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トランプ系シンクタンクの「台湾はもう独立している」というニュアンスで「曖昧戦略」を放棄へ…日米首脳会談でマスコミが無視した米中問題の火種

 なかなか実現が叶わなかったトランプー石破会談。それが2月7日(日本時間2月8日)、ついに開かれた。この会談の成果については意見がわかれており、「初めての会談としては上出来」「日本はお土産ばかりで何も得られなかった」と様々だ。そんな中で、2016年にトランプの初当選を予言した国際政治アナリストで早稲田大学招聘研究員の渡瀬裕哉氏はどう見るのか。全3回に渡って解説していく。第2回は台湾についてーー。

目次

共同声明の台湾発言で「ひっかかった点」

 石破首相とトランプ大統領の初顔合わせとなった日米首脳会談であったが、その共同声明の一部で「台湾」に関して触れる部分があった。筆者は同声明において気になる箇所があり若干の引っ掛かりを覚えた。

 具体的には2025年2月7日日米首脳共同声明の中で「台湾」に言及した部分は下記の通りだ。

「両首脳は、国際社会の安全と繁栄に不可欠な要素である台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を強調した。両首脳は、両岸問題の平和的解決を促し、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対した。また、両首脳は、国際機関への台湾の意味ある参加への支持を表明した。」

 このうち、台湾海峡の平和と安定、両岸関係の平和的解決、一方的な現状変更の試みへの反対、は従来までの日米首脳会談でも頻繁に言及されてきたものだ。一方、国際機関への台湾の意味ある参加への支持、は必ずしも日米共同声明としては従来は強調されてこなかった内容であるように思う。

トランプ政権の台湾政策に関する意志を暗に表す

 今回、外務省は日米首脳会談のHP上の要旨では「両首脳は、国際機関への台湾の意味ある参加への支持を表明した」を抜いて声明内容を紹介している。もちろん同じHP上で公開されている声明全文には同内容は明記されているので、彼らは意図的にその内容を除いたわけではないと弁明するかもしれない。しかし、筆者はこの部分はトランプ政権の台湾政策に関する意志を暗に表す重要な内容ではないかと感じている。

 実は、第二次トランプ政権の外交安全保障政策は事前に大まかな方針が、トランプ系のシンクタンクであるAmerica First Policy Institute(アメリカ第一主義研究所、AFPI)によって「An America First Approach to U.S. National Security」という文書で公表されている。

文書に記された「台湾の独立を守る」という言葉

 もちろん、同文書の通りに、そのままトランプ政権の政策が実行されるとは断言できないが、AFPIはトランプ政権の閣僚に多くのメンバーを送り込んでおり、同文書が第二次トランプ政権を理解する上で必読の文書であることは議論の余地はないだろう。

 具体的には、同文書中には、中国による悪影響を断ち切る方法として、「台湾の独立を守る」と言及されている項目がある。そこには中国共産党の脅威にさらされている民主主義国である台湾の重要性が指摘されており、台湾の自由主義社会と世界経済への統合が求められている。さらに、台湾関係法下での台湾の自主防衛力強化や武器供与の制約解除、そして中国共産党の脅威から自らを守るために必要な訓練へのコミットメントが確認されている。

 つまり、この文書に記された「自由主義社会と世界経済への統合」の箇所が、今回の日米首脳会談における「国際機関への台湾の意味ある参加」という形に落とし込まれていると言えよう。

台湾は既に「独立」しているというニュアンス

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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