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恐怖!! 人を恐れない「アーバンベア」がやってくる…「クマがかわいそう」という苦情で被害者続出

 夏休みに突入し、旅行や帰省を計画している家族は多いだろう。都会の喧騒を離れ、静かな場所で日頃の疲れを癒やそうという人もいるはずだ。しかし、水辺やキャンプなどレジャーでの事故が目立つ夏には、もう1つ注意しなければならないことがある。昨年は人身被害が過去最多だった「クマ」との遭遇だ。経済アナリストの佐藤健太氏は「クマは冬眠する11月下旬頃にかけて出没するケースが多い。エサを探し求めるクマの姿が市街地で見られていたが、それをクマは覚えている。繁殖期の夏は特に危険だ」と注意喚起する――。

目次

2ヶ月で全国3032件の出没情報 “過去最悪の年”を上回る

 クマは冬眠する11月下旬頃にかけて出没するケースが多い。ただ、人身被害が過去最多だった2023年は8月から農地や住宅地などでの被害が急増したことを覚えている人は多いだろう。一部地域では小学校近くに出没するなど人間の生活圏を脅かし、昨年4~9月の出没件数は1万2699件に達し、10月末時点でクマの被害に遭った人は18道府県の180人に上った。人間を恐れず市街地に侵入する「アーバンベア」は地元住民ならずとも恐怖を与える存在だ。

 ツキノワグマの出没情報が多い東北では「前年に目撃情報が増加した翌年は落ち着く」といわれることもあるが、生息域を市街地周辺まで拡大したクマは人々の期待を無視するかのように出没を繰り返す。環境省によれば、今年4月と5月に自治体に寄せられたクマの出没情報は全国で3032件に上り、“過去最悪”の2023年(2567件)よりも増えている。

日本にはヒグマとツキノワグマの2種類が生息

 昨年度の人身被害は219人に上り、6人が亡くなった。今年は4月~6月までに16道県の34人がクマに襲われるなどの被害に遭っている。5月に岩手県で山菜採りに向かった男性が遺体で見つかり、6月には青森県で高齢女性が死亡している。

 日本にはヒグマとツキノワグマの2種類が生息し、ヒグマは北海道、ツキノワグマは本州や四国に分布している。ただ、近年は生息環境としての森林の変化やエサ不足などを引き金に生息域の拡大がみられ、田畑に放棄された生ゴミや柿、栗などが誘引物となって人里に出没するケースが後を絶たない。

秋田県では定点カメラを設置

 5月には群馬県安中市の住宅にクマ1頭が侵入し、70代夫婦が襲われて大ケガをした。長野県飯田市でも7月24日に公園近くを散歩していた80代男性がクマに顔などをひっかかれ、大ケガを負っている。クマは山中にエサが少なければ少ないほど、人里に出没する可能性が高まるといわれてきた。昨年は「凶作」だ。しかし、一度でも行動範囲を広げたことがあるクマは市街地周辺でエサを探し求めた「経験則」から人を恐れなくなり、凶作に関係なく生活圏を脅かしているとの指摘がある。

「毎日、最低1回はメールが届く。最近はエサを自分でまだ確保できないような体長1メートル未満の子クマがよく見られている」。昨年度の人的被害が過去最多の70人に上った秋田県は警察や市町村に寄せられたクマの目撃情報をメールで通知してきたが、7月からは出没場所や時間を地図上で示す情報マップシステム「クマダス」の運用をスタートした。北秋田市の職員は頻繁に通知されるメールで人的被害がないことを確認すると、ホッとした表情を見せる。

 4月からクマが「指定管理鳥獣」に追加され、自治体は対策に国からの財政支援を受けられるようになった。秋田県はこうした点をにらみながら、7月5日に猟友会や学識経験者らによる検討委員会を開き、今秋はクマの好物であるブナの実などが「並作」であるとの予想や繁殖率などをもとに、今年度のクマ捕獲数上限を約800頭とすることが決まった。

AIの活用でどのようなクマが侵入したのかリアルタイムで通知

 県は約4400頭が生息すると推定してきたが、昨年度に捕獲したクマは約2300頭に上る。今年に入ってからの目撃情報は7月頭までに530件を超え、昨年を上回るペースだ。秋田県の男性職員は「これまで生息調査をしてきたが、実際にはそれよりもかなり多いのではないか」と話す。同県は定点カメラを設置し、ツキノワグマの胸のあたりにある月のような白い模様から個体の確認を進める。

 クマとのすみ分けで注目されることになったAI(人工知能)の活用にも積極的だ。AI解析サービスを展開する「ZeroToInfinity」(ZTI、東京・新宿)と「カミエンス・テクノロジー」(東京・人形町)は北秋田市と連携し、クマの行動をディープラーニング(深層学習)させて検知率を上げている。

「クマがかわいそう」「駆除する以外に方法を考えろ」といった苦情

 両社は群馬県嬬恋村の畑にAIセンサーを設置し、クマの接近を検知するとともに忌避効果がある光や音を発信。登録先にどのようなクマが侵入したのかリアルタイムで通知するサービスを展開した経験があり、鳥獣被害に悩まされる自治体から問い合わせが相次いでいるという。クマ対策でもデジタル化がカギを握るのだ。

 群馬県も今年度に生息調査を拡大し、対策強化に乗り出す。同県の生息数は約2000頭(2020年度)と推定されたが、昨年度の出没数は700件を上回る。山本一太知事は5月23日の記者会見で「クマは冬眠前後の活動が活発になるということが分かっている。山に行かれる際にはクマとの遭遇を避けるためクマ鈴、ラジオ、さらに万が一の遭遇に備え、クマ撃退スプレーの携帯をお願いします」と注意を呼びかける。

 昨年はクマの駆除に対し、「クマがかわいそう」「駆除する以外に方法を考えろ」といった苦情が自治体に殺到し、職員らは大量のクレームへの対応も余儀なくされた。

「愛護だけでは、クマ類の個体群を守ることができません」

 こうした事態に「野生生物と社会」学会は昨年11月12日、緊急声明で「クマ類は人との軋轢も大きく、付き合い方を間違えれば人命を奪うこともあり、一定数の捕獲は欠かせません。クマ類との共存のためには、人の生活圏に侵入した個体や再出没が懸念される個体は捕獲すること、さらには、人の生活圏には侵入させない対策は必要不可欠です」と指摘した。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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