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玉木雄一郎の不倫について…「自分の生きづらさを他人に押し付けない」

 週刊誌では度々芸能人や政治家の「異性とのトラブル」が報じられる。記憶に新しいのはお笑い芸人・松本人志氏と国民民主党代表・玉木雄一郎氏を巡る問題だ。こういった話題はネットでは多く閲覧され、メディアに収益を生む。多くの潜在的読者がいるからだ。とはいえ、不倫スクープに辟易している人もいるだろう。三浦瑠麗氏が2回に渡り、この状況から「前に進む」方法を語る。短期集中連載「異性トラブルの本質」第2回のテーマは玉木雄一郎。「正義というものは、単なる人々の欲望に他ならない」「不倫をめぐって女性は分断されている」。三浦氏がじっくりと解説するーー。

目次

玉木氏記者会見の模様

 玉木雄一郎国民民主党代表の不倫問題が、兵庫県知事選の結果を受け、幾分鎮火しているように見えるのが興味深い。人々の関心など、もともとその程度のものだということだ。「正義」の人はいつも話題を求めてSNS上を練り歩く。その場に適当なネタがないからといって、いつまでも炎上していたら肝心の家族の身が持たない。

 不倫はたいていの家族にとって重大問題で、しかし政治家である以上、公人として勝手にプライバシーを報じられてしまう立場にある。玉木氏の週刊誌報道直後の会見をオンラインで見ていたのだが、興味深かったのは「ここへきて玉木が討ち取られたか…」という政局が絡んだ記者らの声にならない嘆息の空気感と、いつもの如く型通りの「倫理」を振りかざし、政治家に一段高い徳を求めようとするテレビ人とのちぐはぐな雰囲気とがそこに共存していたことである。

 その中で、ひとりの女性記者が淡々と無感動に事実確認を進めており、これぞ新聞記者の手本、という感じであった。ほかに「余罪」がないか、確認しようとする年長の男性ジャーナリストの居丈高な声音も聞かれた。仮に複数の交際事例があれば、スピンしようによっては、玉木氏の特権的立場を利用した「性的搾取」の構図にできるのではないかとの思惑であろうが、どうやらその願望は虚しく潰えたと見える。

 人間の情報に対する貪欲さを改めて確認するとともに、ちょっと嫌なものを見たな、という感じもした。それは、正義というものが、単なる人々の欲望に他ならないことを見せつけられたからである。

倫理を求めるテレビという矛盾

 そのあと、わたしはXでちょっとした小石を池に投げた。要は、テレビのいう倫理というのがいかにご都合主義かということを問いたかったのである。有名な政治討論番組でも、キー局の選挙特番でも、過去に不倫歴を持つ司会者を据えている。不倫や異性関係で問題になるのは当事者が表立って抗議の意を表明している場合で、当該テレビパーソンに対しては、家族や不倫相手からテレビに出続けることへの強い反対など出ていない。だから、わたしは彼らを辞めさせるべきなどと微塵も思わないし、婚外子を作ろうが、彼女を2,3人作ろうが、特段関心もない。

 公人としての彼らのポストは、個人の私生活における「倫理」とは関わりがないからこそ、彼らは地上波で堂々と政治家を追及できるのである。テレビが私生活における倫理などと言い出したが最後、自縄自縛になる。若い社員ほどこうした「建前」の風潮に引きずられて突っ走る向きがあるが、記者やアナウンサーとて、いついかなる時に人生の迷いが訪れるか分からない。人間は掘れば一つや二つは秘め事を持っているもので、危ないのはむしろ成功して大量のアドレナリンが出ているようなときである。玉木氏の案件はそれに当たるのだろう。国民の知る権利を粛々と代理で行使しつつ、余計なことは言わないでおいた方が、マスコミ自身の為なのである。

誰が得をするのか

 国民に知る権利はあるとしても、問題は玉木氏の報道でいったい誰が傷つき、誰が得をするのかということだ。一番傷つくのは妻であり、本当にバカバカしい、と腹も立つだろう。ダメージを受けるのは玉木氏とお相手女性である。

 不謹慎なことを言うようだが、これで二人はもう会えなくなるのだ。公職の務めを果たすことを選ぶ以上、優先順位は明白だ。つまり、ひっそりとしているあいだは誰も傷つけずに行われていたに違いない楽しみや癒しが、両者から奪われることになる。玉木氏は政治家を続ける限り、生涯にわたってクリーンさを強制されるだろう。

 欲望を抑圧された人間は、他人の抑圧に向かうことも少なくない。今後の玉木氏の自粛生活の影響が、どうかこれまでの格好はいいが少し抜けている憎めない人感を残しつつ、性格的に良い方へ出てほしいと願うばかりである。

 反対に、得をしたと感じるのは、他人の不幸を喜ぶ人々、玉木氏の成功が妬ましい人たちである。当事者による「報復」が目的ではない不倫報道というのは、ことごとく、大衆の嫉妬や妬みを満足させるために存在する。わが国はもともとキリスト教国でもないし、有権者に広く共有された何らかの宗教上の理由があるわけでもない。倫理を振りかざすのは、まさにこうした黒い気持ちを美名にすりかえるために他ならない。

玉木氏は「許される人」でもある

 玉木氏のスキャンダルが目立つ理由は、彼がスターだからである。衆院選で躍進してキャスチング・ボートを握り、飛ぶ鳥落とす勢い。野党党首の中でもひと際スタイリッシュに見えるそのいで立ちも相まって、こうして注目もされるし、逆に許されやすい所もある。

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この記事の著者
三浦瑠麗

国際政治学者、シンクタンク 株式会社山猫総合研究所代表 1980年10月神奈川県茅ケ崎市生まれ。 内政が外交に及ぼす影響の研究など、国際政治理論と比較政治が専門。東京大学大学院法学政治学研究科総合法政専攻博士課程修了、博士(法学)。東京大学公共政策大学院専門修士課程修了、東京大学農学部卒業。日本学術振興会特別研究員、東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て2019年より現職。『21世紀の戦争と平和』(新潮社)、『シビリアンの戦争』(岩波書店)など著作多数。近著に、「日本の分断」(文春新書)、「不倫と正義」(中野信子氏との共著、新潮新書)。

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