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経済アナリスト「残念ながら『終わりの始まり』を感じる」プライドを傷つけられた「技術の日産」…残された選択肢は少ない

(c) AdobeStock

 経営統合に向けて歩み出したはずのホンダと日産自動車の協議が開始から1カ月半強で破談に終わった。業績が低迷する日産の事業再生が絶対条件と譲らなかったホンダは「やっちゃえ、日産」とばかりに完全子会社化案を打診。これに「対等」を主張する日産側が反発し、世界3位グループ誕生は霧消した。経済アナリストの佐藤健太氏は「激変する世界の自動車業界や『トランプ関税』を考えれば、日産は『やっちゃった感』がある」と指摘する。日本の基幹産業である自動車業界はどうなっていくのかーー。

目次

ホンダによる日産子会社化案は破談「自主性が守られるか疑問」

「経営層や取締役会で慎重かつ真摯な審議を重ねたが、最終的に受諾できないという結論に至った」。日産の内田誠社長は2月13日の記者会見で、ホンダによる子会社化案は受け入れることはできなかったと説明した。理由については“自主性”という言葉を何度も重ね、「自主性はどこまで守られるか、日産のポテンシャルを最大限引き出せるのか最後まで確信を持つに至らなかった」「本当に我々の自主性、強みが発揮できる形になるのか非常に悩んだ」と苦悩したことを打ち明けている。

 たしかに「どちらが上、どちらが下ではない」と対等を強調していた内田社長にとっては、ホンダからの子会社化案をまとめるのは難しかっただろう。昨年12月23日にホンダと日産が経営統合に向けて本格協議に入ると発表した際、内田氏は「対等な関係」をことさらに強調していた。両社が傘下に入る形で2026年8月に持ち株会社を設立し、経営統合による効率化とともに相乗効果を発揮させていくという当初計画こそが“話の前提”というわけだ。

 世界の自動車市場で存在感を高める米テスラや中国のBYDなど新興EVメーカーの台頭をにらめば、両社ともに単独での生き残りは簡単なことではない。ホンダと日産が統合後、「世界第3位の自動車メーカー」となるスケールメリットを活かして競争力を高め、遅れるEV(電気自動車)分野などでの失地回復を目指すのは当然の流れと言えた。

 だが、昨年末の記者会見でホンダの三部敏宏社長は「両社が統合することで、あらゆる領域で化学反応が生まれることによるシナジー効果の可能性は想定以上に大きいことが再確認できた」とする一方、「前提条件としては、日産のターンアラウンド(事業再生)の実行が絶対的条件になる」とクギをさした。

協議の入り口から両社トップの思惑は異なっていた

 業績が低迷する日産の事業再生こそが“前提”であり、「率直に申し上げれば成就しない可能性も『ゼロ』ではない」とも語っていたのだ。

 その意味では協議の「入り口」から両社トップの思惑は異なっているとも言えるだろう。不振が続く日産は世界の生産能力2割縮小や9000人削減といったリストラ策を発表したが、2025年3月期の最終損益は800億円の赤字、営業利益は前年同期比78.9%減の1200億円となる見通しだ。ホンダには日産の再生策の実行力や内容が不十分と映り、スピード感にも懐疑的な見方が広がった。不信の増幅が完全子会社化の打診につながる。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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