派手な言葉を好まない岸田総理と菅前総理、1年の仕事量がどうして「ここまで差がついた」のか

表面的で人の心に響かない岸田首相の「国葬」でのスピーチ
岸田文雄首相の「メッセージ力」が疑問視されている。直近のマスコミ各社による世論調査で支持率は続落し、10月3日に開会した臨時国会での所信表明演説もメディアに大きく取り上げられることはなかった。対照的にクローズアップされたのは、凶弾に倒れた安倍晋三元首相の軌跡と「国葬」で感動を呼んだ菅義偉前首相の弔辞である。それぞれに賛否はあるにせよ、2人の首相経験者の言動は注目され、ニュース価値を生み出してきた。
では、なぜ今夏まで高支持率を維持していた岸田首相は国民からそっぽを向かれるようになったのか。与野党議員のスピーチライターを務めたこともある筆者は、その背景にある「心に響かない言葉」を探った。
「Courage is doing what is right. 安倍さん。あなたこそ、勇気の人でありました」。9月27日に開催された安倍氏の「国葬」で葬儀委員長として岸田首相は追悼の辞を述べた。29年前の衆院選で初当選した関係にあり、外相や政調会長として安倍政権を長く支えた岸田氏からは2人だけの思い出やエピソードなどが語られずはず、と思った人も多かったのではないか。しかし、政府を代表する立場での言葉とはいえ、その弔辞はどこか表面的で、人々の心に響くことは少なかったように感じる。
あれだけで充分の声も…対照的に人々を感動させた菅前首相の弔辞
一方で、8年近く官房長官として安倍首相に仕えた菅前首相の弔辞は「感動的だった」と称賛されている。昭恵夫人は涙を拭い、葬儀という場でありながら自然と拍手が沸き上がった。改めて全文を読むと分かるが、菅前首相の弔辞には自身の「思い」と「経験」、そして安倍氏との「エピソード」という3つの点が盛り込まれており、それらが人々の心を打ったと言える。これは岸田氏の弔辞にはないものだ。
「7月の8日でした。信じられない一報を耳にし、とにかく一命をとりとめてほしい。あなたにお目にかかりたい、同じ空間で同じ空気を共にしたい。その一心で現地に向かい、そして、あなたならではの温かな微笑みに最後の一瞬、接することができました」