国葬を「根拠なし」で”鬼速”決断した岸田首相、PDCAは回さなかった…支持率急落を招いた3つの大誤算

「開催賛成」から「開催反対」へ…2カ月前とガラッと変わった国民の声
9月27日に開催される安倍晋三元首相の「国葬」開催をめぐり、世論が二分されている。史上最長の長期政権を築いて熱烈なファンを獲得した一方で、その足取りには賛否もあるためだ。7月8日に銃撃され死去した直後は「開催賛成派」が多かったものの、2カ月が経過した今では反対派の勢いが増している。国葬を即断した岸田文雄首相への風当たりも強まり、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)問題も重なって内閣支持率は下降する一方だ。参院選での勝利から安定した政権基盤を得るはずだった首相の「3つの誤算」を探る。
岸田首相が全額国費負担の「国葬」を表明したのは、安倍氏死去のわずか6日後。7月14日の記者会見で「安倍元首相を追悼するとともに、我が国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示していく」と説明した。安倍氏の功績については「憲政史上最長の8年8カ月にわたり卓越したリーダーシップと実行力で、厳しい内外情勢に直面する我が国のために首相の重責を担った」「東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米同盟を基軸とした外交の展開など大きな実績を様々な分野で残された」と讃えている。
直後の世論調査を見ると、NHKの調査(7月16―18日)で国葬開催を「評価する」は49%、「評価しない」は38%となり、内閣支持率も同10日投開票の参院選の直前から5ポイント増の59%と好調だった。しかし、8月5―7日の調査では「評価しない」が50%、「評価する」は36%と逆転し、支持率も46%に急落した。
他のメディアの調査でも8月は「反対派」が上回り、共同通信は「納得できない」56%、時事通信は「反対」47.3%、産経新聞は「反対」51.1%で、毎日新聞と社会調査研究センターの調査では「反対」が53%に上り、「賛成」の30%を大きく上回った。足元の9月には主要紙で唯一「賛成派」が上回っていた読売新聞の調査(9月2―4日)でも国葬実施を「評価しない」は56%に達している。
いまだに批判は鳴りやまず…それでも基本は「聞かない」姿勢
言うまでもなく、1つ目の「誤算」は世論を見誤った点にある。国会日程などを考慮したため、首相は2カ月半後の開催を早々に表明した。しかし、その後に旧統一教会と安倍氏の関係性がクローズアップされ、閣僚や自民党所属議員にまで飛び火。党との組織的なつながりを否定し、関係断絶を表明したものの、多くの議員が選挙支援を受けていた実態が浮き彫りになっている。