界的な物価高騰のリスクへの対応、国民を守り抜く外交・安全保障など政権の基本方針に沿って取り組んでいく」と述べるにとどめ、支持率急落への焦りは政権内に見られない。
定型通りのコメントをできる余裕の裏には3つの理由がある。