トランプ金融ショック「日本も影響なしでは済まされない」…アメリカ革命計画の中身「大統領府の力は強まりディールの場面が増える」

11月の米大統領選挙は、現職のジョー・バイデン大統領が7月21日に撤退表明し、カマラ・ハリス副大統領を民主党候補に後継指名した。対する共和党候補のドナルド・トランプ前大統領は銃撃事件を乗り越えて勢いを見せている。世界中が注目するトップリーダーになるのは誰か。そして、世界に与える影響は。金融担当相や規制改革担当相などを務めた渡辺喜美氏に今後の展開や日本への影響などについて聞いた。連続インタビュー第2回。(聞き手・経済アナリストの佐藤健太氏)
目次
バイデン政権は結局何がだめだったのか
――2021年1月からのバイデン政権は半導体や再生可能エネルギーなどの分野に巨額の政府支援を進めてきました。バイデン氏が法人税の最低税率や富裕層の所得税の引き上げを打ち出す一方で、低所得者や中間層の底上げを目指しています。バイデン政権は何が良くて、何がダメだったと思いますか。
(渡辺氏)
米大統領選からの撤退を表明したバイデン氏だが、新型コロナウイルス対応はトランプ政権の給付金などの政策をさらに進め、「高圧経済」を行ったことは良かった。一方、回復過程では労働市場に戻ってくるはずの労働力の見通しを誤り、高圧経済が逆に賃金上昇主導型のインフレを招いてしまった。40年ぶりのインフレは米国の国民に「心理不況」と呼ばれる状態をもたらせた。米国民の過半数がバイデン政権の経済立法についてよくわかっていないし、金利負担増も含めてインフレに対し大変な不満を持っている。
環境・再エネルギー重視策は、コロナやウクライナ戦争に起因するエネルギー価格上昇に対応できず、米国産シェールオイル・ガスの機動的増産を遅らせた。対ロシア制裁が効かない一因となり、エネルギー価格上昇はロシアのレバレッジを高める結果となっている。また、半導体に対する支援はサプライチェーンの安定化には良いが、生成AIの進展で半導体業界がエヌビディアに象徴されるように過熱しているのではないか。
――ブルームバーグ・ビジネスウィークが6月25日に単独インタビューした際、トランプ氏は自らの経済政策「トランプノミクス」の要点として、低金利と低課税をあげています。エネルギー資源の採掘拡大や規制緩和を推進する一方で、大手ハイテク企業を締め付けるといった構想です。輸入品への追加関税導入やパートナー国の防衛負担増大要求にも警戒が広がっています。
懸念される金融ショック「日本も影響なしでは済まされない」
(渡辺氏)
トランプ氏の言う「減税・利下げ・エネルギー価格下げ」は、米国経済が悪化している時には非常に正しい。借金抱え生活が苦しくなっている中産・低所得階層には非常に響く政策だ。また、ドル安指向や関税引き上げ策は製造業にはプラスに働く。しかし、タイミング次第でインフレを再燃させるリスクはある。