蓮舫、「挑戦」と言い換える「自民党が支援する人に絶対負けたくない!」…事前運動、選挙違反疑惑の批判にも「全く懲りていなかった」

 7月7日投開票の次期東京都知事選で、5月末に立候補を表明した立憲民主党の蓮舫参院議員が“炎上”を繰り返した。例えば、枝野幸男前代表らとともに支援を呼びかけた6月頭の街頭演説が公職選挙法の禁じる「事前運動」に抵触するのではないかと批判されているのだ。蓮舫氏は「政治活動の発言」と主張するが、歯切れの悪い印象は拭えていない。3選を目指す現職の小池百合子都知事への“口撃”を強める蓮舫氏。「攻撃は最大の防御」で活路を見いだすことはできるのか。しかし、野党幹部からは「闘う戦略を間違えている」という嘆きも聞こえてくる。民主党政権時代「2位じゃダメなんですか?」というキラーフレーズで一世風靡した蓮舫氏は都知事選の得票数で何位になるのか。どうなる、都知事選!? 経済アナリストの佐藤健太氏が解説する――。

目次

蓮舫氏に対し「公選法違反(事前運動)に当たるのではないか」との批判

「『批判ばかりしている』と批判されている蓮舫です」

 6月9日、蓮舫氏は2週連続となる街頭演説を東京・杉並区で行った。政治資金パーティーをめぐる裏金問題で逆風を受ける自民党を痛烈に批判しつつ、参院議員として「私には、たしかな実績がある」と声を張り上げた。

 この日の演説でも蓮舫氏は「記者会見で夏の挑戦を言わせてもらった」「皆さん、助けてください」などと小池都知事への対抗心をむき出しにした。そして「相手はまだ声を上げていないけれど、なぜか自民党が支援を決めている。裏金議員を生んだ自民党が支援する人に絶対負けたくない」と訴えた。

 ただ、1週間前の演説とは変えた表現がある。

事前運動3要件「選挙の特定」「候補者の特定」「投票依頼」

 それは「都知事選」「支援」という言葉だ。蓮舫氏は6月2日に東京・JR有楽町駅前で行った街頭演説において「この夏、七夕に予定されている東京都知事選挙に蓮舫は挑戦します。皆さんの御支援をどうか宜しくお願いします」と呼びかけた。立憲民主党の枝野前代表は「皆さんの力で当選させていただきたい」「みんなで蓮舫さんを勝たせましょう。宜しくお願いします」などと支持を訴えている。

 ただ、告示(6月20日)前のこうした言動は「公選法違反(事前運動)に当たるのではないか」との批判が続出した。6月6日の参院総務委員会で、浜田聡参院議員は「事前運動に該当する3要件には『選挙の特定』『候補者の特定』『投票依頼』がある。3要素がそろっているのではないか」と政府側に見解をただしている。

蓮舫氏「政治活動の発言です」

 総務省は「個別の事案については実質的な調査権を有しておらず、お答えは差し控えさせて頂きたい」と述べるにとどめたが、昨秋に埼玉県所沢市長選で当選した小野塚勝俊市長は告示前に投票を呼びかける事前運動をしたとして書類送検されている。

 蓮舫氏は6月8日、記者団に「政治活動の発言です」と主張した。だが、2ちゃんねる創設者で実業家のひろゆき(西村博之)氏は6月7日のXに「『選挙の事前運動ではない』というのは、論理的に無理があると思う。これがアリなら逆に何をしたらダメなの?」と投稿し、4月の衆院東京15区補選に出馬したイスラム思想研究家の飯山陽氏も「不肖ワテクシが東京15区補選の際に確認したのは、告示日前(選挙期間前)に①選挙の特定②候補者の特定③投票の呼びかけをすることは禁じられており、一度にこの3つをやらかすと公職選挙法違反でアウトだ、ということであり、ワテクシが見るに蓮舫氏は一度にこの3つをやらかしているようです」と指摘した。

 東京都選挙管理委員会の定義によれば、政治活動とは「政治上の目的をもって行われる一切の活動から、選挙運動にわたる行為を除いたもの」とされ、選挙運動は「特定の選挙に、特定の候補者の当選をはかることを目的に投票行為を勧めること」があたる。公選法は「選挙運動」ができるのは選挙期間中に限定しているものの、政党や政治家が行う「政治活動」は切り離して考えられるのが一般的だ。蓮舫氏は自身や枝野氏の言動が「事前の選挙活動には当たらない」と主張していることになる。

橋下元府知事「なんやねん!フレーズ変えとるがな」

 元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏は6月9日のXで、蓮舫氏が演説の表現を修正したことについて「なんやねん!フレーズ変えとるがな。それやったら『2日の演説は事前運動の疑いがあったので表現変えます。すみません』となんで言われへんのや。こんな修正もでけへんの?」と指摘している。

 世間からの批判受けて、蓮舫氏は表現を変えた……。そう思われていた最中、9日の街頭演説では辻元清美・立憲民主党代表代行が「私は蓮舫に、あんた、都知事になりって相当前からチョロチョロチョロチョロ言うてたんです」「都知事に代わってもらわな、しゃあないなと思ったんです。蓮舫、あんたしかおれへんで、と支えていたのは私でございます」などと発言し、「結局まった懲りていないではないか」(与党幹部)で批判を受ける。

 5月27日に立憲民主党本部で記者会見した蓮舫氏は「昨年11月から今年3月にかけて8年ぶりに『東京防災ブック』がリニューアルされた。デジタルの時代に『紙』で全戸に配付され、都知事の顔が入ったメッセージが添付されている」と指摘した上で、「公費を使った事前の選挙活動だと思うのは私だけではないと思う」などと、小池都知事を批判した。

蓮舫氏にダブスタ「事前の選挙活動」という表現を用いて小池氏を攻撃

 防災ブックは関東大震災の発生から100周年を迎えた2023年、居住形態の変化や最新の災害情報などを踏まえてリニューアルされ、災害時は通信障害などでデジタル機器が使用できないことから「紙」で配布されたのだが、蓮舫氏は「事前の選挙活動」という表現を用いながら小池氏への攻撃を強めていたのだ。

 2014年10月には、民主党時代の蓮舫氏が選挙区内で似顔絵入りの「うちわ」を配っていた松島みどり法相を「公選法では、政治家は選挙区内で有権者に寄付できない。違法だ」と追及し、松島氏は法相辞任に追い込まれている。これまで公選法に関する他者への批判を繰り返し、4月の衆院東京15区補選においては政治団体「つばさの党」から“口撃”を受けていた蓮舫氏が自ら事前運動に抵触する行為をするとは考えがたい。

 蓮舫氏サイドには焦りもうかがえる。5月末の立候補表明の前、立憲民主党内には都知事選に関する世論調査結果に「手応えがある」との見方が広がっていた。だが、先週末に他党が行った調査では、リードする現職の小池都知事との差が拡大しているとされるためだ。ネット上には「批判ばかりでうんざり」「挑戦者なら公約を早く示すべき」といった声も充満しており、ネガティブな「事前運動」論争を早期に収拾したいとの危機感もにじむ。

「これはどう見ても蓮舫さんのビラだよね」

 加えて、蓮舫氏が「無所属」での出馬をうたいながら立憲民主党や共産党の支援を受けることにも批判がある。共産党東京都委員会のホームページには6月3日に「蓮舫参院議員と、日本共産党の立場をお知らせするチラシです。」と記され、政策が書かれたビラが掲載された。ビラには「子どもの国民健康保険料をゼロに」「若い世代への月2万円の家賃補助」といった言葉が並び、今の予算を削って基金や国の補助金も活用すれば財源を捻出できる、と掲載されている。

 この点について、国民民主党の榛葉賀津也幹事長は6月7日の記者会見で「これはどう見ても蓮舫さんのビラだよね。(共産党のビラに)蓮舫さんは何もクレームをつけていないというなら、蓮舫さんのビラだ」と指摘。その上で「(蓮舫氏が掲げる)オール東京?国民が認めている国政政党の自民党と、都政与党の都民ファーストの会を許さないと言っているんでしょ。完全野党だよな、それは。共産党とガッツリやっておいて、ご一緒にといわれても一緒にできないね。これでは『立憲共産党』だ」と距離を置いた。

ブーメランの女王に野党幹部も「戦略を間違えている」と嘆く

 蓮舫氏は「反自民・非小池」を掲げるものの、立憲民主党や共産党、社民党以外の野党を結集できるかと言えば難しい。自らの公約を依然として発表していないことにも「戦略を間違えている」(野党幹部)といった声があがる。

 20年間、国会議員として数々の「攻撃力」を見せてきた蓮舫氏。自らが攻められる側になるのは民主党政権での閣僚以来と言えるが、注目度が高い都知事選において「守備が弱い」とのイメージを払拭できるのか。その成長が問われることになりそうだ。

 過去最多の立候補者が予想される6月20日告示の都知事選には、広島県安芸高田市の石丸伸二前市長や元航空幕僚長の田母神俊雄氏、タレントの清水国明氏、元迷惑系YouTuberのへずまりゅう氏らが出馬の意向を表明し、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は30人を擁立する考えを示している。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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