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これは景気後退局面だ「猛威を奮う連鎖倒産」負債総額が1兆3294億円!「この特定の業種がヤバい」

 倒産件数が増加している。上半期は前年同期比で18/6%増の4990件に達した。経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は「景気交代局面にある」と指摘する。一体何が起こっているのか。どんな業種がとくに危ないのか。政治に責任はないのか。小倉氏が徹底解説していくーー。

目次

景気回復への期待は裏切られた

 2024年度上半期、日本経済は倒産の波に押し流され、企業の存続がさらに厳しさを増していることが明らかになった。特に、倒産件数は前年同期比で18.6%増の4990件に達しており、まるで不況の足音が徐々に大きくなっているかのように感じられる。この倒産件数の増加は6期連続で続いており、景気回復への期待は裏切られ、数字が冷酷な現実を突きつけている。

 この厳しい現実を裏付けるのが、帝国データバンクによる『全国企業倒産集計 2024年度上半期報』(※1)だ。このレポートによると、倒産件数だけでなく、その原因も見逃せないポイントとなっている。最も多い倒産の原因は「販売不振」であり、全体の82.2%を占める。これは、経済の停滞と消費者需要の減少が多くの企業に打撃を与えていることを如実に示している。また、新型コロナウイルスの影響を受け、ゼロゼロ融資(コロナ融資)を利用して延命を図った企業の倒産も増加しており、その件数は360件に達し、過去最多を記録している。

 さらに、倒産が特定の業界に集中している点も見過ごせない。特にサービス業や小売業、建設業などの業界が大きな打撃を受けている。サービス業に関しては、倒産件数が前年同期比で28.4%も増加し、倒産件数が最も多い業種となった。中でも、飲食店や宿泊業などが多く含まれており、これらの業界は新型コロナウイルスによる打撃からいまだに完全には回復しておらず、苦境が続いていることが浮き彫りになっている。

 企業規模別に見ると、中小企業の倒産が特に増加している。負債総額5000万円未満の中小企業が全体の約60%を占めており、特に小規模な企業が経済的に厳しい状況に置かれていることが明らかだ。

<「夫婦で 1 店舗を経営」といった小規模事業者が多い飲食店業界は、引き続き食材・光熱費の 高騰や人材確保・維持のための賃上げなどで収益が圧迫されている。さらに、価格転嫁率(2024 年 7 月調査)は 36.0%と、全業種(44.9%)を大きく下回っている。アフターコロナで競争も 激化するなか、値上げに踏み切るか否か、中小クラスを中心に倒産や廃業の増加は避けられない とみられる>(同集計)

連鎖倒産の増加も深刻な問題として浮上

 夫婦で経営するような小規模な飲食店が、値上げに踏み切れない現状は、常連客との密接な関係が災いしているのかもしれない。顔なじみの客に値上げを告げることができず、知り合いの失望や不満を目の当たりにしたくないという心理が、思い切った価格転嫁を阻んでいるのだろう。確かに、小規模な店舗は人手不足に悩まされにくいというメリットはあるものの、原材料費の高騰は避けられない現実である。だからこそ、何とかして常連客にも値上げの必要性を理解してもらい、経営を維持するための措置を講じる必要があるだろう。

 一方で、連鎖倒産の増加も深刻な問題として浮上している。連鎖倒産の特徴は、親会社や主要取引先の倒産が引き金となり、関連する他の企業にも影響が波及する点だ。これにより、資金繰りが悪化し、経営が行き詰まる企業が次々と現れる。東京商工リサーチのデータによると、2024年1月から8月の間に発生した連鎖倒産の約7割が、負債額1億円未満の小規模企業であり、経済的に脆弱な企業が多くを占めている。

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この記事の著者
小倉健一

1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。 Twitter :@ogurapunk、CONTACT : https://k-ogura.jp/contact

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