大乱闘、都知事戦「真の勝者」は誰だ!石丸氏か、安野氏か、暇空氏か…強すぎた女帝を支えた人たち、蓮舫から離れた人たち

7月7日投開票された任期満了に伴う東京都知事選は、3選を目指した小池百合子知事の圧勝で幕を閉じた。過去最多56人が立候補したなかで、現職小池氏、立憲・共産が推した蓮舫氏以外にも多くの候補者がプレゼンスを残した。人工知能(AI)エンジニア会社経営でSF作家の顔を持つ安野貴博氏は、政治未経験ながらも政策や選挙戦略が話題を呼び、4位田母神俊雄氏に次ぐ5位で14万票を獲得した。SNSで高い影響力を持つ暇空茜氏も桜井誠氏らを上回り7位(11万票)だった。何より、石丸伸二氏が蓮舫氏を抑えて2位で終えたことは、永田町に衝撃を与えた。
たが、ポスター掲示板問題や自称ジャーナリスト・YouTuberによる執拗な“突撃”や選挙妨害、そして候補者への脅迫など異様な「首都決戦」でもあった。
では、今回の都知事選において「真の勝者」は誰だったのか。選挙分析に定評がある経済アナリストの佐藤健太氏は「強いて言えば、勝者は『無党派層』。既成政党への批判が高まる中、今後はあらゆる選挙で影響が増してくるだろう」と見るーー。
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選挙に強すぎるからこその女帝・小池百合子
現職の小池氏は序盤からリードし、最後まで支持を上げも下げもしない安定した選挙戦を展開した。開票結果を見ても、得票数は290万票を超えて2位の元広島県安芸高田市長、石丸伸二氏に120万票以上の差をつけて勝利している。毀誉褒貶がつきまとう小池氏だが、この結果は「選挙に強い小池百合子」を改めて印象付けるものだ。
過去の都知事選を振り返れば、実は3期目に挑戦する現職知事は得票数を大きく減らしてきた。1955年の都知事選で3期目を目指した安井誠一郎氏は約131万票を得て当選したが、その4年前の知事選では約143万票を獲得。1975年の知事選で3選を果たした初の革新系都知事である美濃部亮吉氏は約182万票で、前回(1971年)の約362万票から得票数は半減した。
2期目がピーク、3期目は得票数を落とす
その後も1987年の知事選で約213万票を集めた鈴木俊一氏は2期目の当選時に比べて23万票減、石原慎太郎氏も3選を果たした2007年は約281万票で前回比28万票のマイナスとなっている。いずれも2期目の当選時に得票数はピークが訪れていることがわかる。
コロナ禍で行われた2020年の知事選で再選を果たした小池氏は約366万票を獲得し、次点の候補者に約280万票の差をつけて圧勝した。小池氏も「3期目のジンクス」にならい得票数を減らしているわけだ。2020年と今回の知事選では次点との差が2倍以上も違っているのだが、それは投票率が5ポイント程度上昇したことで説明はつく。
2016年の選挙とほぼ一緒の結果に
小池氏が初当選した2016年の知事選(投票率59.73%)は今回の開票結果に近いと言える。小池氏は約291万票を集め、次点は約179万票、3位は約135万票を獲得した。今回(投票率60.62%)は小池氏が約292万票、次点の石丸氏は約166万票、3位の元参院議員・蓮舫氏は約128万票だ。投票率や3位までの得票数がほとんど変わっていないことがわかるだろう。
NHKが投票日当日(7月7日)に実施した出口調査の結果を見ると、小池氏は支持政党別で自民党支持層の60%台半ば、公明党支持層の80%あまり、日本維新の会支持層の40%台半ばに加え、支持政党を持たない「無党派層」からも30%あまりの支持を得ている。
次点だった石丸氏は自民党支持層の10%台後半、国民民主党支持層の約40%、日本維新の会支持層の20%台半ばに加えて、「無党派層」の30%あまりが支持した。3位に終わった蓮舫氏は告示日直前に離党した立憲民主党や共産党支持層の60%台後半、れいわ新選組支持層の約30%を獲得していたが、「無党派層」は約20%の支持にとどまった。
小池と石丸「無党派層」3割近くからそれぞれ獲得、蓮舫大きく離す
約1100万人の有権者が存在する首都で5割近くを占めるとされる「無党派層」の支持を広く集められるか否かは選挙結果に直結する。JNNの出口調査でも小池氏と石丸氏は「無党派層」の3割近くからそれぞれ支持され、蓮舫氏を大きく離していることがわかる。このボリュームゾーンを獲得できなければ「首都の顔」になることは困難なのだ。
「選挙に強い」といわれる小池氏の最大の武器は、この「無党派層」に食い込んでいる点にある。今回の都知事選で小池氏は自民党や公明党などの実質的な支援を受け、無党派層からも約3割の支持を得て3選を果たした。だが、初当選した2016年の知事選で小池氏には無党派層の半分近くが投票している。
裏金問題を重視する有権者も蓮舫より小池支持
当時の相手は自民党と公明党の推薦を得た元総務相の増田寛也氏、野党4党の統一候補だった鳥越俊太郎氏だった。既成政党がいくら組織票を固めたとしても「無党派層」から多く支持を得た小池氏には勝てなかったのだ。この時、小池氏は政党の推薦・支持がなかったにもかかわらず、自民党や民進党、共産党などの支持層から幅広く得票している。今回の都知事選でも小池氏は対立候補の立憲民主党や共産党の支持層から一定の得票がみられた。
最大のボリュームゾーンに加え、男女や年代、支持政党に関係なく幅広い支持を集めれば、小池氏が勝つのは当然の結果と言える。各種調査によれば、2期8年の小池都政に対しては約6割が「評価する」と回答している。加えて、派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題で揺れる自民党をにらみ、蓮舫氏は「反自民、非小池」と掲げて小池都政をリセットすると強調していたが、裏金問題を重視する有権者においても小池氏の方が蓮舫氏よりも多く支持された。この点を見ても、小池氏の「選挙強者」ぶりが際立っていると言えるだろう。