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玉木雄一郎「与党の代替案によっては合意の余地あり」103万円の壁問題…生活保護は年100万円になるから、働いている人も100万円は手元に残る制度を

玉木雄一郎衆議院議員

 増税とインフレ、毎年のように上がっていく社会保険料に国民の怒りは限界まで達している。その怒りが自民党税調、ひいては宮沢洋一税調会長の存在を表舞台に引っ張り出した。「国民民主党の躍進の要因でもある」と語るのは玉木雄一郎氏。103万円の壁はどこまで引き上げられるのか。玉木雄一郎氏独占インタビュー全6回の第2回。

目次

国際比較で見ると、日本の課税最低水準は非常に低い…103万円では低すぎる

ーー「103万円の壁」を引き上げることには、2つのメリットがあると考えています。1つ目は、低所得者層の税負担を軽減する効果です。2つ目は、「これ以上働くと損をする」という理由で発生する働き控えを解消できる点です。しかし、国際的な視点で見ると、日本の課税最低限はまだ低い水準ですよね。

 おっしゃる通りです。この政策には2つの側面があり、需要サイドと供給サイドの両方に効果をもたらすと考えています。

 まず、需要サイドについてですが、この政策は低所得者層だけでなく、すべての人々の税負担を軽減します。その中でも特に所得の低い方々にとって、無税で働ける範囲が広がる点が大きなメリットです。例えば、「103万円の壁」を178万円まで引き上げると、対象となる年収が約1.7倍に増えることになります。また、所得の高い方々にも減税効果があるため、全体的な消費の活性化につながると期待しています。

 次に、供給サイドについてですが、この政策は労働供給を制約している問題を解決する効果もあります。この点については、課税の最低水準が低すぎるのではないかという指摘が正しいと思います。

 なぜなら、国際比較で見ると、日本の課税最低水準は非常に低いのが現状です。例えば、米国では「スタンダードディダクション(標準控除)」が約17,800ドル(日本円で約220〜230万円)に設定されており、英国でも課税最低限は200万円を超えています。こうした状況を踏まえると、日本の水準は依然として低すぎると言わざるを得ません。

 しかし、日本には生活保護制度がありますよね。例えば、生活扶助として月8万円を受給している場合、年間では約100万円になります。それなら、普通に働いている人も、少なくとも100万円程度は全額手元に残るようにすべきではないでしょうか。

 私たちは、基礎控除額を現在の48万円から75万円に引き上げ、最終的には123万円以上とすることを提案しています。この金額は、国際的に見ても決して高すぎる水準ではないと考えています。

 さらに、インフレが進む状況下では、年金と同様に「物価スライド制」を基礎控除にも導入し、物価の変動に応じて基礎控除額を自動的に引き上げる仕組みを検討すべきです。

壁を引き上げれば、手取り収入も、将来の年金受給額も増える

ーー「103万円の壁」を178万円に引き上げたとしても、給料が上がっている状況では、「今年はもっと働けるのに働けない」という問題が再び発生し、新たに「178万円の壁」が生じるのではないでしょうか?

 その可能性は確かにあります。ただし、178万円まで引き上げれば、ある程度まで課題は解消されるのではないかと考えています。重要なのは、社会保険料が増える「106万円の壁」、「130万円の壁」の存在です。これらが厳しいと感じる方も多いですが、178万円まで無税で働けるようになれば、これらの壁を容易に越えられるようになります。

 具体的には、106万円を超えた段階で厚生年金の保険料が新たに発生しますが、その負担を補って余りある収入が得られるようになります。その結果、手取り収入が増えるだけでなく、将来の厚生年金の受給額も増える仕組みです。

 つまり、働く人たち全体の所得が増え、将来の年金額も増えるという相乗効果が生まれるわけです。逆に言えば、このように大きく「壁」を飛び越えて働ける環境を整えることが、非常に重要だと思います。

これまでの税制改正は自民党税調で勝手に決めていた

ーーこれまでの税制改正は、自民党税調の内部で決まっていた印象がありますが、今回はどのように進めていく予定でしょうか?

 そうですね。これまでは、自民党税調、特に宮沢洋一税調会長の下で全てが決定されていました。

 しかし、これを表舞台に引き出したのが今回の国民民主党であり、党の躍進を支えてくださった国民の力だと感じています。

 税金はすべての国民に関わる重要なテーマです。そのため、増税や減税の理由を含めて、オープンな議論を行うべきだと考えています。これまでは、自民党税調で大事なことが決まっている事実すら、国民にあまり知られていませんでした。私たちはそのプロセスを表に引き出し、賛否を含めてしっかりと議論する場を設けることが大切だと思います。

 そして、その議論を経て、必要に応じて国会で修正を行うというのが、本来あるべき民主主義の姿だと考えています。

 とはいえ、今回は103万円の壁が123万円に引き上げられ、20万円の前進がありましたが、目標にはまだまだ遠い状況です。ですので、今月から来月にかけて古川政調会長や浜口政調会長を中心に、自民党や公明党と引き続き協議を進め、具体的な成果を出していきたいと思っています。

玉木雄一郎「123万円では賛成できません」

ーー予算成立のタイミングについてお伺いしますが、重要な局面は2月末から3月初めにかけてということでしょうか?

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