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オワコンESG投資が「案外しぶとく生き残るかも」…なぜトランプ政権下で「再び盛り上がる」のか

 環境保護や社会貢献などを強調する「ESG投資」も、トランプ再選により継続が危ぶまれている。だが日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏は「むしろ環境や社会問題を企業評価やリスク管理にしっかり結びつける投資が根づくのではないか」と持論を展開する。その理由をくわしく解説していくーー。

目次

ESG投資について考えを改めた

 筆者はかつて、「トランプ大統領の時代に『ESG』(環境・社会・企業統治)投資は消えるかもしれない」と書いた。だが最近になって、少し考えを変えた。「ESGは案外しぶとく、したたかに生き延びるかもしれない」と。

 米国のパリ協定離脱が既定路線のように語られる。米企業年金の運用でESG投資を許容する「エリサ法」は見直されるかもしれず、企業の情報開示に関するルールなども簡素化の動きが始まった。ESGの政治問題化を嫌って、この用語を避ける資産運用会社も増えてきた。

 最近ではこんなニュースも流れてきた。12月13日の日経電子版の記事だ。

【ニューヨーク=竹内弘文】米連邦巡回区控訴裁判所は11日、米大手証券取引所ナスダックが上場企業に女性やマイノリティー(少数派)の取締役をおくことを求める取締役会多様性ルールを無効と判断した。同ルールを承認した米証券取引委員会(SEC)が議会によって付託された権限を逸脱したと結論づけた。

 SECから2021年に承認を受けたナスダックのルールは、上場規則として取締役会における多様性を確保しようとする狙いがあった。既に段階的に適用が始まっている。企業の規模や上場区分によって異なるものの大企業には25年末までに少なくとも1人の女性取締役と、1人の人種的マイノリティーあるいはLGBTQなど性的マイノリティーの取締役を置くことを求める。達成できない場合は企業側がその理由を開示する必要がある。

「ESG」を含む記事数は年々減少…関心度合いは低くなっている

 特定の価値観に基づく上場企業への締め付けとして保守層が同ルールに反発し、保守系シンクタンクがSECを提訴していた。控訴裁の判断を受けてSECの広報担当者は「判断を吟味し、必要に応じて次のステップを決める」と声明を出した。ただ、共和党のトランプ次期政権は25年1月に発足するため、法廷闘争の継続は困難な情勢だ。

 もともと導入に際しても賛否両論が拮抗するルールだったが、親ESGのバイデン政権下であったため、ナスダックも実現にこぎつけられた。大企業はこのルールの負担が重すぎると不満を漏らしており、親ビジネス・反ESGのトランプ大統領の登場を先取りするかのような動きだ。

 日本経済新聞の記事検索システム、日経テレコンを使って「ESG」を含む記事数の推移を調べてみた。パリ協定が採択されSDGs(持続可能な開発目標)がつくられた2015年を起点に、記事数はきれいな右肩上がりで増加。22年には837本に達した。しかし、24年は11カ月で233本、年換算で254本とピークに比べて約7割も減ってしまう。記事数を市場の関心の代理変数と捉えるなら、今後4年のトランプ時代にESGは消滅してもおかしくない。

一方で「サステナブル運用の資産配分は今後増える」というデータもある

 しかし、明らかに違う方向性を示すデータもある。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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