27年適用の「新会計基準」で大ピンチ!セブン&アイは専門チーム立ち上げ、一体何が…「2年半あっても余裕なし」

建物や設備を借りて使う「リース取引」の新たな会計ルールが公表された。2027年頃に適用されるこのルール、大幅な改正になると見込まれており、企業への影響が懸念されている。現在検討されている新リース会計基準について、現状からの変更点と経理への影響を日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏が解説するーー。
目次
「リース取引」に関する新しいルールが発表
投資家が企業を正しく評価し売買判断をするためには、損益計算書や貸借対照表といった財務諸表が正確に記されていることが大前提だ。どんな情報をどのように財務諸表に記載するかを決める「会計基準」は、市場経済が機能するための重要なインフラにほかならない。しかも、市場取引がグローバル化した今は、会計基準も国際的に整合性のとれたものでなければ、投資を市場に呼び込むことも難しくなる。
その観点で非常に重要な会計基準の変更がこのほど発表された。建物や設備を借りて使う「リース取引」に関する新しいルールだ。オフィスや店舗、製造設備、営業車……。企業は実に様々なものを借りてビジネスをしている。紛れもなく「資産」なのだが、不思議なことに貸借対照表の資産の部には載っていない。別にごまかしているわけではない。リースに関する会計基準が未整備だったので載せようがなかったのだ。
実施時期は当初の想定より1年遅れに
日本では2008年からリースのなかで契約期間中に中途解約できず、実質的に購入に近い「ファイナンスリース」のオンバランス化は2008年に導入が決まり、それ以外の中途解約可能な「オペレーティングリース」についても2023年5月に基準案が示され、早ければ2026年4月からの適用が見込まれていた。
ところが関係者からの懸念が相次いで表明されたため、日本の会計基準づくりを担う企業会計基準委員会(ASBJ)が議論をし直し、曖昧な点を明確化するなどして、9月13日の発表にようやくこぎつけた。実施時期は2027年度と当初の想定より1年遅れとなってしまった。
なぜそれほど強い懸念が噴出したのか。ひとつには自社が保有するリース契約の洗い直しや、その価値を適切に測定するシステム構築など、実務が煩雑なことが挙げられる。あずさ監査法人の山本勝一氏は日本経済新聞のインタビューでこう指摘している。
新リース会計の導入で自己資本比率が急低下する可能性
「(新リース会計基準の負担は過去の様々な会計基準の改正に比べて)負担にならないぐらい大きい。新リース基準では仕分けが3~5倍になる。(中略)基準適用まで2年半ほどあるが余裕はないだろう」
もうひとつが、企業財務への実際の影響の大きさだ。これまで資産計上されていなかったリース関連の資産と負債が貸借対照表に記載されるため、当然のことながら、企業の資産・負債の規模、さらには自己資本比率や総資産利益率といった財務数値が変わってくる。現状でリースを多く使っている企業ほど、新基準導入の前後で見え方が変わってくる。
日経新聞によれば、東建コーポレーションは新リース会計の導入により、自己資本比率が58%から4%へと急低下する可能性があるという。大東建託も同比率が38%から11%になってしまう。(9月3日、日経新聞電子版より)
店舗などの賃貸契約が多い流通業などでも影響が大きいと見られ、セブン&アイ・ホールディングスは専門チームを立ち上げ、影響の検証を始めた。
商船三井はすでに適用後のアセット額を投資家に開示
投資家などに対していち早く影響額を開示する企業もある。船舶リースを使っている商船三井は2024年のアニュアルリポートで新リース会計により資産が増えると仮定した「見込みアセット額」を開示。これを分母とした総資産利益率(ROA)を2035年度に5.4%にする目標を掲げている。