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ブラックロックへの攻撃が意味するもの‥「21世紀の受託者責任」を問い直せ

世界最大の資産運用会社がなぜESGを伝導するのか

 ESG(環境・社会・企業統治)投資に関するシリーズ論考の最終回として、米資産運用会社ブラックロックを取り上げたい。株式や債券の投資経験がある人ならば、かなりなじみのある会社のひとつだろう。運用資産の総額は7.9兆ドル、1ドル145円で換算すると1145兆円と日本の国内総生産(GDP)の約2倍だ。

 世界最大の機関投資家だ。市場で揺るぎない存在感を誇る理由は規模だけではない。会長兼最高経営責任者(CEO)のラリー・フィンク氏が毎年初めに全世界の大企業経営者に宛てて出す公開書簡「フィンク・レター」は、グローバルな資本市場の潮流を決めるとも言われる。

 「資本主義の力」と題された2022年書簡にはこんな一節がある。「グローバルで相互につながる現代社会において、株主に長期的な価値をもたらすには、企業はすべてのステークホルダーのために価値を創造し、またすべてのステークホルダーからその価値を認められなければなりません」。

 米国で伝統的に支持されてきたシェアホルダー(株主)を最優先する考え方をとらず、従業員や社会、取引先などを含めたステークホルダー(利害関係者)を等しく重視する姿勢が鮮明だ。生き馬の目を抜く米ウォール街のプレーヤーとしては異彩を放つ。

 そのうえで気候変動リスクに関する情報開示や対応策の重要性を強調し「お客様の資金の受託者として弊社は、企業が株主に対する責任の下、環境・社会・ガバナンス面においてどのような方針を定め対応しているかという点を含め、どのように事業を展開するのかを明示することを企業に求めます」と語っている。ここ数年のレターはこうしたステークホルダー主義が前面に出ており、フィンク氏自身はさながらESGの伝道師のような雰囲気さえ、まとい始めていた。

 世界中で金利が上昇し株価の乱高下が続く今、ステークホルダー主義やESG重視の考え方は強い批判にさらされるようにもなった。ブラックロックとフィンク氏はその象徴的な存在だ。

共和党からは「左翼活動に等しい」、民主党からは「物足りない」…両翼から批判されるブラックロック

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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